物分かりの良いファンの功罪② 2024.08.29
〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
私と美人ちゃんの出会いは、推したちのグループが初来日してから5ヶ月近く経った頃のことだ。
それは忘れもしない、推しが初めて私の名前を覚えてくれた日のこと。
その日、私はいつも一緒に来るヲタ友の都合が悪かったから、1人でSHOWBOXに来ていた。
1人で席に座り、開演を待っている時にある女性に話しかけられた。私より年上の綺麗な人だった。
当たり障りのない会話の中で、その人が私が昔から好きだったグループのファンであることがわかり、その話で盛り上がった。
その日の公演では、2推しがソロステージでパク・ジェボムの『좋아』を歌い、とても楽しかった。
公演が終わり、2階の特典会会場でも近くに座っていたことから、誰のファンなのかとか、どういうきっかけでここに来たのか、とお互いの話をした。
その時、若い女の子がその女性に話しかけた。
親しげに話す2人。
女の子は20代前半くらいの、とても美人で背が高く、派手なメイクとファッションだった。
これ私の娘なの、とその女性が紹介してくれた。
友達のような関係の、とても仲が良さそうな母娘だった。
軽く挨拶をすると、女の子は部屋を出て行った。
それが美人ちゃんとの出会いだ。
以前にもnoteに書いたが、その日は推しが初めて名前を覚えてくれた日だった。
この日のあと、時々SHOWBOXやリリースイベントで美人ちゃん母娘に会うことがあったが、美人ちゃんはいつも同年代の友達と一緒だったから、ほとんど話すことは無かった。
そんな状態で2ヶ月か3ヶ月ほど過ぎた頃、何がきっかけだったのか覚えていないけれど、美人ちゃんとLINEをやりとりする機会があった。
美人ちゃんは、『プロのヲタク』とでも言うのか、情報収集力や観察力が優れたヲタクだったから、一体そんな情報をどこから仕入れてくるのかと感心するほどヲタク達の情報を知っていた。
私はといえば、最初の頃からずっと仲良しのヲタ友と平和なヲタク生活を送ってきたから、ヲタク達のドロドロした人間関係や、メンバー達が受けているストレスについて、半分もわかっていなかった。
美人ちゃんから聞く話は、それまで感じていた疑問や違和感の元が何だったのか、点と点が繋がっていくようでとても興味深いものだった。
推しが来日して最初の3ヶ月公演、日に日に無表情になっていく推しの身に何が起こっていたのかを知り、私は酷くショックを受けた。
あの頃、私は推しが長期公演の途中で辞めてしまうのではないかと心配していた。
それだけ推しはいつも無表情で、笑うことが無かった。
その時は、日本で暮らすことに馴染めないのかな、と思っていた。私は何も知らなかった。
アイドルとして初めてステージに立ち、日本で長期公演をするというだけでも相当な緊張と不安があっただろう。
そこにモンスターのようなヲタク達から受けていたストレスから身を守るには、表情を失くしてじっと耐えることしか無かったのかもしれない。
美人ちゃんはこう打ち明けた。
「実はさ、、私は最初、ハルちゃんの推しのファンだったんだ。だけど、途中で2推しの方に乗り換えたの」
私たちが知り合う前のことだ。
乗り換えた理由はここでは書かないことにするが、決して推しのことが嫌いになったとか、失望するようなことがあったとかではない。
「私、アイツのことが本当に大好きだったよ」
懐かしそうに回想する美人ちゃん。
「だけどあの頃、アイツめっちゃしんどい時期で、メンタルは最悪だったじゃん? だから、乗り換えたことにすごく罪悪感があったよ。申し訳ないなって。」
私たちが出会う前、美人ちゃんは推しのヲタクたちから様々な嫌がらせを受けていたそうだ。
美人ちゃん自身も、メンタルが弱っていたと思う。
そんな時に、推しが少しでも優しい言葉をかけてくれたら、胸がときめく出来事があったら、乗り換えることは無かったかもしれない。
でも推しにそんな余裕など無かったのだろう。
そういうタイミングで2推しから熱烈なアプローチを受けたそうだ。
気持ちが揺らぐのは当然のような気がする。
そして、美人ちゃんが2推しに乗り換えた決定的な出来事があった。
その場に、実は私が居合わせていたというドラマみたいなエピソードを、私はこの時に初めて知ることになる。
その話を次回、書こうと思う。
つづく。