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推しから来たメール④ 2023/03/14
〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
ヨントンの翌日、何度も何度も翻訳機にかけて作った文章をコピペして、推しにメールを送った。
返信を期待していないといったら嘘になる。
だけど、期待しないようにしようと自分に言い聞かせた。最初から期待しなければ、傷つくことはない。
返信しなくても良いような書き方を工夫して、一方的な内容にしたつもりだ。
いや、もしかしたら推しはファンからのメールを読んですらいないのかもしれないけど。。
夜になっても返信は来なかった。
やっぱり来ないよね、、
それが普通なのだと自分に言い聞かせた。
それでも、もしかしたらという気持ちは捨てられず、翌朝起きてすぐにスマホを確認した。
返信は、、、来ていなかった。
傷つかないように、ショックを受けないようにと思っても、現実は難しい。
もしかして私には返信をくれるんじゃないかと、心のどこかで期待していたのだ。
幸いにも朝から打ち合わせが入っていて、落ち込んでいる暇はなかった。
打ち合わせが終わりスマホを見ると、メールの受信通知が届いていた。
え?もしかして…
驚きと期待。
アプリを開くと、推しから返信が届いていた。
病気だったことを知って驚いた、そして、良くなってきて良かった!、と。
元気でいなくちゃダメだ、と。
体調を崩したら大変なことになるから、健康が1番大事だ、と書かれていた。
相変わらず短いメールだったけど、飾らない言葉が推しらしいなぁと思う。
嬉しさと同時に、推しに気を使わせてしまったようで申し訳ない気持ちにもなった。そりゃ、病気だったなんて書かれたら、返信しなきゃって思うよね。。。
返信がきた嬉しさと罪悪感。相反する気持がわたしの中で存在していた。
その日の夜、知り合いからLINEが来た。
以前、推しがファンのメールに返信をしなくなったと教えてくれた友人だ。
『友達のところに、推しからメールの返信が来た』と書かれていた。
そっか、、、推しはみんなに返信をしたようだった。
自分だけが特別では無かった。そりゃそうだよね、と少し残念なような…
私も彼女に、「実は昨日久しぶりに推しにメールを送ったら、今日返信が来た」と伝えた。
彼女は『おとといのヨントンで、私の友達が推しにメールの返信ちゃんとしてと頼んだから、みんなに返信したんだと思う』と言った。
そう、、、なのかな。
彼女の友達が推しに頼んだおかげで、私にも返信がきたのだろうか。返信に浮かれた気持ちに冷や水を浴びせられた気分だ。
返信しろというプレッシャーを掛けられて、仕方なく返信をしたのだとしたら、返信が来ない方がマシだ。
それから彼女はこう続けた。
『あいつは本当に適当なこと書いてくるから、メールをちゃんと読んでないのがバレバレだ』と。
どういうことか尋ねると、彼女の友達が送ったメールに対して、書いてある質問にきちんと答えないで適当な返信を送ってくるそうだ。
『ちゃんと読んでないのがすぐわかる』と、彼女は推しのことをこき下ろしていた。
そんなことはない、と否定する言葉をぐっとこらえた。
推しは、内容を読んで返信をくれた。
短い文章だったけど、適当だなんて全く感じなかった。
彼女の友達がどんな内容のメールを送ったのか知らないけれど、推しはそんないい加減な人では無いと思う。
彼女の友達が、答えにくい質問を書いたのだろうか。。
私への返信はちゃんと内容を読んでくれたようだ、と言いたい気持ちを飲み込んだのは、そんなことを言ってもきっと否定されるだろうと思ったし、彼女の友達に伝われば恨まれそうな気がした。
私はあまり深く聞くのはやめて、「とにかく返信をするようになってくれて良かった」と締めくくった。
『きっとまたすぐに返信しなくなると思いますけどね』と、彼女は辛辣だった。
推しは、いったいファンからどんなメールを送られているのだろう。
適当な返信とは、どんなことが書かれているのだろう。
私に送ってくれた返信は、短いけど真面目に考えてくれたように思うのだ。適当だなんて全く感じなかった。
考えても知りようもないことだから、やめよう。
他のファンのことなど、どうでもいいことだ。
いつまでこのメールアプリのサービスを続けるのだろう。
早くやめてしまえばいいのに、と願った。
後になってわかったことだが、この時期、推し達の状況は最悪だった。
彼らの事務所の社長は、事務所と宿舎の家賃の未払い、スタッフへの報酬未払いなど金銭的な問題を起こしていた。
推しに手紙や差し入れを送るたびに、事務所の住所が変わることを不思議に思っていたのだが、家賃滞納で何度も引越しを繰り返していたのだった。
そんな状況だから給料など貰えるはずもなく、宿舎の家主からは家賃の未払いを非難され、推したちは精神的に追い詰められていた。
メンバーの1人は、体調不良を理由に活動を休んでいたのだが、本当は、事務所との契約解除を求めて宿舎を出て実家へ帰っていたそうだ。
そんな状況にあったなんて、あの時は全く知らずにいた。
これはただの推測だけど、推しがメールアプリの返信をしなくなったのは、ファンから送られてくる大量のメールに返信しても、報酬が自分達に支払われるわけではないという状況に嫌気がさしたのではないだろうか。
昼夜問わず送られてくるメール。
返信が遅いと文句を言われ、文章が短いと文句を言われ、どんなに返信しても報酬はゼロ。
際限のないファンの要求に、疲れてしまったのではないだろうか。
アイドルを辞めてもいいやと投げやりになっていたのかもしれない。
私は、推しの苦悩に全く気づいていなかった。
ただのんきに、返信がきたことを喜んでいた。
つづく。