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おばさんだけど、推しに少しでも可愛いと思われたかった①2022/11/23

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

推しのファンになってから、私の服装は少しずつ変わっていった。
それまでジーンズばかりで、スカートなんて1枚も持っていなかった私が、ワンピースを着るようになった。

年増のおばさんファンのくせにと笑われそうだけど、それはやっぱり少しでも推しに可愛く見られたいという気持ちからだ。

初めてスカートを履いて公演を見に行った日、推しは『今日、なんか雰囲気が違うね』と気づいてくれた。

変かな?と笑って誤魔化そうとした私に、推しは慌ててフォローしてくれたのも懐かしい思い出だ。

可愛いとか綺麗なんて無縁のヲタク人生だった私が、「この服を着たら可愛く見えるだろうか」という目線で服を買うようになった。

そうは言っても圧倒的にパンツスタイルが多かったけれど、スカートを履いた日は「推しに変に思われないかな」「他のファンに笑われないかな」と緊張した。

SHOWBOX公演、ラスト2回。
最終日の前日とあって、ほぼ満席だった。

私は買ったばかりのジャンバースカートを着てSHOWBOXへ行った。

丈の長い細身のジャンバースカート。
カジュアルな中にも大人っぽい雰囲気を出したくて選んだ服だ。若者のようにダボっとしたスタイルは若作りし過ぎるから、トップスはタイトなタートルネック。

鏡の前に立つと、少し体のラインが出過ぎてしまうかな…と気になった。
私は、女性らしいファッションがずっと苦手だった。男に媚びていると思われるんじゃないかと周りの目を気にして、体の線が出ないような服を選ぶようにしていた。

だから、タイトな服を着るのは私にはかなりの勇気がいるのだ。そんな服を選ぶようになった自分に驚いている。

この日のセットリストは懐かしい曲もあり、いつもと少し趣向を変えた内容でとても楽しかった。

ソロコーナーでは、本命の推しと2番目の推しが2人で『レイニーブルー』を歌った。

イントロが流れた瞬間、驚きと嬉しさで胸が高鳴った。

2週間ほど前にもこの曲を2人が歌ったのだが、その日は私はSHOWBOXへ来ることが出来なかった。

翌日の公演を見に行った時に、レイニーブルーが聞けなくて残念だったと推しに伝え、「いつかまた歌ってね」と軽い気持ちで言ったのだ。

その願いが叶って、とても幸せな日になった。

特典会の時、2番目の推しに「この間は、2人のレイニーブルーを聞けなかったから、今日は聞くことが出来てとても嬉しい」と興奮気味に伝えた。

すると2推しは「前回はあいつが失敗したから、今日で良かった」とイタズラっぽく笑った。

そう、前回、推しはサビで声が裏返ってしまい失敗したそうだ。でも失敗したままで諦めてしまうのではなく、もう一度歌おうとチャレンジしてくれたことがとても嬉しい。

推しのサインの時にもその話をしようと思ったのだが、この日は推しにプレゼントを渡すことに気を取られ、話し忘れてしまったことが心残りだ。

長期公演の最後にいつもフォトブックを作ってプレゼントするのが、私の定番だった。
推しと、私の分。世界に2冊のフォトブック。

「マウメ トゥロッスミョン チョッケッスミダ」
(心を込めて作りました)
覚えてきた韓国語で伝えると、推しは胸に手を当ててウンウンと頷きながら「家でゆっくり見ます」と言って受け取ってくれた。

特典会はとても人が多かったから、早めに話を切り上げなくてはと焦ってしまい、フォトブックを渡してすぐに私は立ち上がった。

他のヲタクのように、話を引き延ばすことはしたくなかった。今後の予定を知りたいけど、訊いても推しを困らせてしまうような気がして。

粘るヲタク達をスタッフが急かしていた。

ヲタクたちは来年の予定を聞き出そうとしていたが、ハッキリとした話は教えてくれないようだった。

噂では、帰国してデビューの準備をすると言ったメンバーがいたとか、しばらく日本に来ないと思うと言ったメンバーがいたとか、真偽は定かではなかった。

席に戻ってから、『そういえば推しは、今日の服のことを何も言ってくれなかったな』と少し残念に思った。いつもと違うイメージの服を着たり、メイクや髪型を変えた時は必ず気がついてくれたから、期待してしまう自分がいた。

もしかしたら、あまりにも似合わないから、言いようがなかったのかもしれない…と落ち込みそうになる。

人が多くて慌しかったから、いちいちヲタクの服のことなど気に留める余裕など無いのだろうと自分を納得させた。

個人サインの後の団体サイン。
翌日の最終公演はもっと慌ただしいだろうから、メンバーたちとちゃんと話せるのは今日が最後だろうと思った。

メンバーKは、いつも私のテーマソングをサインの時に歌ってくれたのだが、この日は喉の調子が悪く歌えなくてゴメンと言い、「次のテーマソングも考えてあるから、今度日本に来た時に楽しみにしてて」と言ってくれた。

メンバーMからは、「僕と2推しの『夕立』のステージは見たことある?」と唐突に質問された。無いと答えると、「うわ!残念すぎる!!次がいつになるか僕はわからないけど、今度来たら絶対に歌うから聞いてね」と言ってくれた。

次のスケジュールに向かって前向きな話が出来て、嬉しかった。いつかは言えないけど、また来日する予定だということがわかったから。

2番目の推しは、今日のセットリストは僕たちが2年間歌った曲の中で特に好きな曲でまとめた、と言っていた。
それはまるでファンへの最後の贈り物、餞別のような気がしてしまって私は少し寂しかった。
2推しは、もう韓国デビューの先を見ている気がした。

そして、メンバーW。
推しではないけど、私は彼と特典会で話すのが毎回楽しみだった。
穏やかで不思議ちゃんな性格の彼は、毎回突拍子のないことを言い出して、笑わせてくれた。
『推しと2推し、どちらが好き?』と、からかわれたのも楽しい思い出だ。

そんなWが、前回の特典会で常連さんから何か嫌なことを言われたか、それともされたのか、何があったのかはわからないが、顔が強張って様子がおかしかったことが心配だった。

このところ、酷く顔が疲れていたことも気になっていた。近くで見ると肌荒れが痛々しかった。

その常連さんは「Wを怒らせちゃった」と気にしていたけれど、穏やかな彼をそこまで怒らせたのはよほどの事があったのだろう。

今までどんなファンに対しても、もどかしいくらいに平等に辛抱強く対応していたのに…

つづく。


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