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デビューしてほしい気持ちと、このまま新大久保にいて欲しい気持ち① 2022/11/6

〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

残りのSHOWBOX公演もあと2週間。

少しずつ客の入りが増えてきた。
去って行った常連たちは戻ってこなかったが、新しいファンがポツポツと増えていた。

新大久保の街中を練り歩きながら、公演前のチラシを配るメンバー達を撮影するヲタクの数も少しずつ増えた。

推しはとてもご機嫌で、カメラに向かっておどけてみせたり、とても可愛かった。

公演は、仲良しのヲタ友や地方から久しぶりに来た友人達と4人で最前列に座った。

最前列の席はメンバーたちの目線から少し外れるから、目線を気にする事なく見ることが出来る。
推しは久しぶりに可愛いキャラでトークをしていて、とても楽しかった。

公演は楽しかったが、一部のヲタクの態度が気になって集中出来ない場面もあった。

常連のヲタクが減ったとはいうものの、残った常連ヲタクたちはまるで新規のファンを威圧するように内輪で盛り上がって雰囲気が悪かった。
わざとらしく矯正を上げたり、内輪受けの茶々を入れたり。

地方から久々に来た友人は、ああいう内輪受けの雰囲気が大嫌いだと言っていた。私もあまり良い気分ではなかった。

公演後の特典会。私と友人たちは後ろの空いている席に座った。最前列には数少ない常連ヲタクと新規のヲタクが座っていた。

メンバー別の個人チェキはいつも通り推しと2番目の推しと撮った。

推しは、この日も私の後ろに立ってグフフと笑いながら何か企んでいるようだった。
肩のあたりに推しの顔が当たってドキっとしてしまった。

撮り終わって振り向くと、推しは嬉しそうにグフフと笑っていた。

スタッフから渡されたチェキを見ると、推しはまた膝を屈めて私の身長と同じ高さになっていた。そして寄り添うように顔を寄せていたから、肩に顔が当たったようだ。

友人たちも撮り終わり席に戻ると、仲良しのヲタ友が笑いながらこう言った。

「さっき、チェキを撮る時、推しくんがハルちゃんの後ろでちょこんって屈んでこんな風に頭を傾けて、寄り添って撮ってたの!可愛かったよ〜」
と身振り手振りで教えてくれた。

推しがグフフと笑いながらそんなことをしていたなんて想像すると、可愛くてたまらない。

チェキの後のサイン会は、先に2番目の推しの列に並んだ。
2推しは、「今日、1番前で見てくれて嬉しかった」と言ってくれた。2推しの言葉はいつも気遣いに溢れていた。

2推しのサインの後、本命の推しの列に並ぶ。

私の前には、公演の時に内輪ウケで騒いでいた常連グループの同担さんが並んでいた。

どんな話をしているのだろうと気にならないわけではない。だけどあまりジロジロ見るのも悪いし、私は少し視線を外しながら順番を待っていた。

彼女は、終わり間際に推しに手紙を渡して立ち上がった。

私の順番が来て、推しの前に座る。推しはバツが悪そうに咳払いをして、その手紙をサッと手で隠した。なぜか気まずそうだった。

後ろにいたスタッフが手紙を回収していった。

なぜ隠すのだろう。なぜ気まずそうな顔をするのだろう。気持ちが沈みそうになる。普通にしていてほしいのに変に勘繰ってしまう。

動揺する気持ちを隠して、こう切り出した。
「今日のチェキの推しくん、小さいね〜」

膝を折って同じくらいの身長で写るチェキ。
頭がくっつきそうに寄り添う推しに、ドキっとしたことは悟られないように平静を装った。

「小さくない!」怒ったフリをしながら、推しが拗ねる。

「今日の公演、推しくんがすごく可愛くて楽しかった」と感想を伝えた。

今日、ハルさんが来るって言ってたから、最初から可愛くしました。

と言ってグフフと笑った。ただのリップサービスだとわかっていても、そう言ってくれることが嬉しい。

でも。
宿舎の僕の方が可愛い。

得意げな推し。

見たいですか? 宿舎の僕。

イタズラっ子のようにフフっと笑いながらそう言った。私も笑った。宿舎の僕を知りたいかだなんて、深読みしそうな気持ちをぐっと抑えた。

他に話すこともなくて、ただそれだけの会話だったけれど、とても幸せで満たされた。
楽しそうに話す推しを見ているだけで幸せだ。

正直言うと、最近チラホラ増え始めた新規のファンの存在に、穏やかではない気持ちが芽を出しそうな自分に落ち込みそうだった。

推しは、新しく通ってくる新規の若いファンの方が嬉しいだろうな、と馬鹿な考えが浮かんでしまう。
そして古参の同担さんが減ったことを、心のどこかで喜んでいる自分も嫌だ。

そんな私の醜い心など知らず、無邪気にはしゃぐ推しに罪悪感を感じていた。

来日してもうすぐ2年。
そろそろ韓国デビューが近そうな気がする一方で、いつまでもSHOWBOXにいて欲しいと考えてしまう自分の気持ちと、私は戦っていた。

つづく。

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