推しとONFと私③ 2024.11.16
〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
このリリースイベントに参加する少し前のこと。
私はSHOWBOXへ行き、ライブと特典会に参加した。
特典会でチェキに名前を書いてくれるように変わって、ヲタ友から何度も誘われていたが、ようやく重い腰を上げたのだった。
予想通り、というか当然ながら推しは私の名前がわからなかった。それまで名乗ったことも、手紙を書いたことも、プレゼントを渡したこともないのだから当たり前だ。
推しは申し訳なさそうに、「ごめんなさい。名前を、、名前を教えて下さい」と言った。
謝ることなどないのに、推しはすまなそうにしていた。
前から来ている人なのに名前を知らなかったということに、推しは狼狽えているようだった。
その次に行った時も、「ごめんなさい、もう一度だけ、名前を教えて下さい」と謝った。
私は、大丈夫だよと笑ったけど、推しは申し訳なさそうにしていた。
これは以前『推しが名前を覚えてくれた日のこと』に書いたエピソードだ。あの時、私はONFと推しを掛け持ちしている状況だったのだ。
2度目に名前を訊かれて以降、仕事が忙しかったのと、お台場でONFのリリースイベントがあったのとで、しばらくSHOWBOXへは行かなかった。
だから、この渋谷タワレコのリリイベが久しぶりの推しの現場だった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
リリースイベントが始まり、ヲタクたちは一斉にカメラやスマホで撮影を始めた。
初めてのリリイベに臨んだメンバーたちだが、見慣れた常連ヲタク達が前方を占めているからか、トークもスムーズでリラックスしているように見えた。
私は、人がまばらな後方の右端で撮影した。
ヲタクたちの頭の間から、かろうじて推しが見えた。
ミニライブは3曲。その途中に短いトークコーナー。
私はアイドルを撮影する時、メンバー全員を順番に撮ることにしていた。もちろん推しの撮影枚数が1番多いけれど、推し以外のメンバーの写真を撮ることも好きだった。
ミニライブ終了後の特典会には参加しなかった。
人が少なかったら参加しようと思っていたが、そんな気遣いなど無用なくらい大盛況だった。
特典会の間、会場の後ろの方でヲタ友が終わるのを待つことにした。
改めてファンの顔ぶれを見渡すと、チラホラと見たことのある顔もあったが大部分は知らない人ばかりだった。
特典会はだいぶ時間がかかったが混乱もなく終わり、リリースイベントは終了した。久しぶりに推しの写真をたくさん撮れて、私は満足だった。
やっぱり私は推しの歌が好きだし、踊る姿が好きだなと再認識した。
リリイベは残念ながらリップシンクで、ヲタ友が言うには、生歌でやると機材の費用が高くなるから難しいんじゃないかと。
なるほど、確かに。
それでも、推しが踊る姿は胸がときめく。
決してダンスが上手いわけではないが、踊り方のスタイルというのか、姿勢が素敵なのだ。
その姿をカメラに収めることが出来て、リリイベに来て良かったと満ち足りた気分だった。
仕事が忙しく、リリイベの写真は数日経ってからパソコンに取り込んでデータをチェックした。
私はじっくり狙って撮るような腕前は無いから、連写で撮ってその中からよく撮れた写真を選ぶ。
だから撮影枚数は膨大だ。
ほとんどはピンボケや微妙な表情の写真だが、その中から素敵な表情の写真を見つけるのが、宝探しのようで楽しかった。
1枚目から順番に写真をチェックしていると、途中のトークコーナーでカメラ目線の写真が出て来た。
気のせい?たまたまかな?と思ったけれど、画像を拡大すると気のせいではなく、連写した写真はじっと私のカメラを見る推しが写っていた。
ステージからの距離が遠かったから、撮っている最中は全く気が付かなかった。たとえ偶然でもカメラ目線の写真はやっぱり嬉しい。撮り甲斐があるというものだ。
その後もちょくちょくカメラ目線の推しが写っていた。
カメラを見てふふっと笑っていたり、フフンと上から目線で目を細めていたり、何か言いたげな表情をしていた。
何だろ??
カメラ目線は嬉しいけど、こんなに見てくれる理由がわからなかった。
認知勢なら当然かもしれないが、その頃の推しは私のことは『時々見にくる人』程度の認識で、自分のファンであることをわかっていたのかすら怪しいくらいだ。
訳がわからないが、ミニライブの写真は我ながらよく撮れていて、SNSには目線写真以外の写真を上げた。
良い写真が撮れると自然にテンションが上がり、下降しかけた推しへの気持ちが回復するのを感じた。
週末、久しぶりにSHOWBOXへ公演を見に行った。
リリイベと違い、生歌が聴けるのはやはりSHOWBOXの魅力だ。ライブはとても楽しかった。
公演後の特典会、推しと話すのは3週間ぶりだ。
サインの列に並び順番がきて推しの前に座ると、推しは「ちょっと待って」と言いながら考え込んでいた。
そして「ごめんなさい、もう一回、もう一回だけ名前を教えて下さい」と言った。
私は「名前を覚えなくても大丈夫だよ〜」と笑った。
推しは「ダメ!ダメです!次は絶対に名前を覚えるから!」と言ってくれた。
その後のことは以前noteに書いたが、次に行った時、本当に推しは名前を覚えてくれていた。
そんなことがあって、推しへの気持ちは急速に回復し、むしろ前よりもっと高まっていった。
それからも私はONFのサイン会やファンミーティングに参加していたが、だんだんと新大久保に通うことが多くなっていった。
つづく。