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推しからもらったキャンディが宝物。2024.11.04

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

今年のハロウィンも特段、何のイベントもなく終わった。

おそらく新大久保界隈では、仮装してライブを楽しむアイドルとヲタクたちで溢れていたことだろう。

私は、ハロウィンはずっと無縁の人生だった。
推しのハロウィンライブに行ったあの頃が、私の唯一の思い出だ。

2018年。

そうか、もう6年も前になるんだ、、、
我ながら諦めが悪いというか、執着心が強すぎて気色悪いなと思う。

以前にも書いた話だと思うけど、思い出にもう一度浸りたいから、再びハロウィンの思い出を書くことにする。

2018年の10月半ば。
週末ヲタクの私は、いつも通り推しの公演を見に行き、そのまま特典会に参加した。

その時、推しから「ハルさん、ハロウィンは来ますか?」と訊かれた。

「ハロウィン?」

意味がわからず、キョトンとした顔で訊き返す私。

「うん、ハロウィンライブです」

推しは当然のことのように答えた。

公式からハロウィンライブのお知らせなど出ていなかったから、私はなんと答えてよいかわからなかった。

「ハロウィンライブがあるの?」と聞き返すと、推しは不思議そうな顔をした。
たぶん推しは、とっくにお知らせが出ているものだと思ったのだろう。
しかしあと2週間でハロウィンだというのに、公式からお知らせは出ていなかった。(直前まで告知が出ないのが新大久保スタイル、、、)

翌日、ようやく公式からハロウィンライブの告知が出た。

ヲタクたちは、ハロウィンにどんな仮装(というかコスプレ)をして行くかという話題で持ちきりだった。

私は、「いい歳をした年増のおばさんヲタクが仮装だなんて、笑われちゃうだろうな…」と怖気付いてしまい、普通の服で行こうと決めた。

ハロウィンライブ当日、せめて気分だけでもハロウィンらしくしようと、カボチャの形のペンライトを用意した。

ヲタ友と待ち合わせの時間にSHOWBOXへ着くと、既にコスプレをしたヲタク達が集まっていた。

ミニスカポリス、セクシーナース、アニメのキャラクターなどなど、みな気合いを入れたコスチュームとメイクだった。

むしろ、コスプレをしていない私とヲタ友の方が居心地が悪いくらいだ。ライブ開始まで時間があったから、ヲタ友とドンキへ行って顔に貼るハロウィン用のシールを買ってみた。

コスプレなんて年齢じゃないし、、、などと思っていたが、あの場所では年齢など関係なくハロウィンを楽しんでいる人が多かった。

推しはヴァンパイヤの仮装をしていた。
普段はカラコンをしない推しが、ヴァンパイヤのイメージに合わせたカラコンをつけ、細身のスーツとマントがよく似合っていた。
もともとルックスで目を引く推しだが、他グループのファン達の関心を引くほど目立っていた。

公演は満席で、常連ヲタクたちのバチバチとした神経戦が、鈍感な私にも伝わってきた。

公演の途中、メンバーが客席へ降りて、カゴに入ったキャンディを配り歩くイベントがあった。
運良く私の席には推しが配りに来た。

こういうイベントは嬉しい気持ちもあるが、自分の推し以外のメンバーが配りに来ると拒否するヲタクもいて、困惑するメンバーを見るのが悲しかった。

友人3人と並んで見ていた私たちの席にやってきた推しは、端に座る友人から順にキャンディを配り始めた。
そして、端から3番目に座る私に推しは、手からこぼれ落ちるほどたくさんのキャンディをくれた。

それを見たヲタ友が、「私には2個なのにハルちゃんにはこーんなにたくさん!」と怒るふりをして笑っていた。
そして、「推しくんのそういう所が可愛いわね〜」と、子供みたいな推しの振る舞いを茶化していた。

推しが配りに来ただけでもラッキーで幸せなことなのに、こんな風に少し特別な気分にさせてくれたことが嬉しかった。

もちろん私だけではないと思うけれど、何となく他の人には言わない方が良いような気がして、友人と私だけの笑い話にした。

公演後の特典会も大盛況で、人が多すぎてゆっくり話すことは出来なかった。

コスプレをしたヲタクたちは楽しそうにチェキを撮っていて、正直羨ましかった。

メンバーのWに、「どうして今日は仮装してないの?」と不思議そうな顔で訊かれた。

「え、、いや、、なんか恥ずかしくて、、、」と、しどろもどろに答えると、Wは「恥ずかしくないじゃん」と驚いた顔をした。

二番目の推しは、「今日はハロウィンライブのためにこれをつけてきてくれてありがとう」と、公演前にヲタ友と慌てて買った顔に貼るシールを指差した。

彼のそういう気遣いがさすがだ。

「ヴァンパイヤ、すごく似合っててかっこいいね!」と2番目の推しに伝えると、急に顔を近づけて噛む真似をするものだからドギマギとしてしまった。普段は落ち着いた対応をする2推しがそんなことをするなんて、よほど楽しかったのだろう。

おばさんが仮装なんて笑われるんじゃないか。
そんなつまらないことを考えずに楽しんだ方が、メンバーは喜んでくれたのかもしれない。

もし仮装をするなら、どんな仮装が良いだろう。

ヲタク達のコスプレを見ながらそんなことを考えていると、どうしてもセクシー系のコスプレをしているヲタクに目が行ってしまう。

胸の谷間を強調したコスプレや、下着が見えそうなミニスカートも私には到底真似できないが、推しにセクシーな姿を見せたいと思う女心は少しわかるような気がした。

私がずっと『推しのオキニ』だと思っていた同担さんもセクシーなコスプレをしていて、特典会のサインの時に推しの前に座ると、ちょうど胸の谷間が見える衣装でかなり目立っていた。

推しは、、、目のやり場に困るというような様子で、視線を外して話していた。

あんな可愛い子が自分に見せるためにセクシーな衣装で目の前に座っているのだから、本心は嬉しいだろうけど、あまりにセクシーすぎて困惑しているようだった。

他のヲタクがその光景を見て、「あれじゃ、逆セクハラだよね」と言っていた。

そういえば推しは、私が肩口の開いた服を着ていると、「ハルさん、風邪をひくから上に何か着て」とよく言っていた。

SHOWBOXの特典会の部屋は狭く、大勢のヲタクが密集して部屋の中はいつも暑かったから自然と薄着になる。
別に胸元が見えそうな服でもないのに、薄着の日は必ずといっていいほど、「上着もってきた?」「暖かくして」と言うのが不思議だった。
いつだったか、「僕の上着貸してあげる」とまで言われ、推しは着ていたシャツを脱ごうとして、さすがにそれは笑ってしまった。

アイドル側には、そういう定型文があったのだろうか。
バラエティや記者会見で韓国のアイドルの女の子がミニスカートで座っていると、男性アイドルの誰かしらが着ていたジャケットを膝掛けに貸してあげるシーンをよく見かけるから、韓国人男性は肌の露出には過敏なのかもしれない。
特別私だけが薄着だったわけでもなかったけれど。

そんなだから、私が胸の谷間が見えるような仮装なんてしたら、どんな反応をしただろう。
「風邪ひくからダメです!」、とヴァンパイヤのマントを着せられそうだな、なんて想像してそれも面白そうだからやってみれば良かった。

もしタイムスリップして6年前に戻れたら、「周りの目を気にしないで、楽しめるうちに楽しまないと損だよ」と自分に伝えたい。

あの時仮装していたら、山盛りのキャンディよりもっと楽しい思い出が作れたかもしれない。

そんな後悔すら今では楽しい思い出で、机の引き出しの中には今でもあの時のキャンディが、大切にしまってある。

いい加減、捨てなきゃと思いながらも捨てられないまま。

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