初めてのヨントンの思い出④ 2023/01/22
〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
初めてのヨントンを終え、友人に推しとの会話の内容をLINEで報告していると、生配信アプリ(Vライブ)の通知音が鳴った。
あ…もしかして…
私は期待に胸が高鳴る。
それはヨントンでの会話…
推しは珍しくメガネをかけていたのだが、「ハルさん、僕のメガネ初めて見るでしょ?」と言いながら得意げな様子だった。
私は「この間のVライブでもメガネを掛けてたでしょ?見てたよ〜」と答えた。
ああ、そっかと推しは照れ笑いしていた。
「じゃあ…今日もこれが終わったらVライブしようか?」とご機嫌な様子だった。
「うん!やってほしい!」と答えると、推しは「グフフ、わかったわかった。やるよ」と言ってくれた。
元々やるつもりだったのだろうけど、まるで推しが約束を守ってくれたような気分になって、幸せな気持ちになった。
推しは、ヨントンをしたスタジオから帰る途中の車内で、メンバーたちと一緒にVライブの生配信をしてくれた。
生配信が始まると、怒涛のコメントが画面に流れてくる。
私も頑張ってコメントを入力するけれど、猛スピードで流れていくコメント欄にいつも埋もれてしまう。
私のコメントは気づかないかもしれないけど、今日のヨントンが楽しかったと書いた。
生配信が終わってしばらくすると、別のメンバーのファンである知人からLINEがきた。
彼女は情報通で、他のファンの動向やメンバーたちのプライベートを探るのが趣味のような人だった。
彼女は、ヨントンの後にメンバーたちがVライブの生配信をしたことを、「韓国のファンのご機嫌を取るためだろう」と言っていた。
日本向けのイベントに不満を漏らす韓国のファンのご機嫌をとっているのだ、と。
Vライブは韓国のアプリで、会話もすべて韓国語だ。配信を見ているのは韓国や日本のファンだけでなく、アジア各国や南米、ヨーロッパのファンたち。
コメント欄には、様々な言語のメッセージが投稿される。
私は韓国語は断片的にしかわからないから、彼らの話している内容は少ししかわからないけど、練習室や宿舎などの一部を見ることが出来るから、生配信はほぼ欠かさず見ていた。
彼女は、メンバーたちは韓国のファンのコメントにばかり反応して、日本のファンのコメントはスルーしている、と言う。
他の人もみんなそう言ってる、と。
私は交友関係が狭いから、他のファンの意見などほとんど聞いたことはないが、彼女の周りのファンたちはそう言っているそうだ。
あの一瞬で流れていくコメント欄で、いちいち誰のコメントなのかなんて気に留めているとは思えないが、韓国の熱狂的なファンはもの凄い速さで大量のコメントを投稿するからメンバーたちに拾われることも多いのだろう。
そこはやはり韓国語ネイティブに敵うはずはない。
彼女は、日本向けのヨントンを韓国のファンが快く思っていないから、メンバーたちはVライブの配信をしたのだろうと半ば決めつけていた。
お金を払っている日本のファンより、お金を出さない韓国人のファンの方が大事なんでしょう、と失望しているようだった。
推しがVライブの生配信をしてくれたことが、私にとってはまるで約束を守ってくれたような気持ちだったが、浮かれていた気持ちがしぼんでいく。
もちろん、私と約束してくれたからやってくれたとは思ってなどいない。
だけど、喜ばそうと思って言ってくれたのだと信じたかった。
それから数週間後、ヨントンのサイン入りのポストカードが届いた。
私より先に届いた彼女からLINEがきて、「一言メッセージは、本当に一言でした」と苦笑いをしていた。わかっていても、期待してしまうのがヲタクというもの。
ありきたりの定型文メッセージが書かれたポストカードが届いたそうだ。
やっぱりそうだよね…
特別を期待してしまうのは、認知ヲタクの過剰な期待に過ぎない。
100枚近くのポストカードにメッセージを書くわけだから、同じような定型文になるのは仕方ないと思う。そういうものだと割り切ろう。
翌日、私の元にもサイン入りポストカードが届いた。推しが5枚、2番目の推しが3枚。
まずは2番目の推しのポストカードを開封した。
日本語と韓国語で書かれていた。
To.ハル、の宛名の下に書かれていたのは"はやくあいましょう〜" や、"だいすき〜"という平仮名の定型メッセージだったけれど、最後の1枚には韓国語で歌の歌詞が書かれていた。
それはSHOWBOXの特典会の時に、メンバーたちが私の名前を替え歌にして歌ってくれた曲の歌詞だった。
ヲタクは単純なもので、やはり定型じゃないメッセージは嬉しかった。
2推しのメッセージにテンションが上がり、いよいよ次は本命の推しのメッセージ入りポストカードを開封する番だ。
テープを剥がして袋から5枚のポストカードを出し、1枚目のメッセージを読む。
え.…
仕方ないと割り切ろうとしても、落胆と寂しさで気持ちが沈む。
ひらがなで、"ありがとう〜"の一言だけ。
内心、素敵なメッセージを期待していた自分が馬鹿みたいだ。でも、それにしてもこれは適当すぎやしないか…
いや、あと4枚あるのだから、1枚くらいテンションの上がるメッセージが書いてあるかもしれないと気を取り直し、2枚目をめくる。
2枚目はハングルで書かれていた。
もう笑うしかない。
実際、見た瞬間に笑ってしまった。
でも悲しいというわけではなく、推しらしいなぁと思ったのだ。
『そうそう、推しはこういう人だった』と。
アイドル対応が下手くそで、まるで中学生のような性格だった。だから、そんな推しが無理して頑張って"愛してる"とか"だいすき"とか、アイドルらしいことを言うと逆に居心地が悪くなる。
あまりの適当ぶりに、妙に面白くなってきた。
3枚目は、
はいはいその通り。私は元気ですよ。
久しぶりなんだから、胸キュンメッセージの一つくらい書いてみなさいよ、とフォトカードにツッコミを入れる私。
4枚目
お、ハートマークを付けてくれた。
それだけのことだけど、嬉しかった。
ハングルの意味は「待っていてくれてありがとう」。
定型文でも、デビューまでの2年間を知っている私には特別なメッセージだ。
そうだね、ずっと待ってたよとメッセージに相槌を打った。
最後の一枚。
推しの字は読みにくくて、解読するのに時間がかかる。
訳すと「僕たちと一緒に、一生行きましょう!」という意味だった。
推しはいつも私に対して敬語だから、一言メッセージといえど敬語で書かれていた。
そこはもう少し砕けても良いのにな、と思う。
馴れ馴れしいタメ口で話されるのは嫌だけど、こういうメッセージはもうちょっと…と勝手な事を言うヲタクという生き物。
一生一緒に。
最後に素敵なメッセージを書いてくれた。
そしてそのメッセージを読みながら、私はこれから先のことを思い描いた。
これからも決して彼らは順風満帆ではないだろう。
彼らがいつまで続けられるのか、正直怖かった。
おそらくみんなに書いているであろう定型文だろうけど、推しは思ってないことは決して言わない人だから、ずっと一緒に行こうと本心で思ってくれているのだと思う。
これからも、そう思ってもらえるファンでありたいと思った。
読んだ後ヲタ友に、どんなメッセージが書いてあったのか報告すると、「それ、5枚で一つのメッセージになってるみたいだね!」と言われもう一度読み返した。
To.ハル
ありがとう〜(≧∇≦)
久しぶり!
元気にしてるでしょ?
待っていてくれてありがとう❤️
僕たちと一緒に、一生行きましょう!
言われてみると、これで1つのメッセージになっているようにも見える。
..…偶然のような気がするけれど。
だけどヲタ友のポジティブな考え方は、私のネガティブな気持ちを変えてくれた。
そうだ、これはきっと推しが1つのメッセージになるように工夫してくれたんだ!
そう思うとテンションが上がった。
これからのことを私がクヨクヨ心配しても仕方ないし、どうせ定型文メッセージだと決めつけていたけど、そうじゃない可能性だってある。
うん、これは推しが私に宛てて考えてくれたメッセージに違いない。
他の人には推しがどんなメッセージが書いたのかなんて知りたくないし、知らない方が良い。
やっぱり持つべきものは、ヲタ友のように何事もプラスに考える友人の存在だなぁと改めて感じた。
先の見えない現状も、彼女となら前向きに乗り越えて行ける気がした。
そしてもう1人の友人とも、メッセージの内容を報告しあった。
彼女は「推しくんやっぱりすごいな…一生一緒に、なんて照れますね。」と、推しのメッセージを冷やかしていた。
「私の推しなんて、"いつも応援ありがとう"ですよ(笑)」と苦笑いしていた。
推しのメッセージはきっと定型文だろうけど、そういう風に言ってもらえると私の気持ちも盛り上がった。
前向きに考えよう。
これは、推しが私の為に一生懸命に考えてくれたメッセージだ。
フォトカードを保存用のファイルに綴じて、私は次のヨントンが待ち遠しくなった。
この先もずっと、推しを応援し続けることが出来るよう願った。
-おわり-