見出し画像

素直になれないヲタクが少しだけ勇気を出してみた結果② 2022/09/25

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

鶴橋から電車を乗り継いで、玉造の駅に着いた。

ビレボアがある南堀江は繁華街から近く若者が多く集まる街だが、玉造のライブハウスは閑散とした商店街の一角にあった。人通りもまばらだった。

しかしここは、ビレボアよりずっと広いホールだった。立地は悪いが、広くて綺麗でとても見やすかった。

私は、友人と一緒に最前列に座った。

平日の夜、郊外のライブハウスに一体どれくらいお客さんが来るんだろう、、と心配になったが、ポツポツと客が入ってきて少しずつ席が埋まった。
(会場のキャパが広すぎて、閑散とした感じではあったけど…)

東京から来たヲタクは、私の他は1人か2人くらいだと思う。SHOWBOXの常連ヲタクは1人も来ていなかった。こんなことは初めてだ。毎回大阪のファンを威嚇するように来ていた常連たちが、1人もいないなんて。

ライブが始まると、SHOWBOXでは当たり前にあった掛け声が全くないのも新鮮だ。
良くも悪くもSHOWBOXは、常連たちによって成り立っているところがある。
だけどそれが、内輪のノリになってしまって、新規のファンや時々しか来れないファンには疎外感を感じさせてしまう弊害があった。

私はSHOWBOXでは割と掛け声をする方で、本命の推しと2番目の推しのソロパートでは必ず歓声をあげるようにしていた。

掛け声が全くないのも寂しい気がして、私はSHOWBOXでするのと同じように歓声をあげた。

某メンバーのソロパートでは、「オッパー!」と叫ぶのがSHOWBOXの定番だったから、いつも通りそのメンバーのソロパートで「オッパー!」と叫んだ。(オッパとは「お兄さん」という意味。年上の男性を親しげに呼ぶ呼び方)

するとそのメンバーの隣に立っていた推しが、思わず吹き出して下を向いて笑いを堪えていた。
ちょっと恥ずかしかったけれど、推しにウケたようだ。

オッパと呼んだメンバーは、私よりずっと年下だから、本来はオッパだなんて恥ずかしくて呼べないけれど、本人が「ハル、僕のソロパートの時にオッパって叫んで」と何度も言うから、叫ぶのが定番になった。

そんなことなど知らない大阪のヲタクたちは、変な年増のヲタクがオッパだなんて叫んでると笑っていたかもしれない。

でもライブの雰囲気がとても良くて、そんなことは気にならなかった。
特に推しが、ご機嫌だった。
こんな風にはしゃぐ推しを久しぶりに見た。

あまりにも推しが面白くて、最前列の私と友人はケラケラと笑い転げていた。
友人は何度も「推しくんどうしちゃったの、めっちゃ面白いwww」と笑っていた。

大阪という場所が、そうさせるのだろうか。
メンバーたちとワチャワチャじゃれ合う推しが可愛かった。

ライブの中盤が過ぎ、メンバーたちがステージ袖にはけて会場が暗くなった。ソロステージのコーナーのようだ。

ソロの順番がどうなっているのか、いやそれ以前にソロコーナーがあるかどうかすら事前に知らなかった私は、誰が歌うのだろうとドキドキして待っていた。

暗い中、袖から1人、ステージの中央へ歩いてきた。

推しだ…
心の中で喜びが溢れた。

イントロが流れるのを待つ推し。
しかし、なかなか音楽が流れず静まり返る会場。
音響機材のトラブルのようだった。
心配でドキドキする。

どうしようかと、ステージ袖に目をやる推し。
何か指示があったようだ。

推しは、アカペラで歌い始めた。
シン・スンフンの「I believe」

美しい推しの歌声が響く。
私は、なんて幸せなファンだろう。
この素敵な曲を、推しのアカペラで聴くことが出来るなんて。
心が浄化されていく。

1番の歌詞を歌い終わると、タイミングよく2番のメロディから機材が復旧して、そのまま最後まで歌いきった。まるで最初からそういう演出だったかのような見事なタイミングだった。

こんなに幸せなハプニングがあるだろうか。
その余韻にいつまでも浸っていた。

平日に仕事を休んで大阪まで来るのは、本当は少し無理をして都合をつけたから、体力的にはしんどかった。
だけどそれが全て報われたような気がした。この日に大阪に来て良かった。

自分で言うのも何だが、私は"推し運"が良い。
前もって来ることを知っていて歌ってくれることも嬉しいけど、こんな風に偶然推しのソロの日に来れて、しかもこんな幸せなハプニングに立ち会えたことが嬉しかった。

つまらないプライドで素直になれない自分に落ち込んでいたけれど、その気持ちを推しの歌声が浄化してくれたような気がした。

推しに会いたくて大阪に来たのだから、ちゃんとその気持ちを伝えよう。
そう思った。


つづく。

いいなと思ったら応援しよう!