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SHOWBOX最後の公演のこと。2022/12/04
〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
2018年から2年間、推しが所属するグループは定期的にSHOWBOXで公演をしてきた。
そして、2019年12月が彼らの最後の公演となった。
世界的な感染症の流行により来日することが不可能となったからだ。
解散した2021年までは日本向けのオンラインライブとヨントン(ビデオ通話の特典会)が主な活動だった。
2019年12月、最後のSHOWBOX公演。
(2日後の別会場でのクリスマスコンサートが彼らの最後のオフラインコンサート)
韓国デビューが近いと噂されていたから、しばらく日本には来ないだろうと思っていたけれど、まさか日韓の行き来が完全に停止するなんて、この時は思っていなかった。
長期公演の最終日は毎回、立ち見も出て超満員になる。
だけど、この日は立ち見どころか空席もチラホラ…
パッと見、7割程度の客の入りだろうか。
SHOWBOXに来るファンは、自分への個別ファンサービスが目当ての人が多かった。韓国デビューの噂が出てから、そういうファンは去って行き、古参の常連の数はさらに減っていた。
前日の公演がとても楽しかったから、最終日も盛り上がるだろうと思った。
だけど始まってみると、2つの常連グループがお互いに張り合うように客席からメンバーにツッコミを入れたり、内輪受けの盛り上がりが五月蝿くて公演に集中出来なかった。
一緒に見ていた友人たちも、「あの人たち、お互いに自分たちがメンバーと親しいってアピールをしてるみたいだよね」と呆れていた。
メンバーたちも、常連さんのツッコミが入るたびにライブの流れが止まるせいか、最後の公演というのに不完全燃焼だった。
ライブ終盤に、メンバーたちが客席に降りて歌う曲がある。
メンバーW(注:前回のnoteで、常連さんをガン無視していたメンバー)が、私の真後ろの空いている席に座った。
振り向くと、Wはイタズラっぽい笑顔を浮かべながら目を見て歌ってくれた。私も思わず笑った。
彼は自分のファンや常連に対して特別扱いをしない。恐らくそれでファン同士が揉める事がわかっているのだと思う。
私が別のメンバーのファンであり、常連というほど幅を利かせる客でもなく、他のファンから反感を買うタイプではないことを分かった上でそんなことをしてくれたのだと思った。
公演後の特典会は大盛況だった。
特典会はライブを見た人だけが参加出来るのだが、2階の特典会会場へ入る時に特にチケットをチェックされるわけでないから、特典会だけこっそり紛れ込む悪質な客もいた。
この日は、ライブに入ってた人数よりも特典会に参加する人の数が多いように感じた。
メンバーたちは1階の楽屋から2階の特典会の会場へは、外階段を上がって来る。
その一瞬をカメラで撮影するために、階段の下にズラッと一眼レフを構えたヲタクが並ぶのがSHOWBOX定番の光景だ。
外は凍えるように冷たい雨だった。
常連ヲタクが去って行き、その頃カメラを構えて楽屋から出てくるのを待つヲタクは、私とヲタ友の2人だけだった。
かじかむ手でカメラを構える私たちに、あるメンバーは「風邪ひくから中に入って!」と心配してくれた。
体は冷え切ってしまったけど、その時に撮った推しの写真は優しい笑顔で手を振ってくれた。それだけで心が満たされた。
特典会は人が多すぎて、チェキもサインもスタッフからかなり急かされた。
推しと何を話したのか、ほとんど覚えていない。急がなきゃと焦るばかりで、会話に集中出来なかった。
そのかわり、メンバーWとの会話がとても楽しかった。
サインの順番になると、Wは少し戯けてこう言った。「今日はハルちゃんの後ろに座って歌ったから、楽しかった」と。
そして「クリスマスコンサートは来る?」とWが質問した。もちろん行くよ、と答える。
「クリスマスもハルちゃんの近くに行くかも」とイタズラっぽく笑っていた。
彼らのファンになって最初の頃は、Wとの会話が1番憂鬱だった。毎回ワンパターンの会話で、盛り上がる要素が全く無かったから。
それが、2年の間にWとこんなに楽しくコミュニケーションが取れるようになるなんて感慨深かった。
急ぎ足で特典会が終わり、お見送りの時間。
特典会終了後に、外の広場で退勤の挨拶をして帰って行くのがいつものパターンだ。
メンバーたちの目の前の場所を確保するヲタクたちの熾烈な場所取り競争に、私はいつも参加することは無かった。少し離れた位置で、ヲタクたちの頭の間から撮れればいいやと思っていたから。
この日も、広場の好位置はどこも空いていなかったから、私は階段の上からカメラを構えた。
広場でメンバーが最後の挨拶をして、車へ向かう。
私は階段の上から、去って行く推しの写真を撮ろうと思ったけれど、傘をさす推しを上から撮るのは難しくて諦めることにした。
私はカメラを下ろし、去って行く推しの姿を階段の上から見ていた。
すると、階段の下に差し掛かった推しが上を見上げ、目が合うと笑顔で手を振ってくれた。
バイバイと笑顔で手を振る推しに、私もバイバイと手を振り返した。
もしカメラを構えていたら、手を振ることは出来なかっただろう。最後にそんな終わり方が出来て、私は幸せな気持ちになった。
周りのヲタクに気づかれないよう、顔がニヤけてしまうのを必死に誤魔化そうとした。
緩む口元を隠して、知り合いのヲタクたちに挨拶をして駅へ向かった。
こうして彼らのSHOWBOX最後の公演は、あっけなく終わった。
2日後、別のホールで行われたクリスマスコンサートの翌日に韓国へ帰国し、翌年デビューすることとなる。
もしあの時、これで直接会えるのは最後になるとわかっていたら、私は推しに何を伝えただろう。
終わりがわかっていた方が幸せなのか、知らない方が幸せなのか答えは出ないまま。
私は今でも、まだ推しに会える可能性を諦めきれずにいる。