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デビューしてほしい気持ちと、このまま新大久保にいて欲しい気持ち③ 2022/11/12

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

チェキにサインしてもらう時は毎回、何を話そうか迷うことが多かった。
気の利いたネタが思い浮かばない。

事前に話したい内容を用意した時ほど、空回りして上手くいかないものだ。

この日の会話は何も考えずにのぞんだけれど、その場の流れでとても楽しい会話になった。

ノープランの会話の方が上手く話せるのかもしれない。

推しとの会話はキャッチボールのよう。
たまに変化球を投げて動揺させられるけど、推しは上手く受け止めて返してくれる。
楽しくて幸せなキャッチボール。

友人Mが、古参の常連さんに対して個人サインの時に冷たい対応をしていた推しを見てこう言っていた。

「私はたまにしか来ないから、推しくんが他の人にどんな対応をしているのか全部知ってるわけじゃないけど…
でも、ハルさんと話してる推しくんはいつも楽しそうに見えたから、ハルさんの前に並んでいた人に対する態度がすごく冷たく見えたんですよね。ほら、いたじゃないですか、去年だったか推しくんに連絡先を渡したり、嘘ばかりついてた子…あの子に対する態度と同じように見えたんです。」

以前よく見かけた同担さんで、可愛くて明るい印象の子がいた。

たまたまサインの列で前後になり、ファンになったきっかけなどを話す機会があった。
新大久保アイドルを好きになったのは初めてで、戸惑っていると言っていた。
そして、常連の怖い人たちに嫌がらせを受けているのだと言っていた。

その後も何度か顔を合わせ話すことがあったが、どうにも毎回言っていることが違っていて、辻褄が合わないことがあった。

この子、ちょっと危険かもなと気づき始めたとき、たまたま推しとサイン会で会話をしている彼女を見かけた。
推しは怖いくらいに無表情で、対照的に彼女はキャッキャと嬉しそうにはしゃいでいた。

その後も何度か、彼女のことをあからさまに無視する推しの姿を見た。友人も彼女の話す内容や推しの様子を目にして、「あの人めちゃくちゃ危険ですね、、、」と警戒していた。

後から彼女の友人から聞いた話だが、彼女は推しに自分の連絡先を渡したり、度が過ぎた行為をしていたそうだ。

明るくて可愛い子だった。

そういう目的でSHOWBOXに来ているファンというのは、確かに少なからずいた。

ファンと遊ぶことを目的でアイドルをしている子だったら、いともあっさり繋がれるだろう。実際、別のグループのアイドルと繋がって、プライベートで遊ぶ友人もいた。お互いの目的が合えば簡単なことなのだ。

推しは、どうだったろう。
少なくともそんな噂は私の耳には入らなかった。

だけど、来日してから2年。
この状況がこれからも続けば、いつか推しも誘惑に負けてしまうかもしれない。

早く韓国でメジャーデビューをして、新大久保アイドルから抜け出してほしいと思う気待ちに変わりはない。

でも心のどこかで、このまま新大久保アイドルを続けてほしいと願う自分もいる。

このところ、そろそろ韓国デビューが近そうな雰囲気を感じて私の気持ちは落ち着かなかった。

仲良しのヲタ友が、ふとこんな言葉を漏らしたことがある。

「借金をして韓国デビューすることが、本当に良いことなのかな。新大久保なら若くなくてもファンはつくだろうし、やりようによっては稼いでいけるんじゃないかなぁ、、」

韓国でデビューするには大金がかかる。

多くのアイドルはそのデビュー費用やレッスン費用は、自分たちの負債となるのだ。
その借金を返し終わってからようやく給料がもらえる。

推したちのグループは20代半ば。デビューするには若くはない。SHOWBOXで稼いで資金を貯めているだろうけど、デビューして活動するにはさらにお金がかかるのだ。この年齢で借金を負って活動をしても、すぐに兵役へ行かなければならない。
兵役後にグループが存続している保証はないのだ。

もちろんデビューしてもSHOWBOXで長期公演をするグループはたくさんいた。
韓国で活動するために日本で稼ぐ、という流れ。

これからの事を考えた時、借金をしてまでデビューすることが最善なのか、という疑問がどうしても浮かんでしまう。

それは、私のエゴだろうか。
デビューしたら今までのように新大久保へ来れなくなるかもしれない、韓国人のファンが増えれば、韓国語が話せない私のようなファンはもう相手にされなくなるのではないか、漠然とそんな不安が頭に浮かぶ。

結局は、推しのことを心配しながら自分のことしか考えていないのではないか。

今になって考えると、この時点でデビューのことは決まっていたと思う。
前だけを見て、希望に溢れていただろう。

最初から遠い存在のアイドルだったら、推しのデビューを全力で応援していたと思う。下手に近すぎるアイドルだったから、遠くなっていくことが不安だった。

デビューして、韓国の新しいファンが増えて、私の存在など推しの記憶の片隅に追いやられても、その事実を受け止められるように今から準備しておこう。

せめて私は最後まで、推しにとって良いファンでいたい。

心の中でそんな葛藤があることなど、誰にも悟られないように、最後の公演まで楽しく過ごそうと決めた。ラスト2週間。

終わり。

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