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物分かりの良いファンの功罪④ 2024.09.05

〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

美人ちゃんから、2推しがソロステージで自分へのメッセージソングを歌ってくれたエピソードを聞いた私は、それまで仲良しのヲタ友以外には言わなかったことを、美人ちゃんに打ち明けた。

不思議と、この子になら話しても大丈夫と思えた。

推しが私に、「最後のソロを聴いてほしい」と言って、歌う日にちを教えてくれたエピソード。

来日2度目の長期公演で、自分のソロステージ最後となる曲を私に聴いてほしいと言ってくれたのだ。
歌う日にちを教えてはいけないルールだったが、推しはその日にちを教えてくれた。

推しが事務所や他のファンから怒られてはいけないと思って、私はその話を信頼できる仲良しの友達にだけ話した。

こんなこと、新大久保ではよくあることなのだろうか?
私は推しのグループ以外に行ったことが無かったから、これが特別なファンサービスなのか、常連なら当たり前のことなのか、判断がつかなかった。

だけど、これは人に言ってはいけないことだと思った私は、自分とヲタ友の秘密にしていた。

私には特別なことだったから。

推しの最後のソロにまつわるエピソードを美人ちゃんに話すと、彼女は「そんなこと、よく今まで秘密に出来たね」と、半ば呆れていた。

でも賢明な判断だと美人ちゃんは言った。

そして、「私ね、ハルちゃんが撮るアイツの写真、好きなんだ」と言った。

見よう見まねで始めた一眼レフ。
お世辞にも上手ではないことは、自分でもよくわかっている。

「これ見てみ」

そう言って美人ちゃんは、推しのヲタクたちがSNSに上げた写真を何枚か送ってきた。

「これも、これも、これも。
みんなアイツの目線写真ばっかり。」

それから、私が以前SNSに上げた写真もLINEに貼り付けた。

「このハルちゃんが撮った写真は、すごく自然で良い顔してる」

その写真は、遠くから推しの横顔を撮った写真だった。私は推しの横顔が大好きだったから。

「知ってる?アイツさ、自分の目線写真が嫌いなんだよ」

美人ちゃんが推しのファンだった頃、美人ちゃんが撮った写真を何枚かプレゼントしたそうだ。
(美人ちゃんは、めちゃくちゃ素敵な写真を撮る)

この中でどれがいい?と選んでもらった写真は、すべて横顔や斜めから撮られた、目線を外したものだったと。

私が目線写真を載せなかったのは、単に推しの横顔が好きだったこと、そして目線写真をSNSに載せると同担が嫌な気分になるのではないかと思ったから。

「あの人たちはさ、こうやって目線写真ばかりを上げて、煽りあってるだけなんだよ。だから、ハルちゃんの写真を見るとホッとするの」

美人ちゃんは、そう言ってくれた。

写真ヲタをやっていると、目線写真が少なければ『干されている』と言われる世界だから、多分私は周りから『目線を貰えない干されたヲタク』だと思われていたのかもしれない。

「アイツから2推しに乗り換えた時、本当に申し訳ないなって凄く罪悪感を感じてたんだけど、いつの間にか癒しの存在を見つけていたか〜〜。」
と美人ちゃんは茶化した。

美人ちゃんが推しから2推しへ乗り換えたとき、推しのファンたちは煽りあってケンカばかりで、推しに対しても自分への対応が悪いと不満をぶつけてばかりだった。

そんな中、美人で物分かりがよく、韓国語も話せて、プレゼントも沢山くれて、不平不満を口にしない、美人ちゃんのようなファンが推しにとってどんな存在だったのか。

想像すると、少し、、、羨ましくて複雑な気分だ。

その頃の私は、推しの眼中にはなくて「無」と同様の存在だったから。

もしかしたら推しや2推しは、美人ちゃんにファン以上の気持ちを抱いていたのではないだろうか、などと馬鹿なことを考えたりもした。

推しと2推しの名誉の為に言うが、どちらも美人ちゃんとプライベートで繋がっていたとか、そんなことは全くない。

美人ちゃんはその派手な見た目から、他のヲタクたちから『キャバ嬢』と噂を立てられていたが、ごく普通のアルバイトをしながらSHOWBOXに通っていた。

ただ、『新大久保アイドルあるある』だが、ファンに手を出すアイドルというのは存在していた。

美人ちゃんは他のグループと掛け持ちしていたが、そのグループのメンバーから個人的なDMがよく来ていて、プライベートのお誘いもあったそうだ。

推したちのグループは個人SNSを禁止していたし、ファンと繋がっていたという話は解散後の今でも聞いたことはない。
(手紙にLINEのIDを書いて渡していたファンは何人か知っているが、連絡が来たという人はいなかった)

この1年後、アイドルにとっては"良客"ともいえる美人ちゃんは2推しから去って行った。

その辺りの話を次回書こうと思う。

つづく。

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