作品の、影
【感想】ゴッドハンド(ドキュメンタリー番組)
昨日、たまたま付けていたテレビで復元師のドキュメンタリーを見た。
冒頭の編集のかっこよさと、修復師という聞き慣れない肩書きに興味をひかれた。
https://www.nhk.jp/p/ts/Q6K2G9MNL9/
陶磁器などの修復の依頼を受け、割れたお皿もまったく壊れたことに気付かないくらいまでに修復してみせる。中には億単位の値がつくような作品の修復依頼を受けることもあるという。
過去に職人が造り出した作品と対峙する。また、その作品が経てきた時間と使ってきた人の時間まで、修復作業で刻み込んでいく。
そこには研究の末編み出された技術と、復元師の研ぎ澄まされた感覚があった。色の調合やどのような材料を使うか判断し、装飾まで研究して細かい作業を積み重ねていく。作業の繊細さと気の遠くなるような細かい作業に驚いた。
作品の作者や所持してきた人々の思いまで汲み取り、作業にあたる。それは単純にコピーする作業ではない。人の心で読み取り、仕上げていく作業なのだ。
復元師は長い間、影の存在だったそうだ。壊れていたことを知られないような状態である方がより良いため、人々には知られることはほとんどなかった。黙々と作品と向き合う姿にかっこよさと、黒を貴重としてシンプルに修復過程を見せるのにも心ひかれた。田中泯さんの重みのあるナレーションもよかった。
影のように怪しげだが、ずっしりと、作業を続ける復元師の背中は自負と、何かと戦っているような恐ろしさを感じた。
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