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和樂web編集長に聞く🌕 お月見お菓子の由来&月見の新しい楽しみ方

和樂web」編集長のセバスチャン高木氏とたどるお月見。前編は歴史や背景について教えてもらいましたが後編は実践編です。

あの最中だって月が由来

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ーー年中行事の楽しみといえば食べ物ですよね。お月見だと月見団子や里芋の衣かつぎ、現代では月見バーガーもありますね!

月見団子といっても色々な種類があって和樂webでも紹介しています。あと、最中(もなか)の由来も月にちなんでいるんです

勅撰和歌集という天皇や院の命令で作られた和歌集があって、そこには漏れてしまったけど優秀な作品を集めた「拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)」というものがありまして。この中に撰者で三十六歌仙の一人、源順(みなもとのしたごう、平安時代の歌人)が中秋の名月を詠んだ和歌が起源のひとつと言われています。

池の面に照る月なみを数ふれば今宵ぞ秋の最中(もなか)なりける
源順

さざ波立つ水面に映る月が、今晩はひときわ美しい。そう、今宵は中秋の名月なのだった。

宮中で出されたお菓子が薄い丸型のもので中秋の名月に似ていることから「最中の月」と呼ばれたようです。その和歌を知った江戸時代の和菓子屋さんが、現代の最中の原型を作った、などとも言われています。その発想力が素晴らしいと思います。

ーー江戸の庶民たちも、平安時代の書物が身近だったんですね。

江戸後期になると出版文化が花開き庶民たちも「源氏物語」や「平家物語」を読んでいたんですよね。また落語も人気でしたからワードセンスを磨く文化が発達していくのですよね。様々な文化が開花していったのでしょう。中国からやってきた文化を進化・発展させていく。それは、現代のハロウィンやバレンタインと同じですよね。

月見団子も全国でいろいろな種類があって楽しいですよね。
孝明天皇の妹君の和宮は、とらやに発注していたみたいですよ。団子というのは江戸時代に普及した比較的新しい文化かもしれませんが、平安時代は貴族たちの間で「月のまんじゅう」を食べる文化はあったそうです。

好きな飲みものとお菓子やおつまみをお盆にのせて。”月見セット”という新提案

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江戸時代の盛大な宴のようなお月見もいいですけど、独りで楽しむお月見の提案もいいなと感じます。雑誌「和樂」では以前に「一献(いっこん)セット」という特集を組んだことを思い出しました。好きな日本酒を、好きな酒器に入れて、おぼん(トレイ)に入れたセットアップの特集。お月見だと縁側とか庭とかに出ますから、そういうセットがあるといいなと。

ーーすごくいいですね。おぼんや器にセンスが出ますし。そんなセットアップを「お月見セット」と命名したいですね。

注いだ酒の表面に月を映して、とてもいいですよね。月が見えるグラスとかも作りたくなります。

ーー同じ月をみながら、おのおので好きな酒やお茶を飲む。いいですね。

誰かと「同じ月をみる」という描写って平安時代の和歌にもいくつか登場しているんです。最近だと漫画家・土田世紀さんの「同じ月をみている」という作品が映画化にもなりましたし、時代を超えた共通の概念なのかもしれません。

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聞き手:あつみが用意してみた「お月見セット(一献セット)」


月を撮る、和歌や俳句に変わる現代の楽しみ方かも

あとスマホで月を撮るっていうのも現代の新しい楽しみ方だと思います。この月をみてどう思うか、そんな気持ちを添えながらシェアできると面白いですよね。

ーーinstagramやTikTokにも月の投稿ってあるんですよね。スマホだと小さくしか写りませんが、でも切り取り方にセンスもでますし、面白そうですね。

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instagramには「#月」が280万件投稿されている(2021年9月現在)

これからのお月見について。
様々な選択肢があってこそイベント。

ーー前編の「知識編」と「実践編」と、様々な角度からお月見について知ることができました。ありがとうございました。

前編の冒頭に言いましたが、日本文化の特徴は中国や外来文化をガラパゴスに進化させていくことなんです。イベントの多様性を引き出している。しかし、どこかの瞬間からその多様性を否定するといいますか「守り」に固執してしまうところもありますよね。そうすると思考停止してしまう、それは良いことではないような気がします。

宴のようなお月見もあれば、しっぽり独りで月を味わう提案があってもいいでしょう。トラディショナルなお月見を伝えていくのも、現代にあった楽しみ方の提案も、いいのかもしれませんね。

ーーこうしてみると平安時代の貴族や江戸後期の庶民たちも、お月見文化をアップデートしていたことがわかります。そんなふうに私たちもお月見にいろいろな選択肢を提案していきたいと思います。今回はありがとうございました。


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