銭湯のはなし/①
近所には銭湯がない。
銭湯がないなんて、ものすごくつまらない。スーパーが少ないとか、飲食店が少ないとか、そういうことにだって不満はいっぱいだけれど、銭湯がないっていうのは特大の不満だ。
地元は銭湯が多くて、気分で選べるくらいの数がある。今日はあのサウナがいいとか、深めの浴槽がいいとかって気まぐれに選び銭湯に行っていた。隣町にも銭湯はもちろんあったし、お目当てがお休みでもどうにでもなる。だから銭湯ってそんな風にその辺にあるんだろうと思い込んでいた。
銭湯がどんどん減っているってニュースでも聞いていたし、風呂なしアパートがなくなっているんだもの、そりゃ銭湯経営は厳しいだろうなぁと思っていたのに、近所の銭湯は賑わっていたもんだから実感がなかったらしい。引っ越し先の地域にももちろん銭湯はあるもんだと思ってしまっていた。引っ越しが落ち着いて、疲れた体を癒そう、銭湯でも行こう〜と調べてみたら、近所には全くない。最短距離の銭湯までは何駅も遠く、土地勘もないのでさっぱりわからない。そりゃもう、がっかりしてがっかりして、ブーたれて、家族三人ブーブー言っていた。この街を好きになれるポイントが全然ないのに、銭湯までないなんて最低最悪だ!とけちょんけちょん。
あれから私は銭湯を求めて色んな土地に出かけている。休日の散歩がてら、街撮影がてら。最終地点を銭湯に定めて、その街をウロウロして撮影して最後に銭湯を楽しむ。
そんなことをしていると、いくつか行きつけの街が出来たし、行きつけの銭湯が出来てきた。
最近の行きつけの街は、18歳の頃に住んでいた街。
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