『1文が書ければ2000字の文章は書ける』
2023/7/14 松永 正訓・著
“正しい読み方”と言う意味の「正訓(せいくん)」を名に持つ、松永 正訓(まつなが ただし)さんが書いた、「正しい文章の書き方」の本だ。
私は文章を書くのが好きだ。でも、都合で小学一年までしか授業を受けていないことと、その後も学習をしてこなかったから、成人を迎えて以降も漢字はおろか、短いひらがなの文章すらまともに書くことができなかった。
そこへ弟が、経験だけは豊富な私に文章を書けと言った。
経験談を思いつくままに書き出すと、何でも誉める。手書きの漢字が間違っていても、「おお、なるほど新たな発見!」などと言っておだてる。
調子に乗って一冊の本を、辞書を引き引き数ヶ月もかけて読んでは学び、30有余年。いちおう、「大体言いたい意味はわかる」と評価される文章が書けるようになった。
しかし、やはりいま以って、「何だか独特だね(笑)」「言葉選びが妙だよね」などと奇異な評価をされては不安を覚える。
そんな折、偶然見かけたこの本を手に取らないはずもなかった。
「この私が、文章の(書き方)指南本を批評して良いの?」と、戸惑いはもちろんあったが、それでもレビューしたくなるような本だった。
心の中では、この本の題名を、「うまく書かなくていい」とした。副題は「分かりやすく丁寧に」だ。
今までにも文章の書き方の本を読んだことはある。でも、偶然見つけたその本には規則ばかりが並んでいて、書き手の感性は二の次だった。
この本は、言うなれば「芸術作品」のようだ。だから、感性が尊重されている。
「え? 思いつきでやっていたけど、間違いではなかったの?」と言う点もいくつかあった。もちろんその逆はもっと多いけれど。
文章の書き方の本であるのに、文系の人ではなく、理系の極み!現役医師が書いている。
現役開業医師なのに、ノンフィクション大賞まで獲っている。
自著の引用も多いが、新聞の社説など、文筆プロが書いた文章や、他の「文章の書き方」本の指導内容を引用して、修正や訂正、違った角度からの意見を述べてある。
有名な文筆家の文章に対してだっていささかの躊躇も見られない。
さて、その後に書いたこのレビューではあるが、そう易々とは上達しないのである。