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12/2の破壊者

12月1日、俺の会社は倒産した。
あんなことでもなければ、まだ倒産はギリギリ免れていたはずだった。
犯人は絶対に許さない。
俺だけじゃなく、会社に務めていた社員全員に迷惑を掛けて、今もどこかに逃亡している。
昨日、辞めざる負えなくなった社員は、お金が底をついて窃盗事件を起こしたらしい。
警察が事情聴取に来てわかった。
あんなに真面目で家族思いだった、あいつが窃盗犯だなんて、俺の会社が倒産しなければ、そんな事にはならなかったのだろう。
すまないことをした。
でも、起きてしまったことは仕方がない。
早く自首して、捕まって欲しい。
窃盗犯程度なら、まだ引き返せる。
窃盗犯か……
会社の金を全部根こそぎ持ち逃げした。
あいつのことは絶対に許さない。
そんな小さな窃盗犯なんてどうでもいいから、うちの会社の強奪犯を捕まえてくれよ。
ついつい、警察に八つ当たりしてしまったが、それでもまだ怒りが治まっているわけじゃない。

俺は1件電話を掛けている。
電話の相手は、解体業者だ。
オフィスを破壊して、月極駐車場を経営する。そういうプランだ。
アパート経営でもと思っていたが、この土地は駐車場のほうが良いだろうと思ったからだ。
管理者を雇う余裕はない。
もう俺の歳では大きな経営も難しいだろう。
何よりもやる気が入らない。
更地にして、ご近所に空き地を貸し出す程度しか考えつかないから、それならばまだ、俺だけでもやれるだろう。

電話を切って受話器を置く手が震えている。
電話で話している声も時々上ずっていたかもしれない。
俺は泣いているのか……

今まで頑張ってきたものをすべて奪われて、俺は泣いている。
昨日、悔し涙を流したばかりだというのに、また……
俺も歳を取ったということだろうか。

机に拳を振り下ろして、穴が空いて、手を傷つけていても、今は痛みすら感じない。

アイツを見つけたらタダじゃおかねえ。
この償いはキッチリ払ってもらうからな。

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