1.アオワイという惑星
危険に対して、意思し思考する事を忘れたものは、その危険に恐怖し
感じる心が薄れ、宇宙の秩序を維持することを忘れるだろう。
生命は儚く燃え尽き、長生きすら出来ないまま、宇宙が溶けてなくなってしまうかのように、明日の希望が消えてゆく。
希望はやがて欲望へと変貌して、信じることを止めた。
混沌とする社会は、希望を探した。
そして、たどり着いた答えがここにはある。
ここは美しい太陽と月と水の惑星。
その昔、地球と呼ばれていた。
この惑星に大昔100億人以上もの人がひしめき合って暮らしていた。
今はどうだろう?
人口統制システムが機能し始めてから、この惑星の人口は大昔に比べれば、だいぶ少なくなってきただろう。
太陽の船が、人々を他の惑星へと運んだ。
いま、人が暮らすことができる惑星は、ここの他に3拠点ある。
そして、暮らしているこの惑星の名は、アオワイ。今はそう呼ばれている。
惑星アオワイの民は、始祖の民だ。
全てはここから始まった。
誰よりも規律を重んじ、システムに忠実に生きている。
もし、システムに違反するようなことがあれば、惑星ポポアか惑星アヌワーへ送られてしまう。
違反しなかったとしても、少し信頼が崩れ落ちて行けば、人々は査定され、太陽の船に乗せられて、運ばれていく。
惑星アオワイの民は、いうなれば、規律を重んじる超エリートの集団と言える。
この惑星よりも暮らしやすい惑星は無いと聞く、人類が生まれ育った最初の惑星である。この惑星アオワイこそが、人が人として暮らして行ける。唯一無二の惑星なのだと。
地球の元あった6大陸は形を変え、今は3大陸に姿を変えて、それぞれを月、光、水から名前を取り、マヒナ大陸、ラマ大陸、ワイ大陸と名前を変えている。
人は欲望の限りを尽くして大陸の形が変わるほどの大戦争を行った。人は本当に恐ろしい生き物だ。そのために、人が自らを抑制するために、システムを開発したのだという。人の欲望を制御するために、今はシステムが働いている。
人類の新しい希望。人を支えるために、人によって作られたシステム。
惑星アオワイの人は、毎日、生まれる人が少なくなっている。これこそが人口統制システムのおかげだ。
ただ実際には、人は死を恐れている。
それと同じほど、人口統制システムについて考えることも恐れている。
このままでは、人が居なくなるのではないかと、将来を心配して恐れている。
そのため、人は自身の最善を尽くすことだけを考え、人口統制システムについて考えることを止めた。過去の過ちを繰り返さないように生きている。
今は、より深い問題に陥ることを恐れている。
一瞬で人が消えてしまうのではないかと心配している。招いてしまった悪夢を恐れている。大陸がまた一つ消えてしまうのかと恐れている。
自分自身だけを考える傾向が強まり、明日、子供が生まれなくても、誰も気にもとめないはずだ。
最後に生まれ出る子。人類最後の子は、誰になるだろうか?
惑星アオワイから遠く離れた、第四の惑星クアヒで暴動が起こるのは、それからだいぶ先の話となる。
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