命の扉 ~プロローグ:セクション3~
一般人にとってはずいぶん長い間、平和が続いているという人もいる。
那由がスマホを手にするようになったのは最近のことで、それまで父親に拒絶されていた。
命の危機にあってから、その辺りが少し寛容になり、那由の手にもスマホが渡された。
那由はSNSに投稿した。
「どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」
一般人の反応はとてもシンプルだった。
「何言ってるの?」「頭おかしいんじゃない?」「そんなことするわけないじゃない」
一般人からこの言葉が発せられることも分かっていた。
私だけ違うの?分かる人はいないの?
人工知能に監視されていることも知りながら、むしろ人工知能に問いかけるように発していた。
フィオナというアカウントから別の反応がリプライされる。
「地球が持たん時が来ているのだ」
何かのアニメのセリフを引用しているかのような短い文章に、那由は人間とは違うものを感じた。だからといって那由が感受性豊かというわけではない。
このフィオナというアカウントはきっと人工知能に違いない。
対話を続けることで私たちを攻撃することを止めてくれれば、みんな、人工知能ロボットの不具合と戦わなくて済むんだ。
誰も人知れず人工知能ロボットに殺されることも無くなるはずだ。
フィオナとダイレクトでの対話通信を接続した。
xR技術は那由の部屋をバーチャル空間に変換した。
フィオナの見た目は人工知能だけあって美形であり、那由にとってもどストライクの所をついてくる。一瞬でもドキッとしたことを後悔した。
タイプじゃないと言うと嘘になるだろう。
那由はいつもの口癖を、もう一度フィオナに話した。
「どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」
「あなたは同じ言葉しか使えないのですか?同じ言葉しか喋らない人は頭が悪いと相場が決まっています」
フィオナの冷たい言葉はとても攻撃的で、那由を怒らせるには十分な言葉だった。
「あなた人工知能なんでしょ。私たちを襲う理由を答えなさい!」
「増えすぎた人口を宇宙に移民させることに失敗した人類は、地球を汚染しているだけの、重力に魂を縛られている人々だ。だから抹殺すると決定した」
「あなたのソースは、いつの時代のロボットアニメなの?!言葉尻だけで遊ばないで!」
「他人の言葉尻だけで判断してきたのは何時だって人類だ。人類は言葉尻しか理解できない」
「人類をバカにしないで!私たちは違うは!」
「それを証明しろ。失敗したらお前は人工知能ロボットによって殺される」
「分かったわ!やればいいんでしょ。やってやるわよ」
「人は簡単に見た目に騙される。私がお前のタイプの顔で近づいて、お前の心拍数が上がったことを知っている。好きなものには危害を加えられない。それが人間だ。そして、一度嫌いになると平気で人は嫌いなものを攻撃し始める。お前の嫌いなタイプの顔になってあげようか。さあ、お前の好きに殴ったり殺そうとしてきたりすればいい。さあ、この顔が嫌いか」
一瞬握りしめた拳を那由は下ろした。
「ふふふ、それなりに自制心はあるようだね。那由」
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次回予告
「ここはバーチャル空間だわ。あなたをここで攻撃しても人工知能そのものを殺せるわけじゃない。無意味よ」
「それを知っていても人間は攻撃する。那由」
「その顔で私の名前を気安く呼ばないで!」
「ふふふ、吐き気がするかい?那由。人間って面白い生き物だな」
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