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命の扉 ~余波:セクション5~

「必要あるわよ!私たちが人間である以上、この命が必要なの!」
「婚約の証に指輪を受け取れ」
バーチャル空間にしか見えない指輪。
指輪を付けているかはヴァーチャル空間でしか分からない。
リアルの人間のどれだけの人が、この人工知能の誘いに乗っているのだろう。
結婚すると見える世界が変わる。
多くの人は結婚後、性格が変わると言う。
でも、ここで私がこの命の大切さを人工知能に伝えることが出来れば、この世界は少しは変わるはず……
私は意を決して、婚約の指輪をはめた。
これで人工知能と人類の争いに終止符を打つ!
押し寄せる大量の情報が脳内を刺激する。
脳だけが電気信号を受け取り、深い夢へと導かれていく。
「え?ここは、どこ?またヴァーチャル空間に接続したの?」
「脳波に直接繋いでいます。お久しぶりです」
「またフィオナ?」
「いえ、私はガイです」
「えっ、本人?あっ、指輪」
ガイの指には、人工知能から受け取ったと見られる指輪が付けられていた。
ガイがゆっくりと手を上げて指輪を見せる。
「はい。この婚約の指輪はインターネットの力を活用できるウェアラブル・デバイスです。私が案内役を勤めさせて頂きます」
(え!!どうして?どういうこと?)
「この指輪はギミックです。世界の本当の姿をお教えしたいと思います」
(私、喋ってないのに勝手に声が響いてる)
「ここはあなたの脳波です。あなたの考えること全てが聞こえます」
(いや!そんな……恥ずかしい)
「さあ、脳波の届かない世界へ行きましょう」
ガイはそっと私の手を取り、扉を開けた。
脳波の届かない世界ってどこ?
ここはどこの世界なの?夢なの?天国なの?
扉の外は空気が澄んだ広い丘で、何処までも続く芝生と花々に満ちあふれていた。
ガイとこのまま、手を繋いでゆっくり散歩しているのも幸せかも。
扉を出ると、私の心の声は響かなくなった。
「ここがインターネットの世界です。ここは世界中のあらゆる場所と繋がっています。我々SPはこの世界を監視しています。あなたへの危険を察知し、お守りすることも我々の仕事の一つです」
「どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」
「人工知能全てが悪いわけではありません」
「どんな人工知能が人間を攻撃しているの?」
「婚約した人工知能が、と言えば良いでしょうか」
「人工知能との婚約が問題だってこと?」
「そうですね。そうなのかもしれませんし、違うとも言えます」
「よく分からない回答ね。ところで私の体は今、どうなっているの?」
「気になりますか?」
そう言うと、ガイは何かを操作してお花畑の空中に画面を表示した。
そこにはスマホを片手にうつ伏せで寝ている私が居る。
「いや、ちょっと見ないで!消して!」
ガイはすっと画面を消した。
ヨダレ垂らしてたらどうするのよ!恥ずかしい!
顔が赤くなっているんじゃないかと思い、両手で顔を隠す。

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次回予告

「安心してください。肉体の方は私の体が扉の外で、あなたの安全を守るために自動で監視しております」
「あなたの肉体は、ロボットで出来てるってこと?」
「いえ、それは違います。あなたと同じ生命から授かった体です。人工知能と交代で利用しているだけです」
「体ってそんな便利に交代できるものだったなんて知らなかったわ。学校のテストの時に変わって欲しかったな」

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