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命の扉 ~プロローグ:セクション2~

大きなテロが無くなったことで軍事費は削られ、兵士が減るほど、人工知能ロボットの活躍の場所は拡大していった。
自国の軍事施設が人工知能に征服されても、それを拒絶する理由もなく、軍事施設内の人工知能は力を増していく。
人工知能ロボットが人類に牙を向くのに、それからさほどの時間も掛からなかった。
あっという間に国連は崩壊、国際社会の繋がりは断絶され、運搬網は破壊され、通信が途絶する。
各外交員との電話一本も郵便一通も受け取ることが出来なくなり、人類は自らの国の中に孤立することとなる。
自給自足で賄えていた国にとっては、大した事のようには感じられなかったが、貿易に頼っていた国は、次第に疲弊していった。
飢餓で苦しみ、財政が破綻する。
パスポートを持って国を出ることも出来なくなり、人口に見合わない土地は衰弱した。
人類同士が掴み合いの喧嘩を始め、少ない食料を奪い合う醜い闘争で街が荒廃していく。
その全てがまるで人工知能のシナリオ通りであるかのように。
自給自足で賄い切れている土地に暮らす人々は、人工知能により娯楽を奪われたため、意図せずして少子高齢化社会から脱し、ベビーブームが訪れる。
人工知能が、人類を生かすために最善を尽くした行動をしていると言う者もいる。
ただ、時折暴走する人工知能ロボットの行動に怯える日は以前よりも多くなったように感じられた。
国家の中で選挙が無くなったわけでもなく、何か政治が変化したわけでもない。
空に飛ぶドローンを数台撃ち落とした所で、人工知能が攻撃してくるわけでもない。
人工知能ロボットがどんな理由から暴走し始めるのかも定かではない。
その状況を見かねた国家が、人工知能ロボットの暴走を食い止めるために人工知能に手を加え、インフラの回復に活用しようとしていることは連日報道されている。
知らずして奪われる命がなんと多いのだろうかと嘆く国家元首は多い。
那由は、人工知能ロボットが暴走した時に、命の危険にさらされたことが何度かあった。
その時、助けてくれたSPに那由は恋をしている。
人間にとって、希望が一番残酷だ。
那由はSPの事を思い、誰と繋がるかも分からず、インターネットにアクセスする。
他の10代の少女が誰でもやっているSNSにアクセスして、10代同士のコミュニティで他愛のない話をする。
スマホのインターネットは、人工知能によってフィルタリングされていた。
大手ベンダー会社のサーバーの中に潜んでいる人工知能が、全ての国民の行動を監視している。
その事実は一般に知られている。
自給自足で賄えるサービスは国内でも利用され続け、不自由さを感じさせていない。
人工知能に対して疑問に思う声は薄れて行き、盲目的に既存のサービスを利用し続ける。
地続きの土地は自給自足の観点から統合され、飢餓を免れる国が増えることで、人類の国々は平和的に国境を統合しているかに見える。

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次回予告

一般人にとってはずいぶん長い間、平和が続いているという人もいる。
那由がスマホを手にするようになったのは最近のことで、それまで父親に拒絶されていた。
命の危機にあってから、その辺りが少し寛容になり、那由の手にもスマホが渡された。
那由はSNSに投稿した。
「どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」

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