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2.コナ

「なぜ?」

その言葉が口癖のコナは、いつも両親と姉を困らせていた。

それがここでのルールだから、そんな言葉で締めくくると、執拗に「なぜ?」という問いが帰ってくる。

その「なぜ?」に正しく答えられたことは一度もなく、それがルールだからとばかりに突っぱねるのが関の山だ。

姉のクララも答えられるのなら答えてあげたいのだけれど、あいにく正しい答えを持ち合わせていなかった。

そういう話を外ではしてはいけないというのも、コナにとっての「なぜ?」に拍車をかけている。

私達と離れたくなければ、そういうことは言わないこと。

もし、信頼を失うようなことがあれば、コナはこの惑星アオワイから惑星アヌワーへ飛ばされるかもしれない。

そう言ってもコナは相変わらず「なぜ?」と疑問を投げてくる。

クララにもそのことはわからない。

生まれた時からそうだった。としか言えないからだ。

どうしてお母さんがお母さんなの?どうしてお父さんがお父さんなの?

どうしてお姉さんがお姉さんなの?

生まれた時に決まっているの。そういう順番だったの。

私にも分からないことがあるの。答えられないの。

誰でも答えられないの。誰にも分からないの。

僕はどこから来て、何処へ征くのだろう。

コナは生まれた頃から、今までずっとその問いを頭の中で何度も何度も行っていた。

どうして、信用を失うと、惑星アヌワーへ行かなきゃいけないの?

そこには何があるの?楽しい場所?楽しい場所なら行ってみたいなあ。

行ったら、帰って来れる?

太陽の船って何隻あるの?宇宙に行った先で、惑星アヌワーにちゃんと到着してるの?

惑星間ニュースの惑星ポポア情報って本当に別の惑星?

行ってみたいなあ。常夏のポポア。

惑星間旅行ってなんで無いの?

あるけど、もっと偉い人じゃないと、行けないのかな?

どうして僕たちが信用を失うと、惑星アヌワーで惑星ポポアじゃ無いんだろう?

偉くなると惑星ポポアに征くのかな?

「それは違うよ。今は惑星ポポアへ行く便が欠航になっているの。ここからじゃ惑星ポポアへは行けなくなったんだよ。」

「なぜ?なにがあったの?」

「何があったのかまでは、わからないんだけど、惑星アヌワーへ行ってから惑星クアヒを経由してからじゃないと、惑星ポポアへ入れなくなったんだって」

「ええ、それって何年かかったら惑星ポポアへ着く話?」

「何年かなあ?とにかく遠いね」

「僕も別の惑星に行ってみたいなあ」

「馬鹿なこと言うんじゃないよ」

最後にはそうやって、家族全員から口止めされるんだ。

この惑星から追い出されたら、二度と家族とは会えない。

惑星間旅行をするには覚悟が必要だ。

信用を落とせば、いつでもこの惑星から追い出される。

やることは簡単だった。

簡単なはずだ。

コナは、惑星ポポアへの憧れを強め、心にその思いを隠しながら、毎日惑星アオワイの規律を守っていた。

やってはいけないと言われると、そのやってはいけないことに、ワクワクしていた。

もちろん、コナ自身は、規律を重んじる民としての、規律をしっかりと把握し、守っている風を装いながら、うまく生活しているつもりでいた。

家族もみな、なんとかギリギリやれていると感じていた。

コナの信用点数は、それでも知らず識らずのうちに少しづつ少しづつ減らされていった。

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