タイムパトローラー・「先輩を追って」
「あ、先輩!」
「お、おまえ!なんでここに居るんだよ」
「嫌だなー。なんでって、そりゃ俺も先輩の後を追って来たんじゃないですか!」
「なんで来たんだよ……お前には未来があっただろ!」
「先輩がタイム・ダイブ(TD)してから、少しづつ未来も変わりました。良くなってくるのを実感していたんです」
「ならなんでだよ!」
「決まってるじゃないですか。先輩と同じですよ。俺も未来を変えたい」
「お前には家族がいるじゃないか。みんな、おいてきたのか!」
「もう、いませんよ。先輩がTDした日を覚えていますか?」
「そりゃ、お前の嫁さんが妊娠して未来の子供が生まれる日だよ。めでたい日に俺は旅立つのを決めたんだ」
「そうです。でもその日、妻も子も亡くなりました。未来の出生率は落ちる一方です。このままでは未来はなくなってしまいます!」
「そうなのか。お前も大変だったんだな」
「先輩!俺もこの過去の時代を改革したいです!手伝わせてください!」
「無駄だよ。俺はもう、未来を変える活動はしちゃいない」
「え?なんでですか!!」
「この時代に無縁仏が何人居るのか知っているか?そのうち、TDした奴らが何人含まれていると思う?この時代を変えようともがく俺たちに比べて、圧倒的にこの時代に流されている連中のほうが多い。カナう訳ないだろ?」
「そ、それでも!先輩はTDする前に言ってたじゃないですか!やってみる価値はあるって!だから俺!」
「幻想だったよ。現実はそんなに容易くはなかった。未来を変えるって言ったよな。時空新聞の時計で人口が増えたからといって、本当に未来は変わったのか?俺には分からない。俺はお前の居た未来じゃなく、別の次元の未来を変えようとしてるんじゃないのか?そんなものわからないじゃないか。だから、時空新聞の時計も捨てたよ。俺が今付けているこれは、この時代の時間を刻むだけの時計だ。俺が生きているのは、今、この時代だけなんだよ」
「それでも!!俺は見てきましたよ。未来に残りTDした人が未来を変えてくれた実感を!先輩だって活躍していたじゃないですか!」
「そうだったな。忘れていたよ。時計の持ち主が関わった時空の歪みが未来に見える構造の話を。TDした連中は未来に親族がいないものが大半だ。俺も身寄りなんていない身だった。心配され注目してくれる人なんて一人もいないはずだったのに、まさかお前が見ていたなんて」
「俺も先輩のように未来を変えに来たんです!また、やりましょう!一緒に!!」
「未来なんて変えてどうする。お前の親族も、もう未来にはいないのだろう?」
「わかりません。わからないけど、このままじゃ、今のままじゃダメなんです!それだけは俺にも分かります!一緒に!人を生かしましょう!!」
「簡単じゃねえぞ!」
「はい!」
「俺のこと、よく見つけられたな」
「昔、言ってたじゃないですか、大勢集まってやるスポーツ楽しそうだなって、手当たり次第探していけば、いつか見つけられると思ってました!」
「バカ!俺を探すのが目的じゃないだろう。タイムパトローラー」
「俺のタイムパトロールはこれからが本番ですよ」
「いっちょ前なこと抜かしやがる」
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