第9章 トーラスの章 パートⅡ
ラムの運命の石が、ラムの手の下に帰ってきたのだ。
メリク「お前にお似合いのなまくら石だ。せいぜい大事にしろよ。そして、俺の石を返せ」
ラム「それは出来ない相談だ。ただ、俺の石を先に返してくれたことにはお礼を言わせて頂こう。この石の力を侮りすぎたな。精霊!」
メリクの前に巨大な水瓶が現れると水瓶の中の水をメリクにぶっ掛けた。すると、たちまちメルクはするすると元のフクロウ大の大きさに戻っていった。
メリク「くそっ!何をした!貴様!!」
メリクが地面からシャインが上空から、ラムに向かって猛烈なスピードで飛びかかってくる。
その間に突如、土の壁がせり上がりメリクとシャインの爪が土の壁にめり込んだ。土の壁はそのままメリクとシャインを地面に押し潰すかのように倒れるが、メリクとシャインは間一髪の所で爪が土から外れ、猛スピードで上空へと舞い上がった。
ラム「アルレシャ。ありがとう。君はアクベンス殿と城へ向かってくれ」
ラムとアルレシャは馬から降り、シャインとメリクの第二波の攻撃に備えながら、大声でアクベンスとシャウラ王女を呼び寄せた。すでに近くまで駆け寄っていたシャウラ王女とアクベンスは馬の走る速度を緩めずに駆けつけた。
シャウラ王女「今のはなんだ!」馬上よりシャウラ王女が叫ぶ。
ラム「説明は後だ!君の探している男の子も近くに居るはずだ。私だけではこの青龍を食い止められない。見つけてくれ!それからアクベンス殿!アルレシャを連れて急ぎ城へ書状と現状の報告を!」
ラムは木の精霊を使って大量の木をメリクとシャイン目掛けて投げつけながら叫んだ。
アルレシャ「ダメよ!ラム一人になってしまうわ!私はここに!アクベンス!書状はお返しするわ!」
アルレシャは土の精霊を使って、土の塊をメリクとシャイン目掛けて投げつけながら叫ぶ。
ラム「駄目だ!俺は自分を守ることは出来ても、他の誰かを守ることはできない!アルレシャ!分かってくれ!危険過ぎる!」
アクベンスは馬から降りること無く、アルレシャの腕を引き上げて後ろに乗せる。
それを見たラムは、木の檻で自らを閉じ込めた。
シャインとメリクの攻撃がラム一点に絞られ、爪が木の檻を引き裂く。
穴が空きそうになると、直ぐに木の枝が伸びて新しい檻が出来上がる。
メリクが木の檻を燃やすために口から火を吐くと灰となって崩れ落ちるが、またその内側に新しい檻が出来る。
ラムの籠城作戦は時間の問題で破壊されるだろう。急がないと……
シャウラ王女とアクベンスの駆る早馬は、ラムからあっという間に遠ざかっていた。
それを追いかけてきたのが、オオワシのシャインだ。しかし、早馬の速度にオオワシはやっと追いついていた。
暫く走っていると、荒れた山林が目に飛び込んできた。恐らくここで一晩中メリクと少年が戦っていたのだろう。
シャウラ王女「私はここで少年を探す。アクベンスはそのまま城へ向かえ」
アクベンス「オオワシがまだいます。お気をつけて」
シャウラ王女「分かってる。気にするな」
アルレシャ「王女様。お気をつけて」
シャウラ王女は街道を外れ、山林の中に消えていった。
オオワシのシャインがそれを見つけ追いかけてゆく。
アクベンスとアルレシャは、追っ手もなくなったが走る速度を緩めることもなく、城下町に足を踏み入れた。
アクベンスは腰にぶら下げていたラッパを吹きながら城下町を滑走していく。遠くから聞こえるラッパの音を聞きつけた住民たちは道を空け、何事なのかと通りを眺める。その前を猛スピードでアクベンスの馬がすり抜けてゆく。
ラッパの音が城の城門まで聞こえると、門番は大急ぎで城の門を開放した。
アクベンスは馬から降りることもなく、城内に馬を駆け上がらせ玉座の間まで走りこんでいった。
玉座の間に到着すると、アルレシャは馬から飛び降り、国王の前で膝をつき一礼するだけで、書状を直接国王に渡した。
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