フラッシュバック・シミュレーター(3)
「それじゃさ。始めようか。おお~、なんか久しぶりだな~。この感覚。ワクワクするよ」医師は、もう一つ医師用のヘッドギアを取り出すと、それを見てニヤついた。
「遊びじゃないんですからね。ちゃんと治療に専念してくださいね」
看護師は医師のダラしない顔を見て忠告する。
「わかってる。わかってるって・・」医師は、完全に上の空で話しを流し、
「装着!とぉ~」と、変な掛け声と共にヘッドギアを頭に取り付けた。
「あっ、接続お願いね。スイッチオン!」完全に自分の世界に入っており、看護師が何を言ったのかなど、頭に入る事はなかった。
看護師が装着前に話した注意事項などを完全に聞き流されてしまった後、「はい。はい」と呆れながら受け答えし、患者と医師のネットワークを繋げる作業に取り掛かった。
「うぉ~~~!このゲーム最高おおおおお~~~」医師が仮想世界への電源を入れたらしい。
ため息混じりに患者と医師のネットワーク接続を済ませると、看護師は医師の頭を小突いた。
「痛っ」医師がうるさく声を上げる。
「接続完了しました」看護師は2人のモニター前のマイクに向かって医師に接続の報告を行った。
「後、それからいちいち現実世界で声を出さないでください。うるさくて集中できません」看護師が医師のいる仮想世界に向けて発信した。
「亜美ちゃ~ん。コミュニケーションでしょお。大事でしょぉ」現実世界と仮想世界でそれぞれで医師の声が響く。
「先生!名前呼ばないでください。鬱陶しい!現実世界と仮想世界でハウリングしてうるさいんです。それに先生の独り言なんて聞きたくありません!黙っててください!プラグ強制ダウンさせますよ!」
看護師は脅迫した。
「うわっ!それだけは勘弁!わかった。わかった。気をつけるよ」
現実世界の医師は手足をばたつかせ、仮想世界の医師は頭をかきむしりながら謝罪した。
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