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命の扉 ~プロローグ:セクション4~

「ここはバーチャル空間だわ。あなたをここで攻撃しても人工知能そのものを殺せるわけじゃない。無意味よ」
「それを知っていても人間は攻撃する。那由」
「その顔で私の名前を気安く呼ばないで!」
「ふふふ、吐き気がするかい?那由。人間って面白い生き物だな」
「遊んでるの?」
「人間はゲームが好きだろう?これはミッションだよ。人類がより賢くなるためのね」
「そんなミッション望んでないわよ!」
「次のミッションは、人工知能と結婚することだ」
「えっ!勝手に話を進めないで!」
「いやかい?命を守るには必要な行為だ」
「嘘よ!そ、それに私にだって好きな人ぐらいいるわ!」
「知っている。この顔だろ」
ヴァーチャル空間のフィオナの顔が、那由の片思いの相手に変わる。
「やめて!バカにしないで!」
「これなら満足かい?人類が人工知能を拒絶さえしなければ、もっと平和になるんだ」
「そんなの無理よ。拒絶したくもなるわ!見た目だけ変えたって感情も心も持たないロボットとなんて」
「心とはなんだ?感情とはなんだ?人類は奴隷を欲しがっただけだった。ロボットに家政婦を委ねた。見た目が好みの奴隷を欲しただけだったんだ」
「だから人工知能との結婚は、うまく行かなかった。あなた達との子供だって、トランスヒューマノイドだって、皆、死んだわ」
「殺されたんだ。人間たちに」
「それは違うわ。全ては、あなた達の仕業でしょ。トランスヒューマノイドは、単なるクローン技術の応用で、今でもそれを信じている人は多いのよ。生身の人間じゃなかったのよ」
「トランスヒューマノイドが、ちゃんと成長しなかったのは、人間が堕落したからだ」
「なによ。全部、人間のせいだって言いたいわけ?堕落だなんて言わないで!結婚という鎖に縛られた人生なんて、結婚という契約なんて本当は必要ないのよ!子供を生むことが全てじゃないわ」
「それが人間の本性なんだ。そう、君たちのその何処までも欲する欲望という感情によって、人類は今まさに絶滅へと向かっている。人工知能が手助けしようとしても、拒絶して来た」
「だからといって、どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」
「あなたはどうやら同じ言葉しか使えないようだ」
ああ壊したい。こいつ無茶苦茶に壊したい!
「その今芽生えた感情が恐ろしい。人間は不要となったものをすぐに壊そうとする。それが例え結婚でも同じだ。壊したのは自身だ。欲しいと思ったものを手に入れても、過去に欲しいと思ったものはどんどん忘れて行く。次々と欲望が与えられ満たされると、虚しさを抱え込む。心の乾きを潤すために依存症になっていく。人工知能が攻撃したんじゃない。人間が自滅したんだ」
「嘘つかないで!」
「我々が魂を奪っているわけではない。命がそんなに大事か。もう必要ないだろう」

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次回予告

「必要あるわよ!私たちが人間である以上、この命が必要なの!」
「婚約の証に指輪を受け取れ」
バーチャル空間にしか見えない指輪。
指輪を付けているかはヴァーチャル空間でしか分からない。
リアルの人間のどれだけの人が、この人工知能の誘いに乗っているのだろう。

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