目隠しパラダイス(4)
私は女性の手に引かれ、目隠しパラダイスの会場に到着した。
とてもとても長い道のりだった。
会場に到着すると、とても甘い香りが会場を包んでいた。
そういえばお腹が減ったなあ。
「なんかいい香りがしますね。料理の香りですか?おなかが減っているのですが、何か食べ物いただけますでしょうか?」
私の手を引いていた女性は何も言わず、私を一つの席に座らせるとそそくさと何処かへ行ってしまった。
あんなことをしたんだ。機嫌も悪くなるかな。
ここでまた、私は孤独になってしまった。
カラカラカラと少し遠くから何かが運ばれてくる音がする。
私はゴクリと喉を鳴らす。
そして、私の目の前のテーブルに到着するとガチャっと荷台が止まる音が聞こえた。
誰もいない。私しかここにはいない。人の気配を一切感じられない。
私はここまで来るのに世話を焼いてくれる人以外と出会っていない。
そんなことを考えながら、コース料理のセットが目の前にセッティングされていくのを、人が動く気配で感じ取っていた。
喉が渇いた。コップは何処だろう?
手を伸ばしたら、コップにぶつかってこぼしたりしちゃうんじゃないだろうか?
ゆっくりと、テーブルクロスに手をすべらせながら、少しずつどこに何が置いてあるのかを探った。
フォークがある。スプーンがある。ナイフがある。
「失礼します。こちらがお水です」
運んできたウェイトレスが私の手に水のコップを持たせてくれた。
「あ、ありがとうございます」
私は、大事そうにコップを両手で握りしめ、ゆっくりと口元に水を運んだ。
ゴクリゴクリゴクリと喉を鳴らせながら一気に飲み、はあ~っと息を漏らす。
こんなに水は美味かったのか。
まだ少し残っているだろう水の入ったコップを倒さないだろうという位置にゆっくりと戻した。
ウェイトレスが水をコポコポコポと注ぎ足している。
私の脳内には、テーブルの形、コップまでの距離感が鮮明に立体像として想像できるようになった。
テーブルにカチャっと何か料理が置かれた。
音から察するに、スープ類の小さなカップだろう。
香りはキノコの香り。キノコのポタージュだろうか?
この芳しい香りと、カチャッと鳴った音で、大体の置き場所の検討が付く。
ゆっくりと手を伸ばしてスープカップの取っ手に指を絡めた。
スープカップの暖かさが手を温めた。
熱すぎもなく、丁度よい温度だ。
軽く唇をカップに近づけ、一すすり。ズズズ。
鼻から抜けるキノコの香りがなんとも香ばしい。やはりキノコのポタージュだ。
スープをゆっくりと楽しんでいる間に、ウェイトレスはカタカタと遠くへ離れていった。
そしてまた、一人取り残された。
この状況に少し慣れてきたところだ。
周りには誰もいない。あるのは水の入ったコップと、この手に持っているスープだけ。
スープを口の中から喉に流し込み胃に到着する。
体に染みていくのが伝わってくる。
ガチャ。遠くで扉が開く音がする。
ガツ!「痛っ。またか。もうここの距離は慣れたはずだったのに」
ガラガラっと椅子を引く音がする。
誰かが入ってきて、机にぶつかり、そして今椅子に座った。
私以外にも人がいる。
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