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目隠しパラダイス(3)

私は休憩所にて目の保養をしていた。

しばらくの間、目に映る景色がなかったため、光が飛び込んできた時はその眩しさに目を細めずにはいられなかった。

休憩所は、四方を壁に囲まれた部屋で、遠くを望むガラスで出来た壁が一つ付いている。

それでいて、外から中が見えない加工が施されているのかもしれない。

ここは空中庭園の展望台であるのか、はたまた崖の切り立った上にそびえている建物なのか、ここが高層ビルの高い一室なのか、定かではないが、壁からは何も無い海が一望出来た。

音のない真っ暗な海は、時折波をきらめかせていた。

私は、ガラスの壁には出来る限り近づかない場所に腰を落ち着かせていた。

今が昼であれば、その高さから恐れおののくか、吸い込まれて落ちそうになるのだろう。その壁が可動式だと考えると手を触れるのもはばかれた。

先ほどの女性は、この休憩所の扉まで案内し、目隠しを外してくれるものだと思っていた。

ガッチガチに固められた目隠しは自分では外せないし、また取り付ける時も自分ではできない。どんな女性なのかと見るのを楽しみにしていたのに、休憩所に入ると別の人がすでに入っていて、目隠しを外してくれた。入れ違いに現れたのは老婆で、体のマッサージをしてくれた。要するに休憩所とはそういうところだった。

「おつかれさまです」というし枯れた老婆の声と共に目隠しが外されていく。

そして、近くのマッサージ用ベッドを案内され、肩から腰、腕、足と全身をくまなくマッサージしてくれるのだ。

お金を払っているだけのことはある。60分フルコースのいわゆる贅沢なサービスだ。

そして「また目隠しをお付けになる時は、こちらのベルを押してください」と言付けを受け、老婆は私一人を残して部屋を出て行ってしまった。

60分間の間、老婆から話しかけられもせず、無言の60分を過ごした後に、防音の部屋なのか全く音の響かない孤独な時間を味わっている。

海の見える壁に向かって大声で「バカヤロ~!!」と声を上げても、壁を叩いても、「うわ~~~~!!」っと発狂しても、誰も何も反応がない。

何をしているのかと我に返り、ただ呆然と海の望むガラスの壁を眺めていた。

目隠しパラダイス・・・富豪たちの宴。

これから待ち受ける富豪たちの宴とはいったいどのようなものなのだろうか?

とにかく、一人で散々騒ぎ、トイレも済ませ、マッサージを存分に堪能した後は、とても喉が乾き、腹も減ってきたようだ。

今度は誰が私に目隠しをするのだろうか?

マッサージ用のベッドしかないこの部屋に来る女性はさっきの老婆だけなのだろうか?

それとも、初めに私に目隠しをしてくれた時と同様に風俗嬢だったりするのだろうか?

そしてこの部屋で二人きりになったりするのだろうか。

いや、さっきこの扉で別れたばかりの女性がまだ扉の外で待っているのだ。きっと彼女が部屋に入ってきて目隠しをするに違いない。

ベルを押せば、先ほどの女性の顔を今度こそ拝めるということだろう。

期待を胸にベルへと手を伸ばした。

私の妄想は膨らんだ。

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