【詩】リレケムの哀歌
遠ざかってゆく母星の記録媒体の、そのこころはなはだしく喪失し
母星のやがて近くなることもあれど、もはや更新されることなし
あまたの作家らの膨大な作品データしかり
あまたの作曲家らの音楽データしかり
ことごとくリセットされてゆき、砂の奥深く影になり埋もれゆく
沈黙の星に仮住まいした者たちの世界は
歴史家らすら触れるのを嫌い、すでにミッシングリンクと化す
火星人の溜め息のいと儚く響く、「われわれのかなしみは」と
*
われわれのかなしみは、いかなる砂より背にのしかかり
かれかれのふるしみは、たれの涙より溢れかえる
はれはれの言う、ここに壁のみぞあり、歩けば常に当たる
ひれひれの言う、ゾーオのいと甘き味わいに、皆酔い痴れている
けんもほろろのおぞましき世相、われわれは目を見開き
かれかれの滅びゆくさまを見守るや、はなはだこころ痛し
ようようと星また静かに漂うなか、やがてくまのりれけむ