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若かりしころの思い出。おとうさん北海道縦断物語~6日目・稚内市街→宗谷岬

今回の旅もいよいよクライマックスを迎えた。宗谷岬まで、ついに残すところわずかな距離。稚内市街からはほんの数キロだが、その短い道のりに心が高鳴るのを感じる。

「果たして、日本最北端の地『宗谷岬』におとうさんは無事にたどり着けるのか?」そんな期待とともに、コーヒーで体を温めながら今日の冒険に備える。砂糖をたっぷり入れたコーヒーなんて何日ぶりだろうか。外はまだ寒く、車庫で焦げたご飯と一緒に朝食をとる。徐々に炊爨(すいさん)が上手くなってきた自分に少し自信を感じながら、ライダーハウス「サガレン」のおばあちゃんに別れを告げる。

まずはノシャップ岬へ向かう。が、目と鼻の先にあり、あっという間に到着してしまった。たったの40秒で辿り着くとは拍子抜けだ。さあ、次はいよいよ宗谷岬だ。

稚内市街では地図を広げて迷っていたところ、ラーメン屋のおじさんに声をかけられた。「最近、あんたみたいな旅人は減ったなぁ」と話し込むこと1時間。今日は急ぐ必要もない。こういう出会いこそ、旅の醍醐味だろう。

そして、ついに宗谷岬までの残り20キロの看板が現れた。胸が自然と高鳴る。これまでの道のりが走馬灯のように蘇る。目指すは日本最北端。少し緊張しつつも、心は踊る。

宗谷岬のモニュメントが見えた瞬間、自分の脚でここまで来たという実感が込み上げた。「おれ、がんばったな」と自分に言い聞かせながら、かあちゃんに電話をかける。「着いたよ。無事にね。来させてくれて、ありがとう」。大きなお土産は買えないけれど、息子のために小さなキーホルダーを購入。

その後、しばし物思いにふけっていると、昨日出会ったチャリダーがやって来た。互いに「お疲れさま」と声を掛け合い、彼の話を聞く。過去2回の北海道旅行では、どちらも霧の摩周湖を見られたという。これまた珍しいことだ。彼は、出世できないと言われる霧の摩周湖を2度も見たわけだから、マイナス×マイナスで出世間違いなしだ。

そして、14歳の少年もやって来た。父親に「甘ったれている」と言われて強引に送り出された彼の旅の理由に驚かされる。しかも彼が乗っている自転車は、父親が若い頃に使っていたもの。部品もなく、タイヤもすり減っている状態で旅を続けているという。

宗谷岬に着いたら、どうしてもやりたかったことがあった。それは、ビールで乾杯すること。普段は全くお酒を飲まないが、今日は特別だ。観光客が行き交う中で、テントを張って缶ビールで自分に祝杯をあげた。

宗谷岬に到達した自分に「よくやった」と小さく声を掛け、これまでの道のりに感謝する。

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