若かりしころの思い出。おとうさん北海道縦断物語~2日目・洞爺→余市~
2日目の朝がやってきた。洞爺湖での一泊を終え、日本海側の余市町を目指す。今日のルートには、旅初の峠越えがあり、さらにはトラブルの波が再び襲いかかる。果たしてこの先どうなるのか…。
8月10日 晴れ 初めての夜
旅での初めての夜を過ごすことに。場所は洞爺湖のほとり、これまでも車や自転車で何度も通ったことのある、馴染み深い場所だ。家族ともキャンプに来たことがあるが、「旅の夜」となると少し気持ちが違う。やはり少し緊張していた。
有料のキャンプ場だったけれど、端の方にテントを張ったら、お金を取られなかった。多分自分で払いに行くべきだったのだろうけれど、そこまで気が回らなかった。何せ、心にも時間にも余裕がなかった。
ご飯を炊きながらパンクの修理もしてみる。思うようにいかないけれど、焦る必要もないのでゆっくりと手を動かす。それがかえって良かったのか、食事を終えると緊張していた気持ちがふっと和らぎ、眠気が襲ってきた。結局日が暮れると同時に眠りについた。
チャリダーの朝は早い
自転車旅をする人、いわゆるチャリダーの朝はとにかく早い。僕も4時には目を覚まし、煙草を吸いながらご飯を炊き、缶詰で簡単な朝食を済ませた。今日は田舎道を進むため、途中でコンビニに寄ることはできなさそう。そこで、余裕を持っておにぎりを作り、エネルギーを蓄えることに。
スタート直後に待っていたのは2キロの登り坂。登りはむしろ好きな方だけど、重い荷物を積んだ状態では初めてだ。不安はあったけど、旅は前に進むしかない。10分ほどで息を切らしながら登り切ったあと、達成感とともに一服。これがたまらない。
その後も羊蹄山を眺めながら快調に進む。天気も最高で、日焼けなんて怖くない!ルートを少し迷った末、ニセコへ向かうことに。ニセコの道の駅「ニセコビュープラザ」で、もしかしたら昨日のような出会いがあるかもと期待したけれど、誰もいなかった。こういうのは求めちゃいけないんだな…。
初めての峠【稲穂峠】
倶知安に到着。本来は1日目にここまで来る予定だったが、2日目に持ち越したおかげでゆっくり景色を楽しむことができた。旅の醍醐味はこうした余裕のある時間だと思う。
そしていよいよ稲穂峠。登り坂のコツは力まず、ギアを軽くしてペダルを回し続けること。無心で進んでいくうちに、ふと目の前に現れたのは大きなトンネルだった。
トンネルの中は真っ暗で、車が通るたびに音が響きトラックの風圧にフラフラと揺れる。歩道もなく、止まるのはかえって危険だ。泣きそうになりながらも、「エンヤコラどっこいしょ」と自分に言い聞かせ、どうにかトンネルを抜けたときには思わずへたり込んでしまった。
スポーク折れる
峠を越えた安心感とともに快調に距離を稼いでいたその時、突然カタカタと不穏な音が。自転車を止めて確認すると、タイヤのスポークが1本折れているのを発見。このまま走るのは不安だったので、地元の自転車屋「サイクルショップ遠藤」に電話をかけることにした。
ただ、山の中では携帯が圏外。どうにか電波が入る場所まで走り、遠藤さんに聞いてみると「大丈夫だよ、スポークが刺さるとパンクしやすいけどね」と軽い返事。しかしその言葉通り、パンク…。こんな日はひたすら我慢するしかない。
余市町到着、そしてまた…
ようやく余市町に到着。ニッカウイスキーや宇宙飛行士の毛利衛さんの出身地として知られるこの町で、地元の自転車屋「斎藤自転車商会」を訪れた。そこでも店主は海水浴中。これが北海道のゆったりとした時間の流れなのだろう。
1時間ほどして戻ってきた店主は、自転車をすぐに修理してくれた。修理代は3000円。高いのか安いのかよく分からなかったが、とにかく助かった。
その後、教えてもらったモイレ浜キャンプ場へ向かい、静かな砂浜でゆっくりと体を休めた。今日一日で体も心もすっかり疲れ果てたけれど、また明日へ向けての力が湧いてくる。
この日の走行距離は87km、走行時間は5時間50分。肉体的にも精神的にも試練の多い一日だったが、それもまた旅の一部。次はどんな冒険が待っているのだろうか…。
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