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メギド72のコシチェイは何故「コシチェイ」を引用されたのか?

メギド72における考察を、やるよ〜!!!
今回はコシチェイについてです。彼がなぜ「コシチェイ」というモチーフを引用されたのか、名前について考察していきます。
前提として、これは一人のソロモンで調べられる限りのことを集めて調べたものであり、ロシア民謡の専門家でもないので色々詳しい人が見れば齟齬があると思います。また、本来メギドを知らない人向けに五分くらいで喋り切れる量にしないといけなかったのでところどころ説明不足や説明過多なところもあると思います。生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。
また、内容的に複数のコシチェイ関連イベントのネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。


前提


本作の大きな特徴と言えるのが、異種族との交流によって起こる価値観の相違です。メギドたちは基本的に戦争により行動の指針を決め、生殖をしないため恋愛をせず(最新節付近では諸説あり)、睡眠をとらず、数百年を生きるなど多くの違いを人間とは持っている種族です。本作では、このような文化圏の違いによる信念の対立、それによる正義とは何かを問いかけるテーマが描かれることが多くあります。今回紹介するのはその一例です。
メギド72のキャラクターのネーミングは非常に特徴的です。タイガンニール、シナナイン、不敗の騎士マケルー=ジャン、コロスエル、クズオ等皆さん心当たりのあるキャラも多いでしょう。
そんな中、本作のいくつかのイベントストーリーにて登場するこのキャラクターは「コシチェイ」という名前を持っています。確実に何かを意図して付けられた名前であるため今回はこれを紹介していきます。

コシチェイとは


コシチェイとは、「守りたいのは、その笑顔」というイベントにて初登場した、主人公と敵対するキャラクターです。メギドの世界、メギドラルの研究施設の局長である冷酷なマッドサイエンティストとして描かれており、このイベントでもメギドの社会の暗部である、「ペクス」と呼ばれる家畜化した人間を入手して非道な実験を行っている描写があります。イベントを読んだ皆さんはコシチェイのヒステリックな性格やナルシストな一面など人間味のある部分も見ていると思いますが、物語的には総合的にマッドサイエンティストなのでとりあえず保留してください。

そもそもコシチェイとは、ロシアの民話やおとぎ話に登場する、若い女性を攫う悪者のことです。痩せた老人の姿をしており、隠された場所にある彼の魂を破壊しないと死なないことから不死身のコシチェイという異名を持っています。この魂は入れ子構造の隠され方をされており、ここも復讐イベントで引用されますね。主に物語中で民謡のコシチェイは、童話の中の狼と同じような勧善懲悪の悪役のポジションであることが多いです。

コシチェイの真実


では、何故メギド72はこのキャラクターにコシチェイという名前をつけたのでしょうか。それは、彼の正体に関係していると私は考えました。

「復讐の悪魔と怨讐の魔人」イベントで、主人公一行は恩師ネブカドネザルをコシチェイに殺され、右腕を失い立場を追われ、コシチェイに強い恨みを持つメギドのアリオクの手を借りてコシチェイを追い詰めます。死の間際にコシチェイは「ソロモンの指輪の力ならメギドを召喚して言うことを聞かせられるはずなので、全ての情報を吐かせてから殺せ」とソロモンを唆します。ソロモンは彼を召喚しようとしますが、失敗し、コシチェイは「これでお前は私と同じ人殺しだ」と言い残し死亡します。

何故コシチェイは召喚できなかったのか、それはコシチェイの正体は、元ペクス、つまりヴィータだったからです。
ある日、ヴァイガルドで生きていた家畜として育っていないヴィータ、カラダンダがコシチェイのいた人間牧場に収監されました。元々彼のいた人間牧場は病気や怪我は放置、食事は生の肉をそのまま、ペクスの数の管理もずさんな劣悪な環境であったそうです。(これ、怪我や病気でペクスが減るのもあればおそらく増える方も管理がずさんだったっぽいのでなんというか……)
その中でカラダンダは、精神を保つためにペクスに言葉と思考の教育を始めます。思考することを覚えたコシチェイは、カラダンダの協力を得てペクスの脱走騒動を起こし、人間牧場から脱出することに成功しました。隠れてメギドラルの社会の知識を吸収し、でっち上げの研究成果を元に研究所局長となったコシチェイは、自分を家畜として扱ったメギドラルに復讐を誓いメギド社会を滅ぼすために暗躍していたのでした。
その結果が復讐イベント、そしてアリオクのキャラストだと考えるととてもやるせないですね。

そもそも「コシチェイ」とは

名前の話に戻りましょう。
コシチェイという名前は、スラヴ語の「骨」を意味する単語から作られたという説が一般的ですが、実は他にもチュルク語の「奴隷」「囚われの身」を意味する単語が由来だという説もあります。
また、原典のコシチェイは異様な力を使いますが、正体は悪魔と契約して力を得た人間です。メギド72においてペクスの存在が明かされたのはコシチェイが初登場したイベントなことや、そもそも「復讐の悪魔と怨讐の魔人」というイベント名でコシチェイを示す単語は悪魔ではなく魔人、とされていることなど、コシチェイがメギドではないことを示す材料はたくさん提示されていたのです。実際当時からコシチェイの正体ヴィータ説はあったらしいですね。

なぜメギド72のマッドサイエンティストは「コシチェイ」であった必要があるのか?

本題に入りましょう。
メギド72が彼の名前をコシチェイとしたのは、勧善懲悪のストーリーに傾倒しているプレイヤーにアンチテーゼを示したのではないかと私は考えます。
最後のイベントで、プレイヤーの多くはラスボスであるコシチェイをなんの疑問もなく、悪を成敗する大義名分のもと殺害しました。コシチェイ悪者として好きだって方もいたかと思いますが、コシチェイくらいの規模の悪役は過去を知らないという前提があれば、メギドでは他にいくらでも倒してきたので……アッキピテルとか……。

多数のヒントが出されていたにも関わらず、ミスリードに気づいたのは全てが遅くなってからだったプレイヤーは多かったはずです。私も復讐イベント復刻の時はEX3コシチェイを50倍練ボムで爆殺しました。その後にコシチェイがヴィータだと判明した後、プレイヤーは果たして彼を倒すことは正しかったのかということを考えたでしょう。そして、過去の残虐な行いから彼はいずれ倒さなければいけない存在だったと結論づけてもプレイヤーは大きな後悔を残したでしょう。

コシチェイという名前は彼が悪役だと示すものです。しかし、メギド72はストーリー内で悪役側の事情と信念を明かしたことで、相手が悪者だとしても安易な断罪を防ぎ、自分の掲げる正義が果たして正しいのかと考える契機を与えました。悪役とは誰にとっての悪なのか、自分の正義が盲目になっていないか。特に、メギド72は主人公にソロモンの指輪、そして指輪の強制力というかなり大きな力が与えられているため、力の使い方を問いかける意図のストーリーは多く存在する気がしますね。
例えば、シンデレラの姉は本当に悪だったのか。世帯主かつ領主である再婚相手の夫が亡くなった今、没落しかけた実家を救うには母の実子である姉達が王子と婚約するしか手段はなかったのではないか。桃太郎の鬼は本当に悪だったのか。鬼ヶ島から出てこない鬼が金銀財宝を欲した理由はなんだったのか。視野を広げると理由を知らずに善悪二元論で割り切れる物事の方が少ないです。

コシチェイというおとぎ話の悪役を引用することで、単なるおとぎ話の勧善懲悪では踏み込めない領域で、プレイヤーが掲げる正義観へ再度の問いかけを行う。そういった意味で彼の名前はコシチェイと名付けられたのではないかと私は考察します。

蛇足


めちゃくちゃ余談ですが私は推しがティアマト・マルコシアス・ダゴンなのでまず9章で鏖殺され、歪イベントで死体蹴りされておのれコシチェイ……!になっています。たすけて。いや歪イベントのコシチェイ割ととばっちりではあったけども。ォェ……ティアマトてゃん……リジェネイトおめでとう大好きだよ……

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