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「長期修繕計画は管理会社の売上予定表」に開いた口が塞がらない

新潟のマンション管理士、澤田です。
キックバックもらうの、我慢してます。

さて、タイトルにも書きましたが、いつからか「長期修繕計画は管理会社の売上予定表」という言葉が散見されるようになりました。
私がマンション管理業界に入った頃にはもう言われておりましたので、少なくとも20年は言われ続けております。

私、管理会社勤務時代から、この言葉が凄く嫌いでして
いつか丁寧に反論したいと思っておりましたので、noteで思いの丈を吐き出したいと思います。ご興味のある方はご一読いただければと存じます。


長期修繕計画とは

 長期修繕計画は「マンションの修繕をいつ、いくらで、どんな工法で行うことを想定し、その修繕を行うためには修繕積立金はいくら貯めれば良いか」を計画したものです。
 件の物言いは「工事時期と金額が記入されており、その通りに管理会社が提案してきて売上をかっさらっていく。あな口惜しや」みたいな思いから発せられているのでしょうか。知らんけど。
 長期修繕計画の作成方法等は国土交通省が「長期修繕計画作成ガイドライン」を公表しておりますので、そちらをご覧いただけると非常に良くわかると思います。リンクはこちら↓

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

反論①管理会社が作成するのは「長期修繕計画案」である

 まず、一番最初に言わなければならないのは、管理会社が作成するのは「長期修繕計画『案』であること」です。なぜかというと、長期修繕計画の作成は管理組合の業務であり、有効な長期修繕計画とするためには「総会の決議」が必要となるからです。標準管理規約を見てみましょう。

(業務)
第32条 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理

(議決事項)
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
五 長期修繕計画の作成又は変更

標準管理規約(単棟型)より抜粋

 長期修繕計画は管理会社から押しつけられるものではありません。管理会社が作成した長期修繕計画案を理事会で審議し、その後総会の決議を経てはじめてマンションの正式な長期修繕計画となります。自分達でその長期修繕計画に目を通し、良いと思って賛成しているプロセスがあるはずです。
「え、管理規約に最初から付いている長期修繕計画なんて賛成したことないよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。多くの場合、マンションの設立総会で「長期修繕計画の承認」が行われていると思います。もしくは新築でマンションを購入するときの「承諾書」に含まれている場合もあるかもしれません。いずれにしても、どこかで区分所有者の承認をもらっているはずです。
 最近では長期修繕計画の作成は管理委託契約に入っておらず、オプションになっているマンションが多いです。長期修繕計画についてブーブー文句言われすぎて、管理会社が長期修繕計画を作りたくないと思っている節があるようにも感じます。

反論②自社受注の単価を入れることは少ない(というかほぼない)

 ちゃんとした管理会社であれば、工事単価の根拠を示してくれます。自社実績で入力している管理会社は少なく、単価表等で「工事単価」を拾っていると思います。なぜなら「工事単価の根拠」を必ず聞かれるからです。
 10年後20年後の工事費を記載するのに、自社の金額を入れる会社はありません。「自社の見積もり金額を入れました!」なんてやって逆に安くなったとき「この金額で出来るんだよね?」と詰められる可能性が有ります。
 例えば直近1〜2年後程度の工事であれば実数を入力して作成することもあるかもしれませんので絶対入れないというわけではありませんが、それでもかなり少数派であると思います。

反論③長期修繕計画の内容はいくらでも編集できる

 ①でも記載した通り、長期修繕計画案の内容が気に入らなければいくらでも理事会で変更できます。そもそも管理会社に長期修繕計画案を作成させるのでなく、別の設計会社に作成させる選択肢もあります。誰が作った長期修繕計画案であっても、総会の承認事項である限り、最終的に作成した責任は管理組合にあるのです。

反論④「外部の識者」も金儲けで煽る

 長期修繕計画の意義をミスリードさせ、管理会社を貶めようと嬉々として誤情報を発信する「識者」とは誰なのでしょう?本noteでは武士の情けで具体的な個人名まではあげません。ただ、これだけは知っておいてください。世の中にはこのような情報を発信することでお金儲けをする人が複数おります。
 長期修繕計画の不安を煽れば外部の専門家にチェックしてほしいというニーズが生まれます。また、長期修繕計画のチェックで信頼を得て、大規模修繕工事の受注を狙うことも考えられます。
 別にこれらは悪い行為というわけではありません。立派なビジネスです。ここには長期修繕計画の「考え方の違い」があるだけです。私は「もうちょっと管理会社を信用した方が楽だし得することも多いよ」という考え方なので、意見の食い違いがあるだけ。どちらが正しいということはないです。
 外部の識者か管理会社かは別として、結局は誰かを信じなければ物事は決まりません。「真実を探すにはコストがかかる」「決定したことの責任はどのみち区分所有者に発生する」と、私は思います。

反論⑤長期修繕計画を腐すことは修繕積立金適正化の妨げになる

 以上、4つの理由を述べてきましたが、最後に「長期修繕計画を腐すこと」によりどんな効果があるかという話です。
 最初にも書きましたが長期修繕計画作成の大きな目的は「修繕積立金の改定に関する議論のため」です。ということは「長期修繕計画の作成を遅らせることで修繕積立金改定議論を遅らせることができる」とも言えます。
 長期修繕計画の精度に大きな声でイチャモンをつけ、作成を遅らせる人は、果たしてマンションの敵か味方か。「マンションのためだ」「区分所有者が望んでいる」と長期修繕計画の議論を必要以上に引き延ばす人、あなたのマンションにいませんか?
 ちなみに、長期修繕計画の作成に複数年かかる場合は、経過措置として概算であげてしまっても良いと思います(実際私はこれを提案しがち)。

  私は理事会で置物としてニコニコして無能だ顧問料泥棒だと罵られたい系マンション管理士なので、普段はケンカふっかけるようなことはしませんが、「長期修繕計画書は管理会社の営業計画書」なんて言葉を使う輩には「積立金改定に反対する者は転売業者の回し者」とカウンターパンチを打ってやればよいと思ってます。

 最後に、ディスクレーマー代わりに一言添えておきますが、管理会社が作成する長期修繕計画で実際イマイチなものもたくさんあります。30年より短いもの、必要な設備が入っていないようなものも多く見ております。外部の専門家に見てもらうことに意味がないということではありません。必要に応じてマンション管理士や建築士等、信頼できる業者に確認してもらいましょう。
 以上です。それでは皆様、素敵なマンションライフを!

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