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【3章】やっぱ、その新人賞は辞退しますっ!


東京の片隅にある古びたアパート。その一室で、貴生川と田辺は向かい合って座っていた。部屋の中は書類やノート、文庫本が散乱し、まるで小さな図書館のようだった。窓の外では雨が降り続け、その音が二人の会話に妙なリズムを与えていた。

貴生川は深いため息をつき、目の前のコーヒーカップを見つめた。「田辺、本当にこの作戦でいいのか?」

田辺は眼鏡を直しながら、にやりと笑った。「今さら何言ってんだよ。」

「受賞したら本当に辞退するってこと。本当にやるのか?」

田辺はコーヒーを一口飲み、カップを置いた。「そりゃあもちろんさ。それが俺たちの作戦なんだからな」


貴生川は窓の外を見つめた。雨粒が窓ガラスを伝い落ちる様子が、何かの暗喩のように感じられた。

「もう一度、作戦を確認しよう」田辺が言った。「まず、『因果律』でサイ・ヤング佐和村賞を狙う。そのために俺たちがやってきた準備を思い出せ」

貴生川は頷いた。「ああ、過去20年分の受賞作の徹底的な分析と、選考委員のプロフィール調査...」

「そう」田辺が続けた。「そのデータを基に、お前は『因果律』を書いた。そして、もし受賞したら...」

「辞退する」貴生川が言葉を継いだ。「授賞式で、みんなの前で」

「正解」田辺が頷いた。「『やっぱ、その新人賞は辞退しますっ!』って言うんだ。派手にな」

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