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『#世界五分前仮説』プロローグ+1章 無料公開

プロローグ:仮説の再燃

画面に映し出されたのは、20代後半の青年。白衣を着て、背景には本棚が並んでいる。
「みんな、こんにちは!サイエンスラボのユウトです。今日は、ちょっと変わった哲学の話をしようと思います。『世界五分前仮説』って聞いたことありますか?」
ユウトは黒板に「世界五分前仮説」と書き、くるりと振り返る。
「これ、実は100年以上前からある考え方なんです。20世紀初頭の哲学者バートランド・ラッセルが有名にしたんだけど、もっと昔から哲学者たちが考えてきた思考実験なんだ。」
彼は少し間を置き、カメラに向かって微笑む。
「で、この仮説が言ってるのは、こういうこと。『世界と私たちの全ての記憶が、たった今作られたものかもしれない』ってこと。つまり、宇宙の歴史も、地球の歴史も、君たちの昨日の記憶も、全部が全部、今この瞬間に作られた可能性があるんだ。」
ユウトは真剣な表情になる。
「面白いのは、これを科学的に否定することができないってこと。だって、全ての証拠も同時に作られたかもしれないでしょ?」
彼は再び笑顔を見せる。
「でも、なんでこんな古い考え方を今話してるかというと...現代の問題にピッタリだからなんだ。フェイクニュースとか、ディープフェイクとか。AIが発達した今、『何が本当で何が嘘か』ってすごく難しい問題になってるよね。この古い哲学の考え方が、そういう現代の問題を考えるヒントになるかもしれないんだ。」
動画は10分ほど続き、ユウトは様々な角度から仮説について説明した。最後に彼はこう締めくくった。
「難しい話だったかもしれないけど、こういうのを考えるのも科学や哲学の面白いところなんだ。みんなも一緒に考えてみない?コメント欄で感想聞かせてね。じゃあ、またね!」
動画がアップロードされた直後、視聴回数はゆっくりと、しかし着実に増加し始めた。コメント欄には様々な反応が書き込まれ始める。
「マジか?頭がバグりそう」 「哲学ってこんな面白いんだ」 「AI時代にピッタリの考え方だね」

この一本の動画が、思いもよらぬ形で世界を変えていくきっかけとなることを、誰も予想していなかった。


第1章 日常と仮説

夏の終わりの陽光が、高校のグラウンドに降り注いでいた。ユウトの「世界五分前仮説」の動画が公開されてから約1ヶ月が経った9月上旬のある日、野球部の練習が終わり、生徒たちは汗を拭きながらベンチに集まっていた。
リョウは黙々とグローブの手入れをしていた。2年生の彼は、内向的な性格ながら、論理的思考力に優れた生徒だった。周りでは賑やかな会話が飛び交っていたが、リョウはいつものように静かに作業に集中していた。
「おい、リョウ!」
突然の呼びかけに、リョウは顔を上げた。声の主は同級生の田中だった。活発でトレンドに敏感な田中は、いつもスマートフォンを片手に最新の情報を追いかけていた。
「なんだよ、田中」
リョウは少し気恥ずかしそうに答えた。田中のような活発な友人と話すのは時に疲れることもあったが、同時に新しい世界を知るきっかけにもなっていた。
「お前さ、ユウトの動画見たか?世界五分前仮説のやつ」
リョウは眉をひそめた。「ああ、噂は聞いたけど」
「マジで面白いぞ。ちょっと見てみろよ」
田中はスマートフォンの画面をリョウに向けた。リョウは半信半疑の表情を浮かべながらも、科学への興味から画面を覗き込んだ。
動画を見終わった後、リョウは考え込むように言った。「確かに興味深いな。でも、これって科学的には証明できないんだろ?」
「そこなんだよ!」田中は興奮気味に言った。「科学的に否定することができないんだって。だから、めちゃくちゃ面白いんだ」
この会話を聞いていた他のチームメイトたちも、興味を示し始めた。
「おいおい、何の話してんだ?」エースピッチャーの鷹野が近づいてきた。鷹野は野球一筋で、普段は哲学的な話題にはあまり興味を示さないタイプだった。
田中は得意げに説明を始めた。「世界五分前仮説っていうんだけどさ、簡単に言うと、世界が5分前に全部作られたかもしれないって考え方なんだ」
「はぁ?」鷹野は首をかしげた。「それってどういうことだよ」
リョウは静かに口を開いた。「つまり、俺たちの記憶も、この世界の歴史も、全部が5分前に突然作られた可能性があるってことだ」
「マジかよ」キャッチャーの西園寺が口を挟んだ。西園寺は冷静沈着なタイプで、普段はあまり驚いた反応を見せない。「でも、俺たちは今ここにいるんだぜ。それが現実だろ」
「そこが難しいところなんだ」リョウは慎重に言葉を選びながら話し続けた。「もし本当に5分前に全てが作られたとしたら、俺たちの記憶も含めて全部が作られたことになる。だから、5分前より前の記憶や証拠が存在しても、それが本物かどうか確かめる方法がないんだ」
チームメイトたちの間でざわめきが起こった。この奇妙な仮説は、みんなの興味を引きつけていた。
「でもさ」鷹野が首をかきながら言った。「それって、結局何の意味があるんだ?」
田中が答えた。「意味?うーん、例えば...」
「現実の捉え方を変えるかもしれない」リョウが静かに言った。全員の視線が彼に集まる。「もし本当にこの仮説が正しいとしたら、過去のことを気にする意味はなくなる。逆に、これからの5分間がすごく大切になるかもしれないんだ」
「おお」田中が感心したように言った。「リョウ、けっこう深く考えてんじゃん」
リョウは少し照れたように首を傾げた。「いや、ただ...」
「でもさ」西園寺が真剣な表情で言った。「もしそうだとしたら、未来のことを考える意味もなくなるんじゃないか?だって、また5分後に全てリセットされるかもしれないんだろ?」
その言葉に、全員が黙り込んだ。リョウは胸の奥に、何か重いものが沈んでいくような感覚を覚えた。この仮説が持つ影響の大きさを、初めて実感した瞬間だった。
「いや、待てよ」鷹野が突然言った。「でも、俺たちは野球の練習してたんだぞ?それって、未来のために頑張ってるってことじゃないか?」
「そうだな」リョウはゆっくりと頷いた。「たとえ世界が5分前に作られたとしても、俺たちは未来に向かって生きてる。それが大事なんじゃないか」
チームメイトたちの表情が少し明るくなった。この奇妙な仮説は、彼らに新しい視点を与えたようだった。
「なあ」田中が言った。「この仮説、もっと詳しく調べてみない?面白そうじゃん」
リョウは少し迷ったが、結局頷いた。「ああ、いいな。図書館で調べてみるか」
「よっしゃ!」田中は嬉しそうに叫んだ。「明日の放課後、一緒に行こうぜ」
その時、監督の声が響いた。「おい、そろそろ片付けるぞ!」
皆は我に返り、急いで片付けを始めた。しかし、リョウの頭の中では、世界五分前仮説についての思考が止まらなかった。
家に帰る道すがら、リョウは空を見上げた。夕焼けに染まる雲を見ながら、彼は考えた。「この景色は本当に何億年もの時間をかけて作られたものなのか、それとも...」
リョウの家は、古い日本家屋を改装した落ち着いた雰囲気の建物だった。玄関を開けると、廊下の先から母の声が聞こえてきた。
「おかえり、リョウ。今日の練習はどうだった?」
「ただいま」リョウは答えながら、靴を脱いだ。「うん、いつも通りだよ」
居間に入ると、妹の美咲が宿題に取り組んでいた。リョウは妹の頭を軽くなでながら、自分の部屋に向かった。
部屋に入ると、リョウはバッグから教科書を取り出し、机に向かった。しかし、数学の問題を解こうとしても、頭の中は世界五分前仮説でいっぱいだった。
「もし世界が5分前に作られたとしたら、この教科書の内容も...」
リョウは思わず、手元の教科書をじっと見つめた。そこには人類が長い時間をかけて発見し、積み重ねてきた知識が詰まっている。それが全て5分前の創造物だとしたら...
「リョウ、晩ご飯よ」
母の呼び声に、リョウは我に返った。食卓に着くと、両親と妹の顔を見て、不思議な感覚に襲われた。「もし世界が5分前に作られたとしたら、この家族との思い出も...」
「どうしたの、リョウ?」母親が心配そうに尋ねた。「顔色悪いわよ」
「ああ、大丈夫だよ」リョウは慌てて答えた。「ちょっと考え事してただけ」
食事中、リョウは両親の会話を聞きながら、世界五分前仮説について考え続けていた。「この仮説、昔の人はどう考えていたんだろう」
翌日の学校。昼休みに、リョウは田中と一緒に図書館に向かった。
「なあ、リョウ」田中が言った。「世界五分前仮説って、昔の人も考えてたのかな」
リョウは少し考えてから答えた。「うん、似たような考え方は昔からあったみたいだよ。例えば、デカルトの悪魔の仮説とか」
「へえ、そうなんだ」田中は驚いた様子で言った。「でも、昔の人って、地球が宇宙の中心だと思ってたんだよな」
「ああ、天動説のことか」リョウは頷いた。「でも、それが間違いだって分かったとき、人々の世界観は大きく変わったんだ」
「そうか...」田中は考え込んだ。「じゃあ、世界五分前仮説も、もし本当だったら、俺たちの世界観を根本から覆すってことか」
リョウは真剣な表情で答えた。「そうかもしれない。でも、天動説が覆されたように、この仮説も将来的には科学的に検証できる可能性はあるんじゃないかな」
図書館に着くと、二人は手分けして本を探し始めた。哲学のセクション、科学史のコーナー、そして現代思想の棚...
リョウは古代中国の哲学書のセクションで立ち止まった。
「おい、田中。こんなのあったぞ」リョウは一冊の本を手に取った。
「なんだ?」田中が覗き込んだ。
「荘子という古代中国の哲学者の話だ。ここに『胡蝶の夢』って話が載ってる」
リョウは本を開き、その部分を読み上げ始めた。
「昔、荘周という人が夢を見た。その夢の中で、彼は蝶になっていた。楽しそうに飛び回る蝶になって、自分が荘周であることをすっかり忘れていた。やがて目が覚めると、そこにはハッキリと荘周がいた。そこで彼は考えた。『果たして荘周が夢の中で蝶になったのか、それとも今、蝶が夢の中で荘周になっているのか』と」
田中は目を丸くした。「おお、なんかすごいな。これって世界五分前仮説に似てるよな」
リョウは頷いた。「そうだね。現実と夢の区別がつかないっていう点で、似てる。でも、この話はさらに一歩進んで、『自分が誰なのか』すら分からなくなる可能性を示唆してるんだ」
「そう考えると、俺たちの『自分』っていうのも、5分前に作られた可能性があるってことか」田中が言った。
「そうかもしれない」リョウは深く考え込んだ。「でも、だからこそ『今、ここにいる自分』を大切にする必要があるんじゃないかな」
「おい、リョウ!これ見てみろよ」
田中が別の本を手に持って近づいてきた。タイトルは『現代哲学入門』。
「ここに世界五分前仮説のことが書いてあるぞ」
リョウは興味深そうに本を受け取った。ページをめくると、確かにその仮説についての説明があった。
「へえ」リョウは驚いた様子で言った。「思ったより古くからある考え方なんだな」
「そうみたいだぜ」田中も同意した。「でも、なんでこんな古い考え方が今になって注目されてるんだろうな」
リョウは少し考えてから答えた。「たぶん、現代の問題と関係があるんじゃないか?例えば、フェイクニュースとか、情報の信頼性の問題とか...」
「ああ、なるほど!」田中は目を輝かせた。「要するに、何が真実かわからなくなってきてるってことか」
リョウは頷いた。「そうだな。だから、こういう極端な仮説が人々の関心を引くんだと思う」
二人はその後も何冊もの本を読み漁った。哲学書、科学史、さらには物理学に関する本まで。時間が経つのも忘れて、二人は熱心に調べ続けた。
図書館を出る頃には、日が傾き始めていた。夕暮れの街を歩きながら、リョウは考えを巡らせていた。
「なあ、田中」リョウが静かに言った。「この仮説を知って、お前の世界の
「なあ、田中」リョウが静かに言った。「この仮説を知って、お前の世界の見方は変わったか?」
田中は少し考えてから答えた。「うーん、正直よく分からないけど...でも、なんか日常のことをもっと大切に感じるようになったかな」
リョウは頷いた。「俺もそうだ。たとえこの仮説が正しくなくても、今この瞬間を大切にすることの重要性を教えてくれた気がする」
二人は別れ際、明日も続きを話し合うことを約束した。家に帰ったリョウは、今日の出来事を日記に書き留めた。ペンを置きながら、彼は考えた。
「世界が5分前に作られたものだとしても、この瞬間の思考や感情は確かに存在している。だからこそ、一瞬一瞬を大切にしなければ」
ベッドに横たわりながら、リョウは天井を見つめた。世界五分前仮説について考えれば考えるほど、現実の捉え方が変わっていくのを感じた。それは恐ろしくもあり、同時に不思議と心躍るものでもあった。
翌朝、リョウは目覚ましの音で目を覚ました。前日の探求が夢の中まで続いていたような感覚があり、現実と非現実の境界線が曖昧に感じられた。
朝食を取りながら、リョウは家族の様子を新鮮な目で観察していた。妹の美咲がいつものようにパンにジャムを塗る仕草、父親が新聞を読みながらコーヒーを飲む姿、母親が忙しそうに台所を行き来する様子。これらの日常的な光景が、突然特別なものに思えてきた。
「もし世界が本当に5分前に作られたとしても、この瞬間は確かに存在している」リョウは心の中でつぶやいた。
学校に向かう道すがら、街の風景もこれまでとは違って見えた。古びた建物、生い茂る木々、道路のひび割れ...全てが長い歴史を物語っているように見えるのに、もしかしたら全てが新しいのかもしれない。その二重の認識が、リョウの頭の中でぶつかり合っていた。
教室に入ると、田中が笑顔で近づいてきた。
「よう、リョウ!昨日の続き、今日も調べようぜ」
リョウは頷いた。「ああ、楽しみにしてる」
授業が始まり、リョウは先生の話に集中しようとしたが、頭の片隅では常に世界五分前仮説のことが気になっていた。特に歴史の授業では、教科書に書かれた出来事や年代を見るたびに、「これらは本当に起こったのか、それとも5分前に作られた記憶なのか」という疑問が浮かんでは消えた。
昼休み、リョウは屋上で一人、弁当を食べていた。遠くに見える山々を眺めながら、彼は考えを巡らせていた。
「リョウ!ここにいたのか」
振り返ると、田中が息を切らして近づいてきた。
「どうした?」リョウは尋ねた。
「いや、さ」田中は少し興奮した様子で言った。「物理の先生に世界五分前仮説のこと聞いてみたんだ」
リョウは驚いて目を見開いた。「マジで?何て言われたんだ」
田中は得意げに笑った。「先生、最初は困惑してたけど、結構真剣に答えてくれたぞ。『科学的には証明できないけど、哲学的には面白い考え方だ』って」
「へえ」リョウは感心した。「先生も興味あるんだな」
「そうそう」田中は続けた。「それで、先生が面白いこと言ってたんだ。『この仮説は、科学の限界を示していると同時に、科学の重要性も示している』って」
「どういう意味だ?」リョウは首をかしげた。
「つまりさ」田中は説明を始めた。「科学では証明できないことがあるってのが限界。でも、だからこそ科学的な方法で確かめられることを大事にしないといけないってことらしいぜ」
リョウはしばらく考え込んだ。「なるほど...科学の限界と重要性か」
そのとき、鷹野と西園寺が屋上にやってきた。
「おい、お前ら」鷹野が声をかけた。「まだあの変な仮説の話してんのか?」
リョウは少し恥ずかしそうに答えた。「ああ、ちょっとね」
西園寺が興味深そうに言った。「実は俺も、昨日から気になってたんだ。この仮説が本当だったら、俺たちの人生って何なんだろうって」
田中が熱心に説明を始めた。「そこなんだよ!人生の意味とか、価値観とか、全部変わっちゃうかもしれないんだ」
鷹野は眉をひそめた。「でもさ、そんなことを考えても仕方ないんじゃないか?どうせ証明できないんだろ?」
リョウは静かに口を開いた。「確かに証明はできない。でも、この仮説について考えることで、今の瞬間をより大切にできるかもしれない。それだけでも意味があるんじゃないかな」
西園寺が頷いた。「なるほど。要するに、過去や未来にとらわれすぎず、今を生きろってことか」
「そういうことだな」リョウは同意した。
鷹野はまだ納得していない様子だった。「でも、そんなこと考えなくても、普通に生きてりゃいいんじゃないのか?」
田中が反論した。「でもさ、考えることで見方が変わるかもしれないだろ?例えば、野球の練習だって、『未来のため』っていう考え方から、『今この瞬間を楽しむ』っていう考え方に変わるかもしれない」
鷹野は少し考え込んだ。「まあ、そう言われれば、確かに...」
リョウは静かに言った。「要は、この仮説が正しいかどうかじゃなくて、これを通じて自分の人生や世界の見方を考え直すきっかけになるってことなんだ」
4人は黙ってうなずいた。その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「おっと、戻らないと」西園寺が言った。
教室に戻る途中、リョウは考えていた。「こんな風に、みんなで哲学的な話ができるなんて、面白いな」
午後の授業が始まったが、リョウの頭の中は世界五分前仮説のことでいっぱいだった。特に科学の授業では、実験の結果を観察しながら、「この現象は本当に自然法則に基づいているのか、それとも5分前に設定されたプログラムなのか」という思考が浮かんでは消えた。
放課後、部活動の野球の練習中も、リョウの頭の中は仮説で一杯だった。ボールを追いかけながら、彼は考えた。「このボールの軌道も、全て5分前に決められているのだろうか。それとも、今この瞬間に生まれているのか」
練習が終わり、シャワーを浴びている時、突然リョウはある考えに襲われた。「もし世界が5分前に作られたとしても、この水の冷たさや、体を洗う感覚は確かに実在している。そう考えると、むしろ今この瞬間がより鮮明に感じられる」
家に帰る道すがら、リョウは街の風景を新たな目で見ていた。道行く人々、走る車、風に揺れる木々...全てが5分前に作られたものだとしても、その複雑さと美しさは驚異的だった。
「でも」リョウは思った。「これが全て5分前に作られたものだとしても、俺がこの世界で感じる感情や経験は、間違いなく『現実』なんだ」
家に着くと、リョウは急いで自分の部屋に向かった。机に座り、ノートを開く。そこには、彼が考えついた世界五分前仮説に関する疑問や考察が、乱雑に書き連ねられていた。
「もし世界が5分前に作られたとしても...」リョウはペンを走らせ始めた。「その目的は何か?誰がそれを作ったのか?俺たちにはそれを知る方法があるのか?そして、もし知ることができたとして、その後俺たちはどうすべきなのか?」
質問は次々と浮かんできた。リョウは夜遅くまで書き続けた。彼の探求は、まだ始まったばかりだった。
ベッドに横たわりながら、リョウは天井を見つめた。世界五分前仮説について考えれば考えるほど、現実の捉え方が変わっていくのを感じた。それは恐ろしくもあり、同時に不思議と心躍るものでもあった。
「明日は、また新しい発見があるかもしれない」
そう思いながら、リョウは目を閉じた。彼の意識が眠りに落ちていく中で、現実と夢の境界線が曖昧になっていくのを感じた。それはまるで、世界の本質そのものを象徴しているかのようだった。

#小説

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