何があってもとにかく生きてろ、と。そういう映画『バクラウ 地図から消された村』“Bacurau”を観たら
タイトルに惹かれて鑑賞しましたが、何が起こっているのかなかなか見えてこないブラジル映画でした。これは手ごわい。
『バクラウ 地図から消された村』“Bacurau”
近未来、ブラジルの架空の村が舞台です。
大人の男女二人を乗せて田舎道を走る給水トラック(というのは後でわかる)が、道に落ちていた何かを踏んでしまいます。棺桶でした。
そのまま走り続けると道に棺桶がいくつも落ちていて、給水トラックはいちいち踏み壊して走り続けます。
少し走ると、コケたバイク、死体のように倒れている人、大きくカーブしたタイヤ痕の先で横転している棺桶搬送トラックなどが見えてきて、事故があったのだとわかります。
おそらく棺桶の積み方が悪く、荷崩れしながら走っているうちにバイクを巻き込んだ果てに横転したのでしょう。
交通事故ですが、積荷が棺桶だと途端に異様な風景になります。
きっと「地図から消された村」に近づくに従って異様で怖い出来事が連発するのでしょう。
と思ったらそんなことはなく。
途中休憩で不穏な会話はありましたが(どうやら水の調達で揉めて殺人やら起こっているらしい)、助手席の女性は途中で知り合いに手を振ったり、村に着くと知り合いとハグしたり、久しぶりに故郷へ帰ってきた感でちょっとほのぼのしてます。
と思ったらなんか謎の錠剤を飲まされたりと、なかなか一筋縄ではいきません。
しばらくこの調子で、村で何かが起きている(もしくは起きつつある)のはわかるのですが、総括的な説明は無いままで、セリフやらシーンやら、断片的に与えられる情報から想像するしかありません。
徐々に情報は増えて、「こういうことなんじゃないかな」くらいにはなるのですが、確信は持てません。
形状がはっきり見えるUFOとか出てくるし。
はっきりとしたクライマックスはあるので、観終わってスッキリしないということはないと思いますが、何が起きたのか全体像がわからないと気が済まない人はモヤっとしたものが残るかもしれません。
私は謎が残っても平気というか、むしろ謎が残って考える余地があるものが好きなので面白く観れました(スッキリ全解決するのも楽しめますが)。
迷路で迷いながらルート探しを楽しむか、最短ルートでクリアしないとイラつくか、そんな違いでしょうか。
観ていて、以前読んだロベルト・ボラーニョの小説『2666』と雰囲気が似てるな、と思いました。『2666』では人がたくさん死んでいくのですが、事件は解決せず、日常は日常で進行するような感じのお話で、この映画の描写の仕方と共通点があるように思いました。
ボラーニョはチリ出身の作家なので、南米特有の何かがあるのかもしれません。
何か。
「命」とか「人生」とかそういうレベルの何かが。