信号〈ショートショート〉
「船長、あの星までもう少しですね」
何光年も彼方からやってきた宇宙船は順調に飛行をつづけていた。
彼らの星は寿命をむかえていたが、ついに移住先をみつけたのだ。
公転軌道がいびつだが決して住めない環境ではない、そういう報告があがっていた。
「あの星の人類には申し訳ないが、そろそろ我々と交代だな」
そういって、船長は吸盤のついた腕で頬をなでた…。
そして数ヶ月の後、ついにその日がやってきた。
しかし彼らの宇宙船は、その星が肉眼で見えるところで急停止していた。
決して移住をあきらめたわけではないのだが。
「なんてこった!」
「赤か!」
「もう少し早く着いてれば…」
宇宙船はこれ以上進むことができない、なぜならこれは宇宙の規則なのだから。
その頃、その星の住民は、危機が迫っていることなど知るよしもなく、人々の秋の関心は、どこの紅葉がきれいかに集まっていた。