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セルフライナーノーツ【2019年サバの味噌煮計画の新作について】

こんにちは。

Sabano Misoniことペキです。

今回は新作を130日ぶりに発表したので

それまでも別にサボっていたわけではないということを

ツラツラと、

レーベルによるインタビュー形式でちょっとネタっぽくやっちゃいます。

ではさっそく、以下。

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第一回 Sabano Misoniについて解く

インタビューする人:アルパカレコードの中の人(以下:ア)

インタビューされる人:ペキ(以下:ぺ)

ア:こんにちは。今日は私の主催するレーベルのアルパカレコードより過去、2枚アルバムをリリースしているペキさんにお越しいただきました。

ぺ:こんにちは。いつもお世話になります。あと、最近ご無沙汰してました。

ア:確かに、ご無沙汰でしたね。新曲が130日ぶりということで。結構待ちましたよ。

ぺ:すみません、なんか。

ア:去年2018年にTHE ENDがリリースされて、そこからほんとに丸々新曲ですか?

ぺ:そうなんですよ。

ア:その間はどのように?

ぺ:主にインプット作業と、再開発ですね。

ア:そうでしたか。具体的には?

ぺ:うーん、いろいろあってどれから話せば...(笑)とりあえずTHE ENDを作ってる中で一定の達成感とともに、色々やるべき方向が固まってきたので、それを組み上げる作業をしていました。ジャンルとか音楽性の所ももちろんですけど、ノイズレスでクリーンな制作から転換して、もっとアナロジックでちまちま手作業な制作をやりたいなーとか、思うようにはなっていました。

ア:それは概念的な話です?

ぺ:それもそうなんですけど、楽器とかミックスとか割と実務的な話です。前作は結構ソフト音源のお世話にはなっていました。いろんな音に対応できるしメリットもかなりあるんですが、Mac OSがHigh SierraやMojaveになったタイミングもあるんですけど、互換性対応の問題やラフスケッチ時のレスポンスを考えると、パッと触って音が出るのって良いなーって。

ア:なんか、薄っすらわかります。

ぺ:けどSV1もPCM音源をハードから鳴らしてるから、結局PCで鳴らしても理屈的には同じなんですよ。けど実際はSV1の真空管通って、ベルデンの9778でステレオ出ししてFocusriteのScarett 18i20のマイクプリ通ってDAWに入るんで全然音が違うんです。
   後はARTURIAのDRUM BRUTE Creationは100%アナログなんですよ。加えて、NOVATIONのBASS STATION2もそうでしょ?100%アナログ。これらをMIDI機器として中のソフト音源鳴らしたりもちろんするんですけど、比べると全然違う。少なくとも自分の環境では、出したい音がハード経由だったり、アナログサウンドだったりの方が近いんです。この辺は好みですね。全然プレイヤーさんによって志向が違うので。

ア:昔はハードオタクだったミュージシャンもだんだん軽量化、デジタル化が進んでいる中、ペキさんは真逆ですね。

ぺ:そうかもしれないですね。けど、僕みたいな人もいっぱいいるし、良いですよ。ハードって。もともとベースやってて、まあ厳密にはギターの方が歴は長いんですけど、とにかく演奏についてはフィジカル面の比重が大きいと考えています。弾かないとしっくりこないんですよね。奏法が割と無限(笑)
  僕は皆さんみたいにMIDIやオートメーション駆使してあんなにすごい曲作れないですから。それぞれ好きな分野で表現できれば良いんじゃないかな。

ア:機材の話を掘っていきます。ドラムブルートはパラ出しできますよね?

ぺ:ですね。けどそのままの音が気に入ってるので、モノラルで出してます。音がいいから弄らなくていいや、って感じで。あと、あれですねキックが2chあるので909系と808系はダブリングで入れてます。ブレンド具合とか、曲毎で探っていって完璧にハマった時はヤバイですよね。トランス状態っていうんですかね。で、DRUM BRUTEはポリリズムや変拍子、パート毎にスイング調整、ランダムネス調整をかけれるし、HPFやLPFなど...もう言うことないですね。そしてその全部がエルゴノミックで使いやすいのはフランスメーカーならではのプライドが感じられます。唯一ほら、シンコペーションは無理っぽいですけどね。

ア:ベースはどんなセッティングですか?

ぺ:Sadowsky MV4のセンターバランスで、今回はトーン70%で、アクティブはオンでブーストなしです。ベルデン9778で出して、DIのPJB BASS BUDDYに。コンプなしでEQもフラットでスルーですね。DIからはベルデンのXLRでAIFに出してます。弦はリチャードココのニッケルです。

ア:ギターはどうですか?

ぺ:ムスタングはリアをダンカンのシングルに載せ替えているんですが、これをベースにNYXLの少し軽いゲージのBTを張っています。XOTICのBB PREAMPを通すだけにしてZOOMのG3Xnへ。フェンダーアンプ系の鳴りで作っています。線はいずれもベルデンです。中のセッティングは色々細かくてあれなんですが、距離/鳴り/揺れが一番表現しやすい楽器なので色々とイタズラばかりしていますよ。

ア:アナログモノシンセの音作りはどうされていますか?

ぺ:はい。これはカナレで出してます。NOVATIONのBS2はめちゃくちゃ音が太くてワルなサウンドです!このシンセサイザーはリバーブもかかってないですし、竿モノみたいにキャビネットで鳴らした箱鳴りの質感も無くてソリッドになっちゃうんですけど、これを回避する必要がある場合にDAWでリバーブのセンドバスに送っています。
  Drum Bruteもこのセンドバスに送っています。後がけのメリットはやはり、元の出音を変質させなくていい点ですね。元々文化的にリバーブ感やキャビでスピークさせる風習がなかった楽器は、そうでない楽器とのテクスチャーを埋める作業も必要になってきますが、私はこれらを音作りとしてではなくて、MIXの観点からリバーブをかけますのであくまでも後がけということになります。基本的にはあまりデッドではない、かつ小規模の部屋で鳴らしてるイメージで、残響を作ります。LogicのSpece Designerが昨年パワーアップしたのでますます使っています。定番のワザですけどやっぱり下はスルーしますね。楽器によって切る帯域は変えますが...

ア:機材的な話もオーバーラップしてきましたが、Logic Proをお使いですよね。近年どのDAWも完成度が高いですが、どのような基準で選ばれましたか?

ぺ:やっぱり安定性に優れているので。ここは非常に重要です。FocusriteとのAIFとも相性がかなり良くて同社のドライバーも非常に優秀なんだなと感じています。今の所一回もトラブルがないのはすごいですよ。Logicはalchemyも気に入ってますよ。BS2のノブをアサインさせてます。

ア:今回はソフト音源は使うんですか?

ぺ:正直いうと使うつもりは無いんですが、出音の客観性を保つために常に触っていますよ。色々楽しいこともできるし。今自分の録音に必要かどうかなだけで。どっちがいいとか悪いとかは無いわけです。

ア:MIXやマスターのプラグインはどんな感じですか?

ぺ:ソースや曲毎にツールは変わるんですが、傾向としては"ダーティ"でスモーキー"な質感...なんていうのかな、出し尽くされた言葉を使うとアナログな感じに回帰空いています。アナロジックな汚れ具合と空気感を大切にしました。
 前回はノイズレスで、クリアで、ラウドネスも潰れない程度ギリギリまで追い込んでいく感じでしたけど。はっきりわかったんですね。「これは求めている音じゃない」って。
 クラプトンやジョンメイヤーからは大きくレコード面での影響も受けています。彼らのサウンドパッケージはラウドネスとかノイズレスとかそういうのとは、はるかに違う次元のところにある。おしなべて..."質感"って言葉ばかりになるのですが、脚色してないそのままをパックしている部分に魅力を感じているんです。
 だから、後で補正出来るとか一切考えてないんです。このテイクがいいとかここだけ直したいとか、それをいってたらその曲の一番いい時がすぎてしまいそうな気がするんです。人間にもアルゴリズムがあるように、その曲たちにも然るべきビッグウェーブが来るんです。閃いたその時に作っていかないと、完全に構築した後のパーフェクトな音源はどれもきっと違うんです。
 技術的には色々アップデートしていて、WAVESの真空管コンプをソースの頭に通すだけで全然潰さない、っていうのもやりました。今まではオカルトだって思ってたんですけどね。

ア:実機では有名な手法ですね。アンプを通すだけって、アヴァロンとかもそうですけど、嘘だろ?っていう方も多いはずです。

ぺ:Sutdio Oneが音がクリアという記事から始まり、DAWが違うだけで音が違うはずないじゃん?って思いましたけど、科学的に客観的に証明されている記事があって、少し興味が湧いて。ハード的には構造に起因するサウンドの変化が見られますが、プラグインで音の変化を再現するとかってなると、これまた目的が少し変わってて、現代的というか面白いプロセスですよね?そこからひっそり多方面に、かなりディグっていくと、これ相当色々やれるぞ?と、いうことになって...

ア:それでこんなに時間が空いちゃった、と?(笑)

ぺ:まあ、そういう部分も大きいです。一見シンプルなMIXを心がけていますが、相当ギミックを仕込んでますよ、中は。面白いのは、かなりラウドネスも落としてあるので、平均では-12LUFSです。どうですか?かなり静かな音源だと思いますよ。こんなに静かにマスターさせるのはジャンルによりますけど、意図的に下げる必然性がない限り、普通は選択しないですよね。

ア:まあ、あまり積極的には採用しないような気がします。

ぺ:けどパートそれぞれがはっきり存在しているはずです。結局ボリュームを手元で任意に上げていっても煩くはなりにくい。夕方以降の移動とか作業中にBGMで流してもらいたいんです。
 あとは、自分の実家にアップライトがあるんですけど、その時に生のピアノの響き方を改めて叩き込んでいました。鍵盤の返り方や発音方式まで、どうしてもキーボードだと音はいい線までは行くんですけど、フィジカル的な部分では限界が無いとは言えません。いっそのこと、SV1みたいに”一つの新しい楽器”として成立したチョイスをする方が、迷いが生まれなくていいと思いました。実家はKAWAIなんですが、やはり生が故に個性的なピアノの音に感じました。いい意味で録りにくいだろうな、と。ロー鍵はより低く、ハイはより高く、みたいないわゆるドンシャリ感がありまして。割と暴れてるしなおかつ、ややダークな音色。構造上、個体差もかなりあるみたいですから。もちろん調律も一応毎年してあげるわけだし、気難しいですよね。そういう愛らしさが持てる環境を、自分の制作現場でも維持したいなと、感じました。

ア:ありがとうございます。ビートがある程度はっきりしている中に、ステイさせたベースリフ、ウワモノがリンクせずにオンコード状態で勝手に展開されている、いい意味での荒唐無稽なアレンジですが、どういう発想から今回のような仕上がりになりましたか?

ぺ:基本的には即興性を重視しているので、あまり決め事を作りたくない。マイルスがモードジャズを構築する際に色々制限から解放されようとしましたよね。ある種、そういう一つの疑問からスタイルが生成されていきました。まず、ベースを弾く際に通常のコードチェンジでは、どうしても自由度の確保が難しかったので、ある時からコードをステイさせてしまって、なんかあればベースがルートに戻ってくるように作るケースが出てきました。変な話、上物が全部どっかいっちゃってても...まあ、例えばCm7がトニックになるキーでCm7を鳴らすべき小節で、鍵盤がE♭△7にインバージョンされてて、ギターがB♭のミクソリディアンスケールでソロをとっている状態でも、ベースは根音をとってあげましょうよ。または戻ってきてあげましょうよ。とか、大雑把なルールだけ決めておいて、あとは自由でいいんじゃない?っていうスタンスで。
 次だいたいこんな感じやろなー。っていうのがあんまり好きじゃない。自分にしかできない音楽があればそれをやるのは使命でもあるわけですから。

ア:音楽を"再現芸術”と定義している文献もある中で、圧倒的に再現が難しいアレンジですよね。本当に一回限りの、という意味合いが強い楽曲ですね。

ぺ:あえてリードのメロディやモチーフ乃至はリフが少ない、または弱い。そしてリリックやボーカルが加えられないことによって、環境音楽(インテリア)として解釈いただけたら嬉しいです。

スタジオ環境


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