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2024年に聴いた現代音楽を振り返って、
20世紀後半、破壊的革新から生み出された"ゲンダイオンガク"の名作の数々、21世紀の今、まさに生み出され続けている"ジャスト"現代音楽な新作の数々、常日頃、たくさん聴きたいと思っている、のではありますが、交響曲だ、オペラだと言っている内に、つい後回しがちになりまして、2024年に聴いた現代音楽、15タイトルに留まる。いや、いろいろ聴きそびれている中ではありますが、特に魅了されたタイトル、ひとつ選んでみた!
💿 もうひとりのミニマリスト、ジュリアス・イーストマン、1974年の作品、"Femenine"。知りませんでした、ジュリアス・イーストマン(1940-90)。戦後アメリカでブラッククィアとして生き、作曲し、時代に抗いつつ迎える不遇の最期... その不器用な人生を見つめながら、聴く、"Femenine"は、より感慨深いものがあって... 一方で、その音楽、ミニマル・ミュージックの手法を採りながらも、ミニマル・ミュージックならではのサイケデリックさ、あるいはシステマティックさに囚われない、しなやかさ、リリカルさが心地よく、もうひとつのミニマル・ミュージックの進む道を示し得ていたように感じる... なればこそ、惜しまれる、短い人生... そんなジュリアスの音楽を慈しむように響かせる、タレア・アンサンブル、ハーレム・チェンバー・プレイヤーズの演奏も素敵で、惹き込まれました。
さて、他にも印象に残るタイトルありまして... まずは、スペクトル楽派の巨匠、ミュライユの「水源の分有」と「影の大地」。ブロックの指揮、フランス国立管(水源)、エトヴェシュの指揮、フランス放送フィル(大地)の演奏で聴くのだけれど、フランスを代表する作曲家のひとり、トリスタン・ミュライユ(b.1947)を、改めて聴き直すような充実の演奏に惹き込まれる!惹き込まれた、感じる、織り成される音響の抽象から広がるエレガンス!フランスの音楽なんだなと、感慨深く思う。そして、ブルーズ+アンサンブル・アンテルコンタンポランによるリゲティの協奏曲、室内楽曲集。トーン・クラスターで鳴らしたリゲティ(1923-2006)だけれど、それだけではない多彩さに注目する演奏は、リゲティのハンガリーというルーツ、民族性をすくい上げるようなところがあって、思い掛けなく味わい深く... いや、こんな風にリゲティと向き合えるのかと、新鮮な思いに... それから、リープナーのピアノで、ケージの『冬の音楽』。"ゲンダイオンガク"のアイコンが放つ抽象の、研ぎ澄まされた表情が、まさしく冬!で、リープナーのピアノが、見事に澄み切った冬の表情を描き出していて、抽象から詩情を引き出す!いやー、難解を越えた音楽、圧巻。で、最後に、オーストリアの作曲家、ベルンハルト・ラングの声とアンサンブルのための作品集。現代音楽を得意とするソプラノ、サンの鮮やかなヴォーカルに彩られ、繰り出される、ジャズ、ロック、テクノ、などなど、あらゆるスタイルをミクスチャーし、紡がれてゆく"ジャスト"現代音楽の刺激的な様!現代を生きる者として、共感せずにいられない... というか、こういうの、もっと聴きたいぞ!
ということで、ざっと振り返ってみました現代音楽... 15タイトルしか聴いていなかったことに愕然としつつ、2025年は、もっとこまめに現代音楽を聴くぞ!と、新年の抱負。