野沢直子さんのお母さん
「文藝芸人」という3年前に発行されている古い雑誌を、昨日読んだ。「笑うお葬式」という野沢直子さんのエッセイに泣かされた。当時かなり話題になったらしく、単行本も出ているということを今さら知った。
先日、ある人に「親のエピソードが好きだね」と指摘されて、「確かにー」と思ったが、「母親のエピソード好き」なんだと思う。身近な人でも、遠くの人でも、その人の母親のエピソードに興味がある。「在り方、Being」が素晴らしい母親に強烈に惹かれる。そして、そういう母親に育てられた人をうらやましいと思う。
「笑うお葬式」は破天荒なお父さんについてのエピソード中心だが、私は野沢さんのお母さんの強さに感動した。たまに思い返したい文章なので、備忘録として書いておこう。
「母の明るさの源は、父への愛情の深さだったと思う。母の、父を信じる力の強さは夜中に来た借金取りを追い返し、私と弟を守った。その強さは父への愛情、そして母から私への最大の贈り物だった。
あの状況下でも私は、笑って育てられた。不幸な状況にあっても、「不幸」だと思わなければ、不幸でないことを身体で覚えた。私の中には、何があっても笑って乗り越えてきた母の明るさの、その強さがある。これは私の人生を幸福に導いてくれる最大の武器で、母からの最高の贈り物だったと感謝してやまない。
そして、私は母からもらった強さと愛情を、自分の子供に伝えたいのだ。私は、家ではとにかく子供とよく笑うことにしていて、それが、母親の一番大切な仕事だと信じている。母親とは、何があっても家の中にまっすぐ立って、子供と一緒に笑ってさえいればいいのだと信じている。母とはそういう生き物で、笑っていることが母親の一番重要な仕事なのだと信じている。何があっても笑って乗り越えられる。あの母のひまわりの強さの種を、子供たちのマインドに播くのだ。それが私の役目だ。」