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そのシナリオ、なにが《お楽しみ》ですか?-ホーム・アローン1~3をプロット視点で観て気づいたこと

「アァーーーーーーッッッッッ!!!!!!」


マコーレ・カルキンのあの叫びが大好きな、しむらおとのです。

昨年末のクリスマスシーズン。何かそれっぽい映画を観たい!と思ったしむらは、今月から加入したディズニープラスで「ホーム・アローン1~3」をイッキ見しました。

折しも昨年から「シナリオの学び直し」に力を注いでいた私。久しぶりに観た「ホーム・アローン1~3」についても、ちょっとした発見がありました。

今回の記事では、この発見を熱が冷めないうちに書き留め未来の私に残すべく、またリスタートしたばかりの私のnoteの賑やかしにすべく(?)やや長くはなりますが、まとめてみたいと思います。

ホーム・アローンとは

「クリスマス。なのに家(または都会のど真ん中)でひとりきりになった幼い少年が、我が家(または善良なおもちゃ屋)を狙う泥棒たちに目をつけられてしまうが、持てる悪知恵とトラップを駆使し、泥棒たちを撃退する!」

1~3共通で使えそうなあらすじ(ログライン)を、しむらなりに書いてみました。まあこんな感じのお話ですよね。

(ちなみに、4以降が作られていたことは最近知りました。一応4は見ました…が…これは別の機会に語るとして…この反応からお察しください…)

実は私が1~3の中で最も好きなのは、かのマコーレ・カルキンさん主演の1でも2でもなく、アレックス・D・リンツさんを新たな主演に迎えた「ホーム・アローン3」だったりします。

だって悪役×4がボッコボコにされるんだもの面白いわよ

悪役×4にしたらたまったもんじゃない発言ですが、きっと多くの方から賛同していただける、はず。

1~2では悪い泥棒さん×2(ハリー&マーヴ)が、マコーレ・カルキン演じるケビンを襲う…どころか逆に翻弄されまくるわけですが。

3ではなんと、この悪役が2倍の4人組になって登場。
リーダー格のピーター、イケメン風のバートン、いかにもチンピラ風なアールに、紅一点・セクシーなおねえさん泥棒・アリスも迎えて、いやあ今回は泥棒に花があるなぁ!

……と思いきや、このおねえさんにも容赦のない仕打ちでしたよね

  • 接着剤が入ったバケツに手を突っ込ませる

  • 泥だらけの地面に突き落とす(実際には自分から落ちたが)

  • 空からサンタさんの植木鉢が降ってくる

むしろ殺意マシマシだった感。いいぞもっとやれ()

ターゲットの数が単純に2倍になったぶん、アレックスがしかける数々の罠もパターン豊富で賑やか賑やか。現代コンテンツ風に言えば、ちびっこが「無双」し続ける、そりゃあもう楽しい時間が続きます。

……でも、待てよ?

1~2だって、ケビンが泥棒をコテンパンパンにするシーンはあります。
なのに、どうして3が一番おもしろい!!って思ったのでしょう?

「なぜホーム・アローン3は“私にとって”面白いのか?」

ここで、近頃のシナリオの学び直しが生きました。この疑問の答えを結論から言うと、

ホーム・アローン1~2とホーム・アローン3では、《お楽しみタイム》にちょっとした違いがある。
そして、私の《期待》に最も応える《お楽しみタイム》となっているのが「3」。だから私にとって「3」が面白い。

ということだったのです。

《お楽しみタイム》?

そもそもお前の言う「お楽しみタイム」ってなんじゃらほい、という話からします。以前、私は↓のような記事を書きました。

こちらで紹介している「SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く」の原典、「SAVE THE CATの法則」の「脚本の構成」について解説している章で、《お楽しみ》とは何かの記述があります。

《お楽しみ》セクションは、観客に対するお約束を果たす場だと言っていい。ポスターや予告編で使った一番おいしい部分なので、観客はストーリーの進展以上にこの《お楽しみ》に期待しているものだ。

ブレイク・スナイダー 著 / 菊池淳子 訳『SAVE THE CATの法則』

つまり「ドラえもん」で言うところの、のび太がドラえもんから借りたひみつ道具を好き勝手に使いまくるあたりとか、まさにこの《お楽しみ》になりそうですね。

で、調子に乗ってなにかしら事件を起こしてしまったとき……残念、《お楽しみ》は終わるわけです。(ちなみに、この事件が起こるセクションはミッドポイントとか中間点とか言います)

ドラえもんといえば、ひみつ道具で僕たち私たちを助けてくれる未来の世界の猫型ロボット。この《お楽しみ》のセクションは、ドラえもんが私たちの「こうだったらいいな!」を、のび太たちを通して叶えてくれる、約束されたおいしいシーンなわけですね。

ちなみに私が一番好きなひみつ道具は、植物改造エキスです。カツ丼食べたい。

「ホーム・アローン1~2」と「3」の《お楽しみ》には、ちょっとした違いがある

ホーム・アローンの話に戻ります。

見出しにでっかく書いた通りなのですが、ホーム・アローン1~2と3では《お楽しみ》の内容にちょっとした違いがあることに気づきました。

もしかしたら、シリーズファンの方の間では有名な話だったりして…?(どうなんだろう…?)

「SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く」より

《お楽しみ》は上図のような感じで、ストーリーの進行度合いをパーセンテージで見た場合に、全体の約20%~50%地点を占めていることが多いようです。

ホーム・アローン1・2・3の、そのあたりの展開をざっくり書き起こしてみると……?

ホーム・アローン1の《お楽しみ》

  • うるさい家族たちがいなくなったことに気づき、たいそう喜ぶケビン。ここぞとばかりに普段できない一人ぐらしをひたすら満喫する(ベッドで跳ねたりシャワー浴びてアァーーーッ!!!!したり死ぬほどアイス食べたり)

  • 泥棒コンビ登場

  • お母さんがケビンがいないことに気づいてシカゴに帰ろうと奮闘する

  • ケビンが泥棒を軽く撃退するシーン(これはほんの挨拶)

……で、「自分が『いなくなれ!』なんて願ったから、家族みんないなくなっちゃったのかも…?」と(たいそうかわいい理由で)不安になり始めたあたりで、お楽しみタイムはおしまい。

ホーム・アローン2の《お楽しみ》

  • うっかりニューヨークに来ちゃったケビンはひとりで観光!

  • それどころか、ニューヨーク随一のホテル「プラザホテル」のスイートルームの予約を取ってルームサービスを大満喫!!(またも死ぬほどアイス食ってる!!)

  • 次の日はリムジンででっかいおもちゃ屋に

  • おもちゃ屋がクリスマスの売り上げを病気のこどもに寄付していると知ってケビンも寄付・レジ係さんからクリスマスツリーの飾りをプレゼントされる

  • 実はその人がおもちゃ屋オーナーだった…!!(すごいぞケビン!)

……で、ケビンが宿泊に使ったカード(お父さんのカード)に盗難届が出ていることがホテルボーイにバレたあたりで、お楽しみタイム終了。(しかもこのあと例の泥棒二人組にも再会しちゃってあら大変)

ホーム・アローン3の《お楽しみ》

  • 「泥棒がいる!!」という話を大人の誰にも信じてもらえなかったアレックスは、自らその証拠をつかむべく行動を開始する

  • ラジコンカーで泥棒を追跡。泥棒もまた、ラジコンカー(の中にあるチップ)が目的なので追いかける追いかける

  • そしてアレックスのたくみな操作によって転ぶ・轢かれる・煙に巻かれる・大わらわでボッコボコ

  • 残念ながらテープは抜かれていた…が、アレックスは泥棒の目的が「テープ」ではなかったことに疑問を覚える

  • ラジコンを分解。見つけたチップに「空軍」と書かれていたので、空軍(厳密には隊員募集事務所)に連絡する(→これが後々解決につながるぞ!やったねアレックス!)

……で、アリスたちがラジコンカーの持ち主=アレックスと睨んだあたりで、お楽しみおしまい。

以上。もしかしたら厳密には《お楽しみ》の地点がずれているかと思いますが、概ねこんな感じかなーと思います。

で、眺め見ていただくとわかるかもしれませぬが……。

1~2のお楽しみが
「ケビンの悠々自適な数日間+その他もろもろ」なのに対して、

3は
「アレックスが泥棒をボコボコに、勝利に近づいていく!!」だったのです。

私がホーム・アローンに《期待》していたもの

ドラえもんのストーリーに、「ひみつ道具で僕たち私たちを助けてくれる未来の世界の猫型ロボット」を期待するように、
私はホーム・アローンに「ちびっこが悪い大人をボッコボコにする」という《お楽しみ》を期待して観ていました。

もちろん、1~2でもその期待には応えられているのですが、主に泥棒たちがコテンパンにされるのは第3幕になってから。
第3幕となるとクライマックス。もちろん尺としては一番短い(そのぶん内容は濃厚だけど!)

一方3はというと、前述の通り。ちびっこが悪い大人をボッコボコにするというシーンが《お楽しみ》フェーズをほぼすべて占め、もちろん第3幕ではこの《お楽しみ》を上回る、さらなるコテンパーンぶりがスクリーンいっぱいに広がるわけです。

ははぁ、だから「3が一番好き!面白い!」となったわけか。
と、1~3イッキ見後にソファでうんうんと納得していたのでした。

日本とアメリカの「おこさまおひとりさま事情」の違いもあるかもしれない

誤解のないようにお伝えすると、私の《期待》する《お楽しみ》に十分応えられていない1~2はダメ!!と言っているわけじゃあありません。

あくまでこれは「私(観客)が何に期待してこの映画を見たか?」という上での話になります。

3の《お楽しみ》が「ちびっこが悪い大人をボッコボコにする」だとすると、1~2の《お楽しみ》とは「幼いケビンが《ひとりきり》の時間を満喫したり《ひとりきり》の時間に翻弄される」という部分になりそうです。

「こんなに小さい子がひとりぼっち!?えぇ、どうなっちゃうの!?」
というのが、ホーム・アローン1~2に寄せられた観客の《期待》とも言えます。
(※なお《お楽しみ》セクションで描かれるのは、“登場人物にとって”楽しいことばかりではなく、あくまで“観客にとって”楽しいことなので、登場人物にとってはしんどいこともあります。念のため)

満喫…いやはやもう楽しそうですよね。プラザホテルなんて私も泊まってみたいわ、ひとりで。
翻弄…ひとりきりのときに悪い泥棒がやってくる。そりゃ怖いわ。

ただし。

この「こんなに小さい子がひとりぼっち!?えぇ、どうなっちゃうの!?」というやつ。日本においては、ぶっちゃけ映画への《期待》になるほどでもないのかな…とも思いました。

なぜなら、日本では「このくらいの年齢の子がひとりでお留守番」って、まあまああることだから。(私も両親が共働きだった時期は、首から鍵提げてましたしね…鍵っ子…)

どっこいアメリカの場合、この歳の子のお留守番は「ありえない」のだそう。

ネグレクトの定義や罰則は州によって異なりますが、一般にアメリカでは「13歳未満の子どもを一人にさせないこと」が常識となっています。家の中であっても、子どもを一人で留守番させていると、近隣住民からネグレクトの疑いをかけられることになります。

出典:https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2020/03/post-344.php

つまり、「こんなに小さい子がひとりぼっち!?」という状況、アメリカ視点で見ると、日本以上にどえらい「非日常」だったんですな…。

そりゃあ《期待》にもなるし、映画の中でケビンがヒャッハーするシーンだって「自分もちっちゃい頃こんなことしてみたかったなぁ~」という願望を叶えてくれる《お楽しみ》になるのかもしれません。

だってそもそもタイトルが「ホーム・アローン(家に一人)」だもんね。

そう考えると、ホーム・アローン1~2の泥棒二人組っていうのは、あくまで「家に一人」の男の子に与えられた試練の一つでしかなくて、

1を撮った当時の監督さんは、私のように最初から「泥棒がボッコボコにされること」を期待してる観客がいるだなんて予想してなかったかもしれない。

その証左になるかわかりませんが、ふる~い「ホーム・アローン」のトレイラーでは、泥棒撃退のシーンと同じくらい「ケビンがひとりでいるところ」「お母さんがなんとしてもシカゴに帰ろうとするところ」が盛り込まれていました。

たぶん、このトレイラーを一番最初に観ていたら、私自身も「ちびっこが家で一人か~。どうなるんだ~?」という《期待》で本編を観たかもしれません。

で、本編見終わったあたりで「もっとボコボコにするところを観たかった!!!!」などという物騒極まりない感想を吐いていたに違いありませんのです。はい。

…なるほど、それで3はああなったのか…???(情報不足)

それからこれは蛇足かもしれぬですが、そもそも「ちびっこが泥棒をボッコボコ(以下略)」という私の《期待》のしかたは、生粋のジャパニーズならではなのかもしれません。

だって日本人は他人が落ちるさま見るのが好きなお国柄ですもの。
(ざまあ系…)

↑そのへんについてはこの本で痛いくらいに実感しました。そのうち感想書く。

まとめ:ホーム・アローンについてがぜん興味が出てきた

以上が、今回私がメモしておきたかった、ホーム・アローン1~2と3の《お楽しみ》の違いについてのお話でした。

好きな映画のプロットを分解して眺めて見るのは楽しいし、またこうしてnoteに書いてまとめようとすることで、新たな発見もありますね。
※「おこさまおひとりさま事情」の項目については、最初からこの記事に書こうと思っていたわけではなく、書いているうちに気づいた点でした

すべては個人の見解・感想になりますので、みなさんはどう思ったか?など、コメントお待ちしております。
また、よければホーム・アローン好きの方からの補足や、こんな裏話知ってるよ! などの情報もお待ちしております。今回の気付きによってますますホーム・アローン好きになったので、そういうのめっっっっっっっちゃ知りたい。

さて、気づけば夕食の時間を過ぎている…ので、晩ごはんを作りに行ってきます。今夜は鶏肉そぼろと白菜の炒め煮にしましょう。

あなたの隣のシナリオライター的な奴、しむらおとのでした。


いただいたご支援は、今後の更なる創作活動のために活用したいと思っています。アプリゲーム作ったり、アニメ作ったり、夢があるの!(>ェ<)