お客さんは登場人物!ベイマックスから学ぶ”短くて楽しい”のつくりかた/シナリオライター12年生と観る最高の作品
本日のまとめ!(いきなりいきますなり)
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シナリオライター12年生のしむらです。いろいろ書くシナリオライター。とにかく作るのが好き。パンダも好き。レッサーパンダも好き。
あとねあとね、最近ベイマックスが大好き!!!!!
「ベイマックス」というと、「アナと雪の女王」の熱狂が冷めやらぬ2014年に公開された映画「ベイマックス」のほうを思い浮かべる人が多数かと思いますが、
実はベイマックスにはアニメシリーズもあるんです。それがこちら↓
映画「ベイマックス」で無事サンフランソウキョウを救ったヒロとベイマックス、そしてその仲間たちからなるヒーローチーム「ビッグ・ヒーロー・シックス」のその後の活躍を描くアニメーションシリーズです。Disney+でシーズン3まで配信されています。
(ちなみに「ベイマックス」というのは邦題で、原題は「BIG HERO 6」。原作は実はマーベル作品なんです。私もハマってから知った)
今日はこちらのアニメシリーズから学んだ「短くて楽しい脚本の“楽しい”つくりかた」について、私が最近気づいたことを書いていきます。
いつも次のようなやらかしをしがちな、自分のためのメモも兼ねて。
長いセリフ書きがち
説明セリフ書きがち
結果、お話が長くなりがち!!!!!!
・・・ひとつでも「あぁ~わかるぅ~」ってなったライターさんは私と握手。
※なお、ベイマックス・ザ・シリーズはYoutubeで1話が無料で公開されていますので、よければ観てください。ていうか観て。いっそこの記事読まなくてもいいから観て!!!!(ただの限界オタクより)
こんにちは!鈍器生成ライターです!!
近年は「消費の爆速化」が顕著です。
TikTok、WEBTOON、動画の倍速視聴など。忙しい現代人の娯楽の消費スピードはどんどんどんどん加速しております。
「スナックカルチャー」なんて言葉も生まれていることですし。
現代人は忙しい。ゆえに私も、「短く」「わかりやすく」「さくさく楽しませられる」ような作品を作ってみたい! ・・・とは思うのですが。
ご存知の方はご存知の通り、しむらは鈍器生成シナリオライターです。
ま、まあお話が長いのが一概に悪いとは言えないです実際先日書いたnoteはかなり長文にも関わらず100スキを超えて狂喜乱舞しましたありがとうございますでもアレももっと短くできなかったもんかと思ってはいるんですなぜならストップこういうこと書くから長くなるんだよね()
真面目な話、初めての著作やその後のライトノベル(上下巻)も、普通のラノベと比べたら大ボリュームでしたが、それでも相方も担当さんも面白いと言ってくださったし、恩師は私の長く書きすぎるクセを「味」と全肯定してくださいました。
けど、私というシナリオライターは欲張りだもんでね。これからも超スピード消費社会は続くことでしょう。むしろ加速するかも。
だから武器は増やしておきたい。
長いものも、短いものも、書けるライターに、なっていきたいのです!!
救世主「ビッグ・ヒーロー・シックス」!
そんなしむらが、近頃、欠かさず観ているのが、Disney+で配信中の「ベイマックス・ザ・シリーズ」。
夜、寝る前。頭の60%くらいで「短くまとめろや」壁とどう戦うかなーと悩みながら、残り40%でビッグ・ヒーロー・シックスの仲間たちの軽妙な掛け合いを眺め聞いていました。
すると・・・
面白くって、壁のことなどすっかり忘れてしまいました。
終
制作・著作
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PANDA
ごめんなさいふざけてないです続きあります聞いてください。
突然ですが、よく「テレビと会話する人」っていますよね?
テレビのニュース相手に「政治家はなにやってんだ」とか「火事!怖いわね~」とか言っちゃうおじさんおばさん、身近にいません?
実は私も昔っからその類で、ニュースには「えー」とか言いますし、アニメとかドラマとかでも楽しんでいると「まじか!(驚)」「そんなん悲しい…(涙)」「なんでやねん!(笑)」などと大声で叫ぶ・ツッコむ・爆笑してしまうタチです。
たとえば、ベイマックス・ザ・シリーズでは、愛すべきおとぼけキャラ「フレッド」の奇行に合いの手を入れがちです。合いの手っていうか、まさにツッコミ。フレッドがとぼけたことを言ったりやったりすると「なんでや」と言ってしまうこともしばしば。
その日も、フレッドが数々のおもしろ言動をするので、腹をよじらせつつ「ツッコミが追いつかない・・・誰か代わって・・・」とか思っていたら、
はた、と。こんなことに気づきました。
「・・・あれ? そういえばヒロたちは、フレッドの言動にツッコミを入れてないな?」
具体例として、同作のシーズン1-第12話「ヌードル・バーガー坊や」から2つのシーンを文字起こしして紹介。
書き起こしたシーンは、秒数にして56秒程度の内容です。短い!
先程もお伝えした通り、この2シーンでは、フレッドの言動に対して誰もセリフでツッコんでいないのです。しいていえば、ワサビがフレッドより正解らしい正解を口にしたときくらい。あとは基本みんな目線で訴えるか、スルーするかです。
フレッドに「なんでや」とツッコんでいる・リアクションしているのは、視聴者である私だけ・・・。
Q.もしも登場人物がツッコんでいたら?
検証のためにも、さっきのシーンにゴー・ゴーのツッコミセリフを足してみたらどうなるか、試してみましょう。
良作を汚すようで胸が痛みます。が、やります。
・・・こうして付け足してみると、かなり蛇足な感じを受けませんか?
(1)☆ゴーゴー「そんなこと言ってる場合!? 作戦を立てなきゃ、戻るよ!」
このセリフについては、状況に合わないフレッドのセリフに視聴者自ら「何言ってんねん」と感じてくれますので、ゴーゴーが言うところを描かなくていい気がします。また「戻るよ!」というのも、次で柱(場所)が変わりますので、「ああ、作戦を立てに戻ったんだな」というのは自ずとわかる。
(2)☆ゴーゴー「あのねぇ、フレッド・・・」
引き続き視聴者が「そこかよ!」と思い続けているのと、ゴーゴーがフレッドを睨みつけている絵もありますので、ゴーゴーの心中はほぼ100%察せます。なのでセリフ化しなくてもよさそう。
(3)☆ゴーゴー「はあ・・・」
2段ボケ連発でもう視聴者は「はいはい」とわかりきっていますので、ため息もなくてハニレちゃんのスルーで安定です。
つまり、このシーンにゴーゴーによるツッコミは「なくてもいい」。
完成品=ある種の正解を観た後だからそう感じる・というバイアスもかかってそうですが、意外とこういう「なくてもいい」台詞を流れにまかせて書いちゃいがちなのです。私というシナリオライターは。
もし↑が初稿のシナリオだとしたら、ここから少しでも尺を短くしたいとき、ゴー・ゴーのセリフは「これは言わなくてもわかるので、削りましょうか」と担当さんから言われるかもしれません。
毎回25分という短い尺で映画一本分見たくらいの濃厚な楽しさを提供してくれるベイマックス・ザ・シリーズ。
この作品を(フレッドにツッコみながら)観たおかげで、私は「シナリオを短く楽しくできるかもしれない、ひとつの考え方」のヒントを得ました。
それは、書きすぎるクセのある私にぴったりで、しかも結構楽しい「考え方」。
お客さんにもセリフがあると思って書いてみる。
シナリオの勉強中、よく「観ているお客さんの気持ちを考えろ」と言われました。これは、それをちょっとだけ具体的にして、もう一歩だけ踏み込んでみる考え方。
シナリオを書く時、私は頭の中で登場人物であるキャラクターたち"のみ"の空間を思い描きますが、
そこにもう一人の透明な登場人物としてお客さんという存在を置き、そしてその透明な登場人物には、シナリオには描かれない透明なセリフがある、という考え方をしてみるのです。
たとえば、先程文字起こしした2シーンでも、ツッコミは透明なお客さんが透明なセリフで言ってくれていることにして、シナリオライターはできるだけお話を前進させる描写だけを文字にします。
あるいは、ひとまず初稿は好きに書いてしまい、推敲の時に「あ、これは透明なお客さんに任せればいいセリフだから、削れるな」と考えて、削ってしまうのです。
さっそく役立ったエピソード
特に後者の「お客さんに任せればいいセリフだから削れる」というのは、後日、ある漫画原作の原稿の修正をしていたときに早速役立ちました。
発表前の作品なのでモノホンの原稿は載せられませんが、フレッドに代役してもらうとこんな感じの修正内容。
修正により、真ん中の「そう思ってたんだけどなぁ・・・」は、削りました。
このほうがどちゃくそテンポもよくて、暗転を挟む必要もなくなり、コマを削ることができました。
「そう思ってたんだけどなぁ・・・」は、別になくたって大丈夫。前のセリフと次の展開を見れば、お客さんから一発で「そう思ってたけどダメだったか!!」というリアクション・感情を引き出せるから。
「観ているお客さんの気持ちを考えろ」の考え方について
ちょっとだけ本旨から脱線。
「お客さんにもセリフがあると思って書いてみる」は、「観ているお客さんの気持ちを考えろ」をちょっとだけ具体的にして、もう一歩だけ踏み込んでみる考え方です。
「観ているお客さんの気持ちを考えろ」という教えは、とりあえず頑張ってお客さんの気持ちを考えようとするのではなく、まずその「考え方の考え方」を考えることが必要だと感じています。(ややこしいけど伝われ・・・)
「観ているお客さんの気持ちを考えろ」
↓ 具体化
「お客さんにもセリフがあると思って書く」
これが私に合った「正解の考え方」だったみたいです。これまでいろんな考え方を試してきたけど、これが一番性に合ってると感じた。たぶん、楽しくて書きすぎちゃうクセを持つ私が「書いちゃ駄目だ書いちゃ駄目だ」みたいにならずに済むからではないかと思います。
ちなこの「考え方」は、ライターさんの数だけハマる考え方がありそうです。例えば、私が尊敬するパフォーミングアーティスト・小林賢太郎さんは、著書の中で次のように語っていました。
おそらく、これが小林さんなりの「観ているお客さんの気持ちを考える」ための考え方なのかもしれません。
まとめ
というわけで、最後脱線しつつも本日のまとめ!
とはいえ、これでもまだまだ長いもの書きがちな私。削れるものは楽しく削り、「短くて楽しいもの」を作れるよう、これからも勉強する次第です。
ベイマックス・ザ・シリーズとフレッドには感謝しかない。バララララララ!(グータッチしたい!)
追記:海外作品は、短くまとめる工夫の宝庫かも
あと、これは後日別途書きたいことなのですが、そもそもベイマックス・ザ・シリーズは海外作品であり、脚本は英語で書かれています。
映像翻訳の記事で読んだのですが、英語と日本語では1秒に含められるワード数も全く違いますから、「セリフを短くする工夫」というもふんだんに盛り込まれているようなのです。
依然として「短く」「わかりやすく」「さっくり楽しませる」ことを研究している私ですので、次回は海外作品→翻訳の工夫についても勉強しようかなと考えています。