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場所が自分を変えてくれるんじゃなくて、自分でアクセスしにいく。

有限会社海士物産海士支店で働きながら、大学時代の友人たちが起業した合同会社FUngo(ファンゴ)でも業務を担っている、空本さんと井上さん。大人の島留学に参画しながら、あらゆる分野で活躍されています。

日々、どのような仕事に取り組んでいるのか、1年間の離島暮らしを経験して感じたことをお聞きしました。

左:空本さん 右:井上さん

海士町との出会い

初めて海士町を知ったのは、大学時代からの友人であった井出さんと實重さんの紹介からでした。2020年度の大人の島留学に参画していて、一足先に海士町に訪れている井出さんと實重さん。

そんな井出さんと實重さんが参画していた頃、一度島に遊びに来ていた空本さんと井上さんは、この4人のメンバーで一緒に島で仕事をすることに魅力を感じたそうです。


空本さん:
「もともと予定していた就職先も自然豊かなところで、自然に囲まれた暮らしがしたかったんです。だから、この島も魅力的でした。それに加えて、友人たちと一緒に働く機会はこの先ないのかなと思うと、「今やるしかない!」と思い、就職を辞退して、海士町に来ることにしました。」

どんなことも仲間たちで挑戦できるなら、それが一番楽しく暮らせるし、幸せな人生だと思う。その時やりたいこと、住みたい場所を自分で選択することは、今逃すと、これから先簡単に行動に移せない気がしたといいます。

井上さん:
「僕もほとんど空(空本さん)と一緒です。この島が楽しそうでした。色んなものを天秤にかけたけど、やっぱりこの島に行くことが勝った。ほかの環境もほかの経験も考えつくしたけど、離島で暮らすという想像してなかったことを選ぼうと思って。」

初めて2人が島に訪れた日。海が印象的で、ジオパークの景色が広がる海岸はインパクトがありました。今まで見ていた地元の景色とは違った新しい空間でした。



製造と販売を振り返って

お2人は海士物産海士支店を中心に仕事に取り組んでいました。こじょうゆ味噌、海士物産のしいしび(白イカの一夜干し)、さばめし、コロッケなどの加工品の製造や小売店への配達などをしていました。

そんな中でも、特に「こじょうゆ味噌」のパッケージ変更に力を入れられていました。こじょうゆ味噌とは海士町の各家庭で作られていた味噌のこと。醤油蔵がなかったこの島内で、醤油替わりに作られた伝統調味料です。

このパッケージ変更を慎重に行い、予算と時間との兼ね合いからベストにたどり着くまでには多くのことがありました。

空本さん:
「僕たちがイメージしていたデザインと、デザインのディレクターさんとの間でイメージしているものの、すり合わせがうまくいっていませんでした。

僕たちが思う海士町の良さは、田んぼもあって、畑もあって海も魚もあって、自然がある。だから人が集まっていて、楽しくおもしろい島になっているんじゃないかって。シンプルよりも、ごちゃごちゃしている。それを表せたらいいと思っていました。」

ですが、ディレクターさんは海士町に訪れたことがなかったため、お2人の言葉だけでは、上手く伝えることができませんでした。

そこで、実際にディレクターの方に来ていただき、海士町の雰囲気やお2人の空気感を直接感じてもらい、新しくデザインを作成。今のパッケージへと生まれ変わりました。

こじょうゆ味噌とツーショット

井上さん:
「デザインに関して無知なことばかりで、実際に雰囲気を感じてもらうことの大切さを知りました。画面越しと現地は大きな差がありました。

デザインだけじゃなく、商品という形あるものを提供するために、ビンの形も蓋の色も文字も幅も、全てに過程があって、意味があって。一つ一つの作業の中に、伝えたい想いがこもっていることを初めて知りました。」



たくさんの人に出会って自分のことがわかった

大人の島留学に参画して1年が経ち、様々な経験を通して、空本さんは大学時代よりも関わる人数、幅、年齢層が変わり、自分の長所、短所がよりわかるようになったといいます。

就職活動でずっと考えていた自分自身のことが、この島に来て人と関わることでよりクリアになったそうです。

空本さん:
「自分が良い・悪いと思うことと、他人が思うことにそれぞれ違いがあって。小さな離島だから色々な人と出会いやすくて、自分という人間がわかりやすくなったのかなと。自分の考えもしっかり持って、染まるところは染まって大人になっていきたいと思いました。」

一方で、井上さんはこの1年間で改めて仕事の難しさ、したいことと、できなかったことのギャップに苦しんだといいます。

井上さん:
「1年を通して、あまり成長できていないかもしれません。仕事に関して、0の状態ではじめてから、旬のもの、販売計画など学ぶことが本当に多かったです。

だけど、あれやこれやと長い時間学んで、知れば知るほど、立ちはだかる壁があって。結局残せたものは多くないと感じています。ネガティブな意味じゃなく、これが真っ当な評価だと思っています。」

改めて井上さんにとって大変だった部分は、些細な報告・連絡・相談が難しかったということ。色んな人と関わりながら、事業内容を進めていく仕事だから、怠ってはいけないと感じたそうです。



大人の島留学生同士のつながりで

お2人にとっても大きな挑戦となった出来事がありました。それはまるどマーケット(海士町で行われているマルシェ)に出店すること。

出店のきっかけは、働いている海士物産をもっと海士町民に知ってもらうためでした。取り扱っている商品を使って、料理を出店できれば、宣伝になるんじゃないかと思い、立ち上がった2人。

空本さん:
「今まで、海士物産松江店が毎月サザエご飯とか、だし巻き卵とかを出店していたそうで、その時に出してたサザエコロッケをまるどマーケットでも出店することにしました。

今まで作ってたから難しくないし、まるどマーケットのコンセプトに合う日常の延長にあるものだなって。松江店にも出店できる在庫にもなるので、良い案だったと思います。」

そのあとも毎月まるどマーケットに出店していると、好評で、港にある島じゃ常識商店の店内にも並べることになりました。

井上さん:
「冬に向けて、島じゃ常識商店で今までにはないおかず(ホットスナック)を出したいという話になっていたようで、声をかけていただきました。もともと島内で販売できると思っていなかったからうれしかったです。

大人の島留学生たちが、常識商店の店長に掛け合ってくれたそうです。ありがたいですね。」

空本さん:
「海士物産で働きはじめるときにいただいた「海士での動きを作ってほしい」というミッションの一つをクリアしたかなって思っています。これからも継続していきたいです。」


1年間は馴染むこと。つぎに向けての挑戦。

休日には、釣りをしたり、キャンプしたり、季節を大事にして栗拾いに出かけたり、散歩に行ったり。満喫した島暮らしをしているそうです。

1年間の大人の島留学は修了しましたが、お二人はこれからも海士町で働き暮らす予定。それを踏まえて、海士町1年目の今年は、どんな日々だったのか振り返っていただきました。

空本さん:
「1年間を海士町で暮らしてみて、「何もしなければ何も得られない」のは、どこに行っても同じだと思いました。場所が自分を変えてくれるんじゃなくて、自分でアクセスしにいかないといけない

この1年間は知る・馴染むことに必死で、今振り返るともっとできたことはあるだろうなって。仕事!と考えて、気を負いすぎるのも悪循環になると思うけど、「何かしよう」と思わないといけないなと思います。難しいですね。

でも海士町の四季を知って、なんとなく過ごし方が分かったので、次はこうしてみたいと楽しみがことも多いです。」


井上さん:
「僕も、最初は慣れる感覚を重視していて、しばらくは海士町を感じることを大切にしていました。ですが、そこからの切り替え、自分たちから動くのはいつが正解だったんだろう、と今思っています。

受け身で過ごす時間が長かったかもしれない。自分たちで手を挙げてやっていくことを意識したかったですね。」

次に向けて、空本さんと井上さんは、海士物産の動きを中心に、今ある商品を広げ、生産数を増やし、SNSを運用することに力を入れていくそうです。

空本さん:
「純粋に生産のために、人も、パワーもすごく必要だと分かりました。
お金かせぐって難しいですね(笑)まだまだ頑張りたいと思っているからこそ、反省するところを改善していきたいと思います。」



おわりに

この1年間は、1年間という時間だけで終わらないもの。
学びになって、経験になって、記憶になって。この日々が長い間少しずつ活かされていくのだと思います。

次はどうしてみようか。そうやって、前を向けるようになる。
大人の島留学に参画してみませんか。


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最後までお読みいただきありがとうございました!


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