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自分が求めていた以上のものがここにはある。森と、人と向き合う3か月間。

もっと自然に近い暮らしに寄せたくて、移住先を探すために大人の島留学へ。
森と、人と向き合い続けることで受け取ることがあった。
3カ月が終わろうとしている今、彼女はどういう思いで島にいるのでしょうか?

島根県の離島、隠岐島前地域で大人の島留学に参画している
10月生の「今」にフォーカスした「私たちの足跡」。

彼らはどんなきっかけで島を知り、
今、どんな想いを抱えて島にいるのでしょうか?
10月生一人ひとりが歩んでいる物語、そしてその足跡をお届けします。

大人の島留学10月生として海士町に来島。
隠岐島前森林組合で働いている後藤千佳さんにお話を伺います。

後藤千佳さん 東京都出身 21歳

もっと自然な暮らしに寄せたい。私に合う場所を求めて。


これまでは義足をつくる専門学校に行っていて、今は休学中です。
地元の東京から出て、「どこかに移住しよう」とずっと考えていて。

中高時代の6年間は電車通学をしていたんですけど、ずっと満員電車に乗って通うことに無駄なエネルギーを使うというか、あまり自然な生活じゃないなって感じていました。
そのことに違和感が出てきてから、昔の人の生活や考え方に興味をもつようになって。
幼少期にも長崎に住んでいたことがあって、平和学習として太平洋戦争のことを学んで、どうしてこんなことになったのかをずっと考えていたことも繋がっているのかもしれません。
自分の生活も、自然に近い暮らしに寄せていきたいという想いがあったので、東京での暮らしはもういいかなって感じていたんです。
そこで、SMOUTという移住先を探すサイトを見ていたときに、大人の島留学の制度を見つけて。

ちょうど、9月にはアルバイトを辞めて、10月から新しい場所に行こうと決めていたので、ぴったりだなって思って。
移住先を決める一つ目の候補として海士町に来ました。

島に行くまでは、そもそも田舎暮らしも分からないのに、離島での暮らしはさらに想像がつかなかったから、不安というか未知だなって感じていたけど、みんな楽しそうな雰囲気でやってるし、「なんとかなるだろう」とは思ってたから、そこまで不安や心配はなかったかも。

ご近所さんの温かさに恵まれながら、暮らす。

実際に島に来てみて、島ってもっと閉鎖的だと思ってたけど、来島してすぐ近所の方に挨拶周りに行ったときに、すごい気さくな方に興味を持ってもらえたのがすごい印象的で、うれしかったです。
みんなで何回か釣りに行ったり、干し柿作りたくて、干し柿を作らせてもらって。

ご近所さんに教わりながら。

他にも、魚の卸し方とか、イカの捌き方とかを教えていただいて。ここまで体験できるとは思ってなかったから、とても周りの方たちに恵まれたなって感じています。

私は、宇受賀地区に住んでるんですけど、ちょっとふらっと行けるところにすごい綺麗な景色が広がっているのが、島ならではの贅沢なところだなって感じるし、あまマーレでも何をするとかではないけど、雰囲気がよくてひとりでいられる場所が多くて、そういうところが良いなって感じています。

満点の星空がきれいでした

山にいる時間を長くしたい。自然と向き合う環境から、受け取るもの。

私は、隠岐島前森林組合で働いています。


今の季節は、たとえば「この土地にスギを植えたい」と思ったら、生えている他の木を切って、綺麗にしたり。
等間隔にスギを植える作業をしています。

もともと、昔の人の生活や考え方に興味があったことをきっかけに山岳信仰をもっと知りたいなと思うようになったんです。
とにかく、山にいる時間を長くして、小さなことでもなにか気付きがあれば良いなと思って隠岐島前森林組合で働くことにしました。

現場では結構土地が広いから、みんなばらばらで作業をすることが多くて。
時には歌いながら、自分のペースで仕事をしています。
やりがいを感じることは自分がやったことが目に見えて分かること。
前に進めないくらい、うっそうと茂っていた草を全部刈ることで、見通しが良くなって、太陽の光が入ってくるとすごい気持ちが良いです。

牛が草を食べにきたり。

一方で、現場に行くまでの道が山道で大変なのもそうだし、命の危険と隣り合わせの環境で。
ちいさな枝ひとつでも、落ちてきたら結構な衝撃だし、破片が飛んできたりとか、防ぎきれないものがある。普通に危ないっていうか痛い。
それこそ木、一本でもどこに倒れるかは蔓の生え方とか、枝の重さで全然違って。
現場の方たちもみんな「神頼みだよね」っておっしゃるくらい、想像がつかないのが怖いです。

でも、他の仕事じゃ得られないような感情を受け取ることができるなって思っていて。

もともとは誰のものでもなかった山を、人間が管理しようとして、今は「林業」という形でやっていて。
自然は人間の思い通りになる部分ではないから、自然のものに対して、ひとつずつ測ってスギを植えたりしても、計算通りにはいかないし、どこかでズレや歪みは起きてくるから、そこは難しいなって感じています。

手探りながら、山と真剣に向き合い続ける。

もっと葛藤が少ないと思っていました。
仕事の面でもっと機械的にというかマニュアルにしっかりと沿ってみんな仕事しているんだろうなって。
商売だから、そういうものだろうと思っていたけど、山のことを手探りで考えながら林業をしている皆さんの姿勢や考え方を私が欲しいと思っていた以上に教えていただいて。

3か月間仕事をするなかで感じる、皆さんの山に対する気持ちみたいなところを感じて。
「あとちょっとで死ぬところだった」という声を聞いたり、実際に骨折された方もいらっしゃって。
だからこそ、みんな真剣にやっているし、そこに対する恐れみたいなのをみんな持って向き合っている姿が私は好きだなって思います。

自然のこと、人間の生活のことを考えながら、仕事をしていて考えさせられることが多いです。

自分が求めていた以上のものがここにはある。3か月が終わりに近づく今、感じていること。

特に、自分に大きな変化はなかったです。
でも、「あぁ!これこれ」みたいな自分が求めてた以上のものがここにはあるなっていう確信があって。
変化じゃないけど、自分がこうなるであろうと思っていたようになれてる気がするし、なにかが変わりつつあるなっていうのは感じています。

海士町で、三味線を習い始めました

「意外とやっていけるな」って思えた3か月間でした。
暮らすなかで自分にスキルがなくても、「これがやりたくて…!」と周りの人を頼ったら助けてくれる人がいて。
仕事も、何の経験もなかったけど、一つひとつ小さなことから初めていくことで少しずつついていけるようになって。
なんとかなるんだなって思えたから、やってみてよかったなって思っています。
ただ、やっぱり3か月ってちょっと短くて。
ようやく関係性が作れてきて仲良くなれたのに、終わってしまう。3か月だからこそ得られるものもあるけど、ここからまた進めるだろうなっていう予感もあるから、さらにもっとって欲が出てきてしまう。
築いた関係性が切れちゃうんじゃないかって感じて、少し寂しいです。

新たな土地を求めて。本土の森も見てみたい。

これからは、また次の移住先を探しにいきます。
仕事は、やっぱり森に関わることをやりたいって思っていて。
島の森と、本土の森だとまた違うと思ってるから、本土の森も見てみたいなって思っています。
あとは今、木を使った商品開発をしてみたくて。
木を薄く切ったもので包んであるおにぎりが私はすごい大好きで。
森の木を活用することも日本全体の課題になっていると思うので、そういうことにも携わっていきたいです。

実際にちかちゃんが働いている現場に行ってインタビューをさせていただいて、現場にたどり着くまでの道が本当に道なき道でした。足を滑らせたら、そのまま転げ落ちてしまうんじゃないかと思うくらい怖くて、本当に命の危険と隣り合わせな仕事をしているんだなと。「恐れみたいなのも含めて自然と向き合っている皆さんの姿が私は好きなんだ」と話すちかちゃんがとても印象的でした。インタビューさせてくれてありがとう~!

あとがき~インタビューをしてみて~

(R6年度10月期島留学生:山口)

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