直感で島体験へ。「食」を通して見つけた私のアイデンティティ。
岡村春奈さんにお話を伺います。
もっと地域に関わってみたい。海のある離島、海士町へ。
大学では1回生のときに、
NPO法人の方へお話を聞かせてもらったり、学校の学びと社会問題を絡めた企画やブログの発信することをしていました。
人の想いや体験を文章に書くお仕事にやりがいを感じるようになって。
大学3年生からは、就活のために世間から求められる人物像を求めて、やらなければいけないことに重きを置くように。
「このままでいいのかな」
難易度の高い業界に入りたかったこともあり、就活で求められる人物像を求めていたので、だんだんと自分という人間がどういう人なのか分からなくなった。
「自分はどんな人なのか?」「社会で求められる人物像ばかりを追い求めてていいのか?」「理想のキャリアは私にとって幸せなのか?」
大切な人が亡くなったことも重なり、漠然とした不安に襲われて、なにをするにも無気力に。
そんなときに一度立ち止まって、自分のやりたいことをする時間、自分の本音と向き合う時間にしよう。
そう思い、不安もあったけど大学を休学することにした。
休学期間中に、色んな地域をめぐっていると、自分の地元のことが好きで、愛着を持って仕事をしている人。
せっかく良い場所なのに、地方の仕事の担い手不足や、綺麗な観光地の裏には閉められた商店街や、ひとけのない住宅街。
そんな人との出会いや、見える景色を通して、
地方に住む人の存在や暮らしを意識するようになりました。
そういうものを見ているうちに、思うようになった。
「もっと地域に関わりたい、日本って良いな。」
私は海の街で育ったので、自然と海って近くにあるもので。
海のある離島・地域と関わってお仕事できる場所を探していたんですけど、
そのなかで海士町を選んだのは結構、直感でした。
馴染みのある海、離島という環境。
でも、新しいことに挑戦できるのではないか。
そう思い、どんどん惹かれていって。
ひとりで地域に飛び込むことに不安はありました。
でも、同期の子たちと一緒に行って、仕事や暮らしができることに
魅力を感じ、島体験に参画することにしました。
自分の「好き」を仕事へ。そして、感じるギャップ。
もともとは人の想いを伝えたり、自分の良いと思えることを文章や写真を通して伝えるお仕事がしたくて。
でも、「広報はどこにいってもできる」と言われたので、「好きなこと」を軸で選ぼう。
そんなときに、ふと思いついたのが「食」の分野でした。
大学生になってからは、コロナ渦だったので家にこもってスパイスカレーの研究や、和食に目覚めて出汁から料理を作ったり。ときには飾り切りの調理技法を練習しちゃったり。
料理を作ることが楽しくて、どんどん料理の奥深さにのめりこんでいきました。
「なにをしてもいい」という休学期間で、自然と身体が動いてしまう。
それが、料理を作ることや、食べることでした。
なので、就職する前に一度、食を中心としたお仕事がやってみたかったんです。
「食」という好きな分野でやりがいをもって働けそうなこと。
「食」の分野に関わって、どんな働き方ができるのか、体験を通して知りたい。
そう思い、「食を起点とした港のにぎわいプロジェクト」で働くことにしました。
ーー実際働いてみて。
食プロジェクトの目的は、セントラル亭を中心に港のにぎわいをつくること。
私は、新メニューを考えたり、地域に根差した食の分野に関われることをしてみたかったけれど、そういう機会があまりなくて。
「なんで島体験で来てるのにアルバイトみたいなことをしてるんだろう」
実際に求められる方向性が、自分がやりたいと思ってたこととは違う。
ギャップをひしひしと感じて、「なんのためにいるんだろう?」と考えてしまうくらい、しんどい時期がありました。
でも、セントラル亭での業務では、他のプロジェクトメンバーや社員さんともお話ができる機会がとても多いんです。
関わるうえで、互いにどんな人か知ること、知ってもらえることで信頼関係も生まれていくことにやりがいを感じて。
そして、社員さんがお褒めの言葉をくれたり、「ありがとう」と言われることが多くなったり。すごく働きぶりを見てもらえてる感じがしてうれしかったし、頑張ろうと思えました。
そう考えると、お仕事は、人と人との信頼関係や繋がりが大切なのかなって思っています。
目の前にある仕事に向き合うことで気付くもの
「ゼロからなにかができないか?」考えて案をだしていくプロジェクトの人たち。
ほんとにゼロからイチを生み出すことはすごくむずかしくて。
でも、「自分から意見を言おう」、「自分からなにか働きかけよう」
というのはすごく意識していました。
提案した企画がすべて通ったとか、上手くいったわけじゃなかったけれど、
「夜の営業でカフェをしたらどうか?」って提案をしたときに、
「コワーキングを始めようと考えてる子がいるから、一緒にやってみなよ」
と言っていただけて。
一緒に始めることになりました。
少しずつだけど、「こうやってみたら面白そう」って私が思っていることが繋がっているなって感じてて。
いろいろ自分の考えを伝えてみてよかったなって思っています。
ただ、これが自分のやりたいことかっていわれると、まだ正直よくわからない。
でも、この3か月を過ごすって考えたとき、
「やりたいことと違ったからやりたくない」という考えで、済ましてしまうのはすごいもったいないなって。
まだまだ分からなかったり、知らないことだらけ。
だけど、
「目の前にあるものをやろう」
「目の前にある課題にちゃんと取り組もう」
そう思えるようになりました。
今は、最近始まったコワーキング営業もまだ手探りな状態なので、利用者の方や島民の方のニーズを把握して次に繋げられるように、なにかを残せるように。
もっとがんばりたいし、働くなかで「これだ!」というものを見つけたいですね。
なので、今は目の前にある仕事にしっかりと向き合って取り組んでいきたいです。
ただ一緒にいるだけ。それだけで心が満たされる暮らし。
シェアハウス生活はほんとに楽しいです。
シェアハウスメンバーはすごく何気ないことから将来の話まで、なんでも話せるなってすごい思ってて。
特に、初めてシェアハウスメンバーで週末を過ごした時間が印象に残っています。
ソフトクリームを食べて、海で遊んで、のんびりとたそがれて。
島ならではの、なんでもない休日を過ごせたかなって。
すごい物がありふれているわけじゃないけど、友達がいて、海があって、ゆっくりと過ごせる場所がある。
ただ一緒にいるだけで楽しいなって。波長が合うなって感じて、3か月間やっていけそうだなって思った時間でした。
そして、一緒に過ごしていると、それぞれからたくさん学ぶことがあって。
自分に素直な人、自分の考えを持ってる人、周りのことを見て行動できる人、分からないことがあったら自分から話しかけにいける人。
仲良い友達でもあるけど、それと同時に尊敬できる人たちだなっていつも思っています。
島体験の期間が終わってから
今回は「食」という自分が好きなことの軸でお仕事をしてみました。
3か月を通して、上手くいくこともあるけど、上手くいかないこともたくさんあって。
なにが向いているのか、向いていないのかは3か月だけでは分からないことも多い。
けれど、やってみたからこそ学ぶことや吸収できたことはたくさんありました。
そして、「好きなこと」を仕事にしたおかげで、みんなから「食が好きな人」として覚えてもらえて。
シェアハウスで料理を振舞ったり、みんなでお菓子作りをするときは真っ先に声をかけてもらえたり。
島に来たときは、「私、覚えてもらえるかな?」
そう思えるくらい、あまり自分は個性がないんじゃないかと思っていたんです。
でも、3か月を通して「食」が私のなかでひとつのアイデンティティになっていました。
そして、「食」といっても、いろいろな関わり方があることも知りました。なので、今度は自分が「やりたい、得意なこと」にフォーカスを当てて、お仕事を探していきたいです。
(R6年度7月期島体験生:山口)
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