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【人生相談 駆け込み寺】第14回「周りが不潔に思えて仕方ない」

浜の真砂は尽きても、世に悩みの種が尽きることはありません。いったん落ち着いて、胸に手を当ててみたりもして、果敢に無難に乗り越えていきましょう。※「夕刊フジ」で2016~2018年に連載(全17回)

【今回のお悩み】今年の冬、人生で初めてインフルエンザになりました。手洗いもうがいもキチンとしていたので、誰かにうつされたに違いありません。そう思うと、身の周りが不潔に思えて仕方ないのです。電車で、マスクをしていない人間を見ると気持ち悪いし、素手でつり革を持つのが嫌なので常に手袋をしています。会社でもしょっちゅう除菌ティッシュで机をふいています。同僚は「やり過ぎじゃないの」と言うんですが、潔癖ってそんなに悪いことでしょうか。(会社員・男性 37歳)

 臆面もなく「清潔」という正義を振りかざしている人に対して、遠回しな言い方をしても、たぶん伝わらないでしょう。なので、ストレートに言わせてください。

 自分では「潔癖な俺、カッコイイ」と思っているかもしれませんが、率直に申し上げて、かなりカッコ悪いです。控え目に申し上げても、けっこう気持ち悪いです。しかも、しょっちゅう除菌ティッシュで机をふくのは、周囲をバイキン扱いしているも同然で、失礼な態度でもあります。

 なぜ、カッコ悪くて気持ち悪くて失礼なのか。それは「自分を棚に上げている」から。しかも、それに気づかず正義は我にありと、マヌケにドヤ顔をしているから。

 ご承知のとおり、人間は身も心も菌にまみれている存在です。インフルエンザのウイルスにしても、あちこちに漂っていますから、たまにかかるのは仕方ありません。あなたが菌を運んでしまうこともあるでしょう。

「自分は清潔だ」と言い張るのは、男女関係や人間関係のトラブルを一方的に相手だけのせいにしたり、仕事がうまくいかなかったときに、「俺は悪くない」という顔で、すべての責任を他人に押し付けたりするのと同じようなもの。きっと同僚は、あなたの想像の何倍も不愉快に思っています。

 どうしても我慢できなくて除菌ティッシュを使うなら、そういったことを承知の上で、後ろめたさを覚えつつ申し訳なさそうに使いましょう。同僚だって鬼ではありません。多少は大目に見てくれるはずです。

 今の調子では、あなた自身が周囲からバイキンのごとく扱われる日も遠くありません。

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