【人生相談 駆け込み寺】第8回「他人がうらやましい」
浜の真砂は尽きても、世に悩みの種が尽きることはありません。いったん落ち着いて、胸に手を当ててみたりもして、果敢に無難に乗り越えていきましょう。※「夕刊フジ」で2016~2018年に連載(全17回)
【今回のお悩み】昔から他人の家庭がうらやましく思えて、仕方がありません。近所の人と話しても、ご主人の年収や子供さんの学校の話を聞いては、自分と比べて、「私は不幸だ」と落ち込んでしまうのです。比べてもしようがないということは分かっています。でも、どうしても気になるのです。母も同じような性格だったので、「もしかして遺伝?」と思っては落ち込んでいます。ネガティブ思考になるのが嫌で、最近は近所づきあいも控えています。(主婦 47歳)
比べてもしょうがないのはわかっているのに、比べてしまう……。きっと楽しくて気持ちいいから、なかなかやめられないんでしょうね。
「そ、そんなことない!」とムキになって反論されそうですが、隠すことはありません。人と比べて落ち込んでいるあいだは、かわいそうな自分に同情しつつ、努力を強いられないぬるま湯につかっていることができます。
何だったら、自分より恵まれない人を比べる対象にして、「ああ、自分はまだ恵まれている」と安堵したってかまわないはず。それをやろうとしないのは、ふとした拍子に虚しさやプレッシャーを感じて、安心して気持ちよくなれない予感がするからではないでしょうか。
遠慮しなくてお大丈夫です。好きでやってるんですから、他人の家庭とどんどん比べましょう。どうせなら、幸せそうな芸能人一家や、あるいはケタ外れにお金持ち石油王やハリウッドセレブと自分を比べて、「ああ、私はなんて恵まれていなくて不幸なんだろう」と、力いっぱい落ち込んでみてはいかがでしょうか。
そんなスケールの大きい比較を半月も続ければ、落ち込むのもだんだんバカらしくなりそうです。同時に、近所のどの家庭を見ても、しょせんは似た者同士で目くそ鼻くそと思えてくるでしょう。今は気が進まない近所づきあいも、恵まれない同士の連帯感を覚えながら、ポジティブ嗜好でこなせそうです。
もし、そういう境地になれなくても、落ち込む必要はありません。自分は結局、落ち込むのが気持ちいいから落ち込んでいるんだと開き直れば、必要以上に深刻に思いつめずに済みます。