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第8話 メンエス事件簿#1 初めての出禁

新シリーズ「メンエス事件簿」にお越しいただきありがとうございます。

今後はメンエスで起きた珍事件や出禁ファイルをみなんさんと共有していきたいなと考えています。

最初の事件はぼくが判断した初出禁のお話です。

この初出禁に関しては、10年経った今でも辛い思い出として胸に刺さったまま風化することがありません。なぜなら、初めて出禁にしたお客様は、なんと前号で登場した大恩人K氏だったのです。

オープン直後の大ピンチ時代、毎日大金を使って救ってくれた救世主K氏をなぜ出禁にしなければならなかったのか、、、

実はK氏、セラピストさんから少し怖い印象を持たれていたんです。前に少し触れましたが、デスノートのLっぽさが女性から見ると怖く映るようで。

たとえば、セラピストさんが席を外した時に音もなく背後に立っていたり、突然無言でガバッと起きあがろうとしたり、施術室に閉じ込めようとしたり、、、

どうやら女性が怖がる様子が好きみたいで、意図的にそのような行動をとるようです。

その上、毎日のように長時間指名されるとなると一層恐怖感が増すという声を在籍セラピストさんから聞くようになりました。

そこで、K氏に話をしました。
長時間の件や、怖がらせないように配慮願えないかなど。

しかし、セラピストさんからの相談は増えるばかりでした。

さて、どうしたものか、、、
恩人への義理
売上も欲しい
セラピストさんの働きやすさも考えたい

どれを取っても痛みが残ります。
考えている間にも新人さんを指名され、すぐに辞めてしまうということも起こりました。

そして、よくよく考えた末の決断
「K氏出禁」
断腸の思いとはまさにこの時のことだなと今になって思います。

さっそくK氏に出禁を伝えるため電話をしようとしました。
ですが、最後の1桁まで押しては消し。
また最後の一桁で消し。
これを1時間ほど繰り返していました。

21:00ころ
場所は渋谷明治通り沿い
雨あがりの路面に街の光が反射する13番出口。
メトロポリタン前に車を停めて。

約2時間の会話でした。
お互いに思いをぶつけ合い、込み上げるものが言葉を詰まらせる。
長い沈黙と、長いため息。
背中に滲む汗。
銀色のボーダフォン。

K氏
お宅のお店が大好きだったんだよ

ぼく
よくわかってるんです
感謝しかありません

K氏
わかりましたと言うしかないんですね

セラピストさんの働きやすさを選んだぼくは、
それがお店の存続に繋がるという経営判断をしたのでした。

綺麗事では済まされない
生々しいやり取りでした。
K氏と話した2時間
それと同じ2時間
ぼくはその場から動けませんでした。

K氏本当にありがとう、感謝してます。大袈裟ではなくあなたのおかげで今も生きています。

そして、本当にごめんなさい。


メンエス事件簿 初出禁


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