時短と時長。
「太郎は恋の中よ」と乙姫は風の歌を謳う。竜宮城の歓待に酔った太郎は、過文に過ごした時間で目覚めるべき開眼時間を寝過ごした。寝坊太郎になった太郎は、夢ゆめ控えめ気がかりをアブクのごとく湧出したやもしれないが、アブクは露と消えるもの、酒池肉林、妖艶、美酒美女美食に大事なところを握られて、離れたくても離れるのが惜しく寂しく、欲が悪魔となって囁くものだから、ついずるずると。
ずるずると高速移動の星に乗り、長時を光陰の矢となって駆け抜け、戻った。
楽しい時間は瞬きの間で終わる。閉じた瞼を直後に上げれど、景色の移ろいは幾光年。望まぬ時短は、現実社会で悠久の末路を告げていた。
恋は経過にも盲目であった。
時間は伸び、そして縮むもの。そのループに踊らされ続けるわたしたちは、いつだって恋の中に生きているようなものなのだ。