宇宙にもっとも近い場所でビールを醸す 種子島ブルワリー からはな
終わらない探査
種子島は、日本において、宇宙にもっとも近い島だと言われている。
その所以は、人工衛星やロケット打ち上げの中心地として名高い、種子島宇宙センターがあることが大きいだろう。
青と白のコントラストの、美しい砂浜海岸に囲まれたところに位置するため、世界一美しいロケット発射場とも言われるほど、種子島と宇宙は深く関わっている。
そんな宇宙に、ガガーリンが1961年4月11日に人類初の宇宙飛行中に青い地球を見てからおよそ60年もたつが、いまだに謎多き宇宙。
真っ黒で、あるのかないのかよく分からない様なそれは、今もなお人類の好奇心を掻き立て続ける。まるで終わりの無い探査だが、どうしてか人を惹きつけてしまう。
思えばビール造りにも似た様な節があるのではないかと思っている。
終わりの無い醸造は、多くの人々をビール造りに掻き立て続ける。
無限の探求の果てに彼らは何を求めるのだろうか。それとも、探求自体に意義を感じているのだろうか。
ここにもまた、そのビール造りに掻き立てられたブルワリーがある。
種子島ブルワリー からはな
種子島ブルワリーからはな、代表の伊藤氏は鹿児島県の種子島で2017年にビール事業を開始した。彼は元からクラフトビールが好きで、石見麦酒で研修を受けたのちにビール探求の道を進み始めた。
島の果物や鹿児島の農産物を用いてビールや発泡酒を醸造している。
今回は紹介できないが、種子島の柑橘、タンカンと言われるものを用いた「種子島のあかだいだい」や、種子島のパッションフルーツを用いた「種子島のパッションウィート」など、ビール造りの世界に入ったばかりでありながら多くのビールを造ってきた。
前章で述べた様に、種子島ではロケット打ち上げが盛んであり、それを見るためにシートを広げて地面に座りながらロケット発射を待つことが多いそうだ。
からはなさんはそこに、ビールと一緒に暖かいお汁やおにぎりなどを持ち寄り、
お客様に暖かい体験を提供している。
そんな種子島ブルワリーからはなの中で、今回紹介するのは三種のビール、
オーガニックビール、オーガニックウィート、オーガニックスタウトである。
からはなのオーガニックシリーズ
からはなのオーガニックシリーズであるこの三種は、どれも鹿児島産の小麦や大麦を使用している。
オーガニックビールは有機大麦を使用しており、
カスケードが豊かでボディは頑強なものとなっている。
オーガニックスタウトは焙煎により豊かな香りが漂いを醸し、軽めのボディを持ちつつも、オーガニックビールと同じく、有機大麦を使用している。
オーガニックウィートはコリアンダーの香りが豊満で、風の吹く様な爽やかさを持つ。こちらは鹿児島県産の有機小麦を使用している。
オーガニックシリーズのビールは、上述した様に全て有機麦芽を使用したビールであり、比較的オーソドックスなスタイルでの醸造が為されている。それぞれが鹿児島産の素材の豊さを活かして造られており、おそらく麦とはどんな味なのかを知るにはうってつけのビールばかりだ。
からはなのビールを飲んで考えた。
ビール造りへの探究心があれば、ビール飲みへの探求心もあるだろうと。
この爽やかな匂いの由縁はコリアンダーであり、この豊かな味わいは焙煎されているからこそのものだと認識できている人は少ない。
同じIPAでもこのブルワリーのものはあまり苦味を感じず自身の舌には合うが、こちらのスタウトは強すぎる香りがあって苦手、というところまで、
自分の言葉で表現、そして味や香りの認識をしたり、人のビールの味についての表現を聞いて納得したりすることで、ビールの飲み方が変わり、新たな探究心が生まれるのではないかと思っている。
探求の心は誰にでもある
宇宙への探究心を燃やす人が目立つこの種子島にて、
からはなは、小さく、しかし強かにビール造りへの探究心を燃やす。
分野は違えど、同じく終わりなき探求の道であることに変わりはない。
人は、その果てしなくも、そして時には途方に暮れる様な冒険に引き寄せられてしまう生き物なんだろう。
そういう人々によって人類の大きな進歩が発掘されるのだろうと思う。
人類の進歩とまでは行かないかもしれないが、ビールを造ることにだって、もちろん飲むことだって、やろうと思うと無限に突き詰めることができる。
この種子島ブルワリーからはなのビール造りもそんな風にして進化し続けるのだろう。
・種子島 からはなブルワリー ブログ
http://karahana.blog.jp/
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