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常習犯ガール

『働かないアリ』だけを集めて一つのグループを作ると、いつの間にかその中から『働き始めるアリ』が出てくるらしい・・・そんな話をどこかで聞いた覚えがある。へぇ~これは面白い!皆がみんな、ぐうたらぐうたら、のらりくらりしていると、「こりゃいかん!俺様が動かねば!!」と思ったりするアリが出てくるということだろうか?『働かないアリ』に心があるのならば、その心の内をのぞいてみたくなる。『働かないアリ』と命名されてはいるけれど、彼は(彼女は?)決して『働けない』わけではない、ということだ!何か一つのキッカケさえあれば、優秀に『働ける』、ということなのかもしれない。。。

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ヤギオ(小2)とシシオ(小4)の通う小学校は、約10~15名ほどで形成されたグループにて毎朝登校することになっている。ヤギオは誰よりも早く集合場所に行きたい!という朝から元気な男子で、決められた時間よりも10分も前に集合場所に到着する時もある。シシオは時間ぴったりに集合場所に行けるように家を出るタイプ。同じ家に住んでいても、性格の違いからだろうか、登校光景はバラバラである。

そんな我が子の登校グループであるが、毎日毎日必ずと言っていいほど遅れてやってくる女子がいる。大抵5分は遅れる。ひどい時は10分近くも遅れるのだから、グループのメンバーは毎朝ヤキモキしている。


私がなぜその事実を知っているかというと、私は自分の息子たちの様子を知りたいがために、わざと集合時間ちょっとすぎを見計らってゴミ出しに行くことにしているのだ。集合時間をちょっと過ぎているのだから、本来であれば学校に向かう長い直線道、グループの後姿を見送る形になるのだが、いつも遅れてくるその女子がいるが故に、グループの後姿を見ることはほぼない。集合場所でヤキモキしているメンバーの姿を見るのが日課のようになっているのだ。

「あれ、まだ誰か来ないのかな?」答えは分かっているくせに、私も嫌味な質問を毎回してしまう。皆が「また〇〇ちゃんだよ、まだ来ないんだ。」と答え、「そうか、困ったね、どうしたんだろうね。」と私が応えている間に彼女がやってきて、やっと出発するという感じだ。

リーダーの子が、その女子の家のチャイムを押そうかどうか迷っている場面にも数回遭遇したことがある。いよいよ待ちきれない!という段になり、「押してもいいかな?」と迷っているリーダーの子に「そうだね、もしかしたら具合が悪いのかもしれないし、確認してみてもいいんじゃない?」そんな回答をしたのが数回あった。

それにしても・・・このメンバーの心の広さよ。毎朝毎朝待たされているのに、本人を目の前にして大声で文句を言う者はいない。文句を言うとかそんなことよりも、とにかくこのグループだけかなり後れを取っているのだから、なにはさておき学校へ向かわねば!そんな感じなのだろう。


そんなある日、不安な数日間がこのグループにやってきた。リーダーが数日間不在になるため、この遅刻常習犯ガールがリーダーをすることになったのだ。学年的に見て、彼女がリーダーになるのは当然なので誰も文句はないのだが、不安以外の何ものでもない。果たしてこのグループは、ちゃんと時間通り登校できるのか???


できた!信じられない!できたのだ!


そう、この遅刻常習犯ガールは、自分がリーダーとなった途端、遅刻をせずに集合場所にやってきたのである。自分がリーダーなんだという責任感が急に芽生えたのだろうか?それとも誰かしらかから注意が入ったのかもしれない。「リーダーには遅刻は許されないよ!」と。彼女の心のうちは分からないが、現実として、一つ仕事を与えられたことにより彼女は今までの自分とは違った自分になったのだ。「皆を待たせる」ばかりの毎日だったが、逆に「皆を待つ」毎日になったのだ。今までは『働かないアリ』だった彼女は、決して『働けない』わけではなく、一つのキッカケで『働くアリ』に成り得たのである。


数日後、本来のリーダーがグループ内に戻ってきた。遅刻常習犯ガールのリーダー業務は終わった。その日ゴミ出しに行った私が目撃したのは、数日前と同じように、本来のリーダーとグループのメンバーが待ちぼうけを食らっているシーンだった・・・愛すべき!常習犯ガール・・・。


2020.10.06


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